読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

甲賀三郎「蟇屋敷の殺人」 

蟇屋敷の殺人蟇屋敷の殺人
2017/5/8
甲賀 三郎

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★★★★☆



 【内容紹介】

 東京・丸の内の路上に停車中の自動車内に、謎の首切断死体が発見された―。広大な屋敷に蠢くがま蛙、久恋の女秘書、怪奇な幽霊、いわくの美女、蟇屋敷主人…。探偵作家と刑事は横浜、鎌倉、埼玉奥地、大阪へと犯人を追う。大胆なトリック、秀逸なプロット、気宇壮大なスケール。スリリングに展開する甲賀三郎の最高傑作、初の文庫化!KAWADEノスタルジック探偵・怪奇・幻想シリーズ。




 第一の波、戦前の本格探偵小説の雄・甲賀三郎の長編。本の裏を見ると「最高傑作」という文言も書かれてあります。初文庫化です。
 初めて聞くタイトルで、もちろん初めて読んだのですが、大変おもしろかったです。まさに探偵小説の歴史に埋もれた傑作と言っても良くて、東京・丸の内の車中で発見された首切り死体に端を発した物語は、東京・大阪間を行き来するスケールの大きな物語へと発展していきます。そして何より本書を印象づけるのは「蟇屋敷」の存在でしょう。庭には足の踏み場もないくらいのガマガエルが跋扈し、応接室には巨大なガマの置物が鎮座して、来客そして我々読者を歓迎してくれます。夜な夜な屋敷の庭で目撃されるのっぺらぼうの化物に、事件の一切を黙秘する怪しい屋敷の主人、登場人物も一筋縄では行きません。

 そして何より注目すべきなのが「本格」としての完成度です。

 「探偵小説とは、まづ犯罪(主として殺人)が起こり、その犯人を捜査する人物(必ずしも職業探偵に限らない)が、主人公として活躍する小説である」

 当時、甲賀三郎が提唱した、この「本格」の理念がまさにかたちとなった作品です。次々と段階的に暴かれる真実が面白く、さらにさらに、とにかくページを捲るたびにいろんな事件が起こるのです。これらはいずれも探偵の活躍によるもので、時には犯人を追い詰め、時には追い詰められ、と当時の探偵小説のいかにも「古典」!といった面白さが詰まっています。
 最終的に全ての怪奇と謎が論理的に説明付けられるのは、本格の骨格そのものです。すでに昭和初期にこのレベルにまで達していたのかと驚くばかりです。そして何よりプロットが秀逸のため、何度読んでも楽しめそうです。

 甲賀三郎を語る際には、所謂「本格・変格」論争が挙げられると思われます。変格派の筆頭として江戸川乱歩あたりの名前が上がると思うのですが、本書に描かれているような、地下の怪人や、その怪人の結ばれ得ぬ恋などに江戸川乱歩のテイストが見られるのが面白いところです。しかしそれを犯人の異常心理とするのではなく、その犯行動機を、謎を解く側の探偵役に一定の理解を示させることでこちら側(健全側)へ押し留めている点は作者らしいところかもしれません。
 そして時を越えて、本書のあるトリックには、帯の推薦者である三津田信三氏の某長編を想起させるものが使われているのも興味深いですね。

 現代の本格ミステリファンが読めば面白い発見のある作品だと思います。なかなか今では読めない古典の面白さもあります。甲賀三郎の代表作としてこの作品が挙がっているのは見たことがありません。再評価すべきだと思います。おすすめです。

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[ 2017/05/28 20:57 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
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