読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

西澤保彦「悪魔を憐れむ」 

悪魔を憐れむ悪魔を憐れむ
2016/11/23
西澤 保彦

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★★★★★



 【内容紹介】

 けっして手を下さず、
 だが、死に至らしめ、
 捕まることも、ない。

 ウサコは電撃結婚、タカチは安槻へ一時帰還、ボアンは女子高の国語教師に!?

 読み応えたっぷり!
 ミステリの魔術師・西澤保彦の匠千暁シリーズ最新作!

 ●平塚刑事の実家の母屋で二十三年間にわたって起こる午前三時に置き時計が飛んできてソファで寝ている人を襲う心霊現象の謎と隠された哀しい真実を解く「無間呪縛」
 ●「先生がその時間に校舎の五階から跳び降り自殺するから見張っていてほしい」。大学OBの居酒屋店主からそう頼まれた匠千暁は、現場で待機していたにもかかわらず、小岩井先生をみすみす死なせてしまう。老教師の自殺の謎を匠千暁が追い、真犯人から「悪魔の口上」を引き出す表題作「悪魔を憐れむ」
 ●男女三人が殺害された殺人現場で被害者二人の首と手首だけが持ち去られゴミ集積所に打ち捨てられていた事件、犯人の奇妙な動機を推理する「意匠の切断」
 ●ホテルの九階に宿泊する元教職者がなぜかエレベータを七階と十二階で降りた……殺人事件の奇想天外なアリバイ工作を見破る「死は天秤にかけられて」




 待望のタック&タカチシリーズの最新作で、作者のあとがきによると、多少前後するものもありますが、作中の時系列的にも最新の事件を描いた作品です。
 「無間呪縛」「悪魔を憐れむ」が中編サイズで、「意匠の切断」「死は天秤にかけられて」が短編サイズ。計四編収録です。
 唐突ですが、以前山田正紀さんの『風水火那子の冒険』が出版されたときに、山田正紀さんは中編ミステリを書くのは難しい、と言っていたのをなんだかよく覚えているのですが、山田氏の他にも、よく中編ミステリはサイズ的にむずかしいというのを小耳に挟みます。わたしは書いたことがないのでよく分からないのですが、ただ、本書の場合、こうやって中編と短編を並べてみると、ミステリとして造りの違いがよくわかります。
 「無間呪縛」はタカチからの手紙や、ウサコが他人から聞いた体験話など、複数のエピソードが最終的に伏線として姿を変え、タックの推理へと収束してゆきます。その過程は、短編ではボリューム的に描け得ず、かといって長編では間合いが長すぎて緊張感が持続せず、中編として最適な構成だということがわかります。これは短編サイズの「死は天秤にかけられて」と並べるとよく分かり、こちらもボアン先輩のエピソードが伏線となって、推理(妄想?)が見事にひとつの決着を迎えるのですが、伏線となるエピソードの数的ボリュームが単純に「無間呪縛」より減らされています。「死は天秤にかけられて」が劣っていると言いたいのではなく、短編・中編が見事に書き分けられていることに素晴らしさを感じるのです。というのも「無間呪縛」は、ある人物が長年封じ込めた心の深い部分を、謎解きで浮かび上がらせ、説得力を持たせる必要があるため、当然その複雑な心理を説明するためのエピソードを重ねる必要があります。一方の「死は天秤にかけられて」は、とある奸計にはめられた人物がとった行動が肝になるのですが、男でも結構共感できる部分があったりするので、こちらは伏線エピソードが少なめで済むというわけです。そのぶん発端の魅力的な謎と、結末の意外な真相の間合いが詰められているため、落差が大きく気持ち良い作品でした。
 もう一方の中編「悪魔を憐れむ」はこれらとは少し違った印象を受けます。前半、タックの目の前で被害者が絶命するシーンがショッキングで、彼は事件の渦中に巻き込まれていくのですが、あれよあれよと後半では傍観者の立場へと追いやられるのが面白いです。この立場の遷移が本作を象徴しています。本作で「悪魔(犯人)」は描かれているのですが、ほんとうに「悪魔」はその人だけなのでしょうか?という疑問は残ります。「憐れむ」という言葉は、「かわいそう」と同じで相手の立場を自分より下に置いたときに使用する言葉です。本作品では主だった登場人物として、タックを除いて男2人、女1人が登場するのですが、いずれもある種の傍観者的立場、蚊帳の外から冷ややかに相手を見ている印象を受けます。そして相手を自分の都合の良いように動かしていき、まるで自分が他人より上に立ったかのように、自分のために他人がいるかような立場をとります。これは「悪魔」である犯人を筆頭に彼らが取った行動なのですが、その「悪魔」を傍観者的立場で眺めて「憐れむ」のは、探偵役の匠千暁だったりします。考えさせられる作品でした。

 一言に「パズラー」といってもモノやコトだけを組み合わせて真実を明るみにするのではなく、人間の心理を手掛かりのひとつに組み込んで謎解きを構築するさまが素晴らしいです。人間の本音と建前の、本音の部分――理屈ではおかしいのかもしれないけど、人の心の奥底のプライドや邪な部分が邪魔をしてそうさせてしまうな、という妙だがたしかな説得力があり、それが謎解きを面白くしています。収録作品4編すべてに人間の心理が深く関わっています。
 作者ももうベテランの域の推理作家ですが、ミステリにおいてネタ切れとかアイデア不足は本作品からは感じません。むしろ本書を読んで思ったのはそれとは全く逆で、キャリアを重ねたからそ到達し得た円熟の本格ミステリと言えます。人と人とが交わることで生じる謎に対して、人の感情が置き去りにされていないのです。若手の描くパズラーの一つも二つも上を行っている印象を受けます。おみそれしました。
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[ 2016/11/28 00:50 ] 西澤保彦 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
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