パラノマサイト FILE 23 本所七不思議 公式サイト | SQUARE ENIX
https://www.jp.square-enix.com/paranormasight/
★★★☆☆
【内容紹介】 昭和後期の日本、墨田区を舞台に、呪いの力を得た者たちが七不思議に隠された秘密を巡って、それぞれの想いをぶつけ合う、群像ホラーミステリーアドベンチャーゲーム。呪い合いの先に待ち受けるものとは…

最近ネットで話題のサウンドノベル
『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』をプレイしました。
わたしはニンテンドースイッチでプレイしましたが、マルチタイトルのため、ゲーム機を持っていなくてもSteam、iOS、Androidに対応しているため、パソコンやスマホでもプレイ可能です。ダウンロード専売で価格は1,980円。

シナリオは、ガラケー時代から一部で話題になっていた『探偵・癸生川凌介事件譚』シリーズの石山貴也さんが担当していますが、一応ジャンルとしては「ホラー」になります。殺人事件を扱ってはいるものの、登場人物たちは基本的に<蘇りの秘術>を獲得するために<呪詛>を行使して相手を殺めていくため、非日常的な超常現象が当たり前に存在する世界が物語の舞台となっています。
しかしサウンドノベルとは言っても、ただ文章を読んでいればクリア出来る、といった類のものではなく、相手の<呪詛>の回避や、監禁場所からの脱出、そしてクライマックスではテキストを直接打ち込んで名指ししなければならいフーダニットの趣向なども存在するため、プレイヤー自身が頭を使って状況を打開する必要のある場面が多数あります。そういう意味では、ただプレイヤーを怖がらせるだけの「ホラー」ではなく、「ミステリ」要素も楽しめるアドベンチャーゲームと言っても良いと思います。

わたしは今回ニンテンドースイッチライトでプレイしました。ニンテンドースイッチはこのライトしか持っていません。
本作に限らず、どのソフトをプレイする場合でも、大きな音でプレイしたいため、まずはオプションでボリュームをマックスにするところから始まります。
1,980円というフルプライスゲームではないため色んなところで予算をケチっている感じが伝わってきて、一番気になったのは今どきサウンドノベルでありながら、フルボイスでは無い点です。キャラクターが喋ろうが喋るまいが内容に大きな影響は無いというスクエニの経営判断か、ボイスを端折ったのだと思いますが、その割にオプションの設定項目で
「ボイス音量」が設定できるのが極めて不可解です。きっと制作当初の名残なんだろうな、と適当に解釈して無視していたら、この違和感が実はゲーム攻略に大きな意味を持つことが後々に明らかになって大変に驚きました。
本作では、このような「メタ視点」での攻略を意図的に導入しています。
作中の案内役も、ゲームコントローラーを持っているプレイヤーがメタ視点に立って攻略していることに自覚的で、そのメタ視点を利用して攻略するよう、積極的に誘導してくるのがサウンドノベルとしては珍しく感じました。プレイヤーとしては各ルートでフラグを立てて新たな分岐を探して……といったような『弟切草』や『かまいたちの夜』あたりの古来から続く、このような攻略法はすでに当たり前ではあるのですが、ゲーム中の人物がそのことをプレイヤーと共通認識として持っているのが斬新です。

サウンドノベルでおなじみのストーリーチャートが、本作でも目に見える形でプレイヤーに提示されます。
本来この画面はプレイヤーのみが確認できるものですが、ゲーム中に登場する案内人(『世にも奇妙な物語』で言うタモリさん的な人物)は、プレイヤーがこのストーリーチャートを見ながら攻略していることを知っている、というわけです。

ミステリしての一番の評価ポイントは、やはりクライマックスのフーダニットの趣向ではないかと思います。
それまでに散々「メタ視点」での攻略を強制してきた本作が、最後にプレイヤーが名指ししなければならないのは、あまりにも意外な人物です。
すべての違和感がなくなり、物語全体がスッキリと明瞭なる瞬間、このゲームは、サウンドノベル特有のシステムがシナリオと実に密接に結びついていたことが同時に明らかになります。
『かまいたちの夜』から続くサウンドノベルの「お約束」のシステムに、シナリオ上の必然性を設けて描いた本作は、サウンドノベルでしか成し得ないミステリ体験をプレイヤーにもたらしてくれます。
いろいろ不満点はあるものの、令和のサウンドノベルとしてチャレンジしたことは明確に伝わってくるため、ネットで話題になるのも理解できます。
今のスクエニが『春ゆきてレトロチカ』をフルプライスで提供して、本作『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』をフルプライスで提供できなかった、というのが本作の斬新さの傍証なのではないかと思います。 興味のある方は、話の種にプレイして損はないと思います。
ちなみにタイトルに「FILE 23」とありますが、本作が第一作目(のはず)なので、本作からいきなりプレイしても問題ありません。
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