読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。
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ミルワード・ケネディ「スリープ村の殺人者」 

スリープ村の殺人者 スリープ村の殺人者
ミルワード ケネディ (2006/10)
新樹社

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★★★☆☆

 忘却を恐れず、探偵小説の手法を「推理」にしぼった黄金時代の傑作。九月にしては暑い日、手漕ぎのボートでのんびりとスリープ村の貸し別荘を目指す男がいた…だが、男が渡し場で出会ったのは?…時間が経つにつれ連続殺人事件の謎はますます深まっていく…。

 ずいぶんとのんびりした場所で発生した盗難事件と殺人事件の謎を追う物語です。どの事件も、犯行機会の有無からアプローチしていく捜査方法が採られており、登場人物たちの行動に基づくタイムテーブルが重要となってきます。全ての事件が、ある程度の強度のあるアリバイ事件なところも読み応えがあります。かなり王道の謎解き犯人探しミステリです。舞台なんかはノックスの『閘門の足跡』に似ているかな?
 序盤からバリバリに捜査が行われるため胸踊るのですが、発生する事件はどれも似たようなものであるため、人が死んでもいまいち盛り上がりに欠けます。そのうえ謎解きに関しても、ある人物が容疑者圏外にいる理由が、今のミステリ読者にとってはあまりに脆弱なものであるため、犯人名とまではいかないまでもトリックだけなら容易に見抜くことが出来てしまいます。残念なことにわたしは途中で分かってしまいました。ですが、さすが黄金時代の作品というべきか、手がかりは充分にばら撒かれており、一定水準の謎解きは楽しめるため満足は出来るはずです。
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セオドア・ロスコー「死の相続」 

死の相続 死の相続
横山 啓明、セオドア・ロスコー 他 (2006/10)
原書房

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★★★★☆

 ハイチに住む実業家が死に、屋敷には7人の相続関係者が集められた。奇妙な遺言書をなぞるように彼らは奇怪な死を迎えていき、そして最後に残された第7相続人に…。息詰まるサスペンスと驚天の仕掛けの、密室ミステリの怪作。

 出たーっ!破天荒なバカミスの極致!!終盤のゾンビ騒動には開いた口が塞がりませんでした。
 この犯人、なに本気であんな事やっちゃってるの?バカなの?アホなの?と突っ込みを入れたくなる真相(密室トリック)ですが、こういうのは嫌いじゃないです。犯人は意外すぎて、逆に見抜かれやすいと思いますが、犯行計画がアレなだけにインパクトは絶大。意外性とは別の意味で名犯人として読者の記憶に残ることでしょう。
 物語の展開はミステリとして完璧で、奇妙な遺書の公開や登場人物たちが館に拘束される序盤、『そして誰もいなくなった』のようにテンポよく人が死ぬサスペンスフルな中盤、そして死者が蘇り一気に混乱の極致に達した後、推理によって秩序が回復される終盤、と読んでいて全く退屈しません。結構な数の人が死にますが、そのどれもが不可能状況下での殺人事件というのも注目に値します。難攻不落の密室殺人あり、記述者の目の前で起こる事件あり、と謎の演出も抜群です。
 犯人さえ分かってしまえば、数々の事件の真相も芋づる式に分かってしまうため、どうしても終盤の謎解きに厚みがなくなってしまいます。そこがこの作品で唯一不満なところでしたが、中盤には間違ったものではありますが、犯人特定の推理が展開されるため、釣り合いはとれているのかなぁと思ってみたり。あ、でもラストシーンの、主人公の質問への回答は、ヒロインどころか主人公をも救済させるなかなか巧いまとめ方だったと思いますよ。
 事件の盛り上げ方や混乱のさせ方は抜群で、こんなのが本当に解決されるのか、本当はミステリじゃなくてホラーなんじゃないか、と後半を読んでいて思いましたが、きちんと解決させるからすごいもんです。これはもう当分忘れることはないでしょう。帯に書かれてあるカーの大仕掛けと怪奇趣味、そしてクリスティ(というか『そして誰もいなくなった』)のサスペンスという言葉には間違いはありません。本格ミステリ好きは読んで損はないですよ。

 …ってこれ、『そして誰も~』より前の作品なのか。あらまビックリ。
[ 2006/10/29 20:40 ] セオドア・ロスコー | TB(0) | CM(0)

TVドラマ「弁護士 灰島秀樹」 

 http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2006/06-295.html

 TVドラマだし、スピンオフシリーズの4作目だし、ってことで全然期待せずに見始めたら、これがまた予想外に面白かった。

 後半のシンポジウムは最高に盛り上がったし、ラストのオチも悪くなかった。完全に情に流されたのかと思いきや、実はそうではなく、金に執着する彼のキャラクターは健在だった。出演2作目でキャラ替わるのは早すぎるしね。
 こうやって見ると、このシリーズって面白さ云々は別にしても、スピンオフさせたキャラクターの性格を巧くストーリーに絡めていて良い感じですね。それが一番成功しているのがこの『弁護士』かと。
 騙し騙されが面白く、スピンオフシリーズのナンバーワンどころか踊るシリーズの中でもかなり良い方にくる面白さ。録画しておけばよかったかな。
[ 2006/10/28 23:19 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)

映画「DEATH NOTE」 前編 

 Yahoo!映画 - DEATH NOTE デスノート 前編

★★★☆☆


 金曜ロードショーでしていたのを観ました。

 コミックを正確になぞるようなことをせず、映画オリジナルの要素が結構あったため、これはこれで良かった。コミックファンからすれば不満点も多いのかもしれませんが。
 コミックでは放浪の旅に出た南空ナオミが、ライトの奸計によって死ぬ様子が見事に描かれているし、ここで機能するオリジナルキャラにも登場させる必然性があったと思います。ここがこの映画の一番の見どころでしょう。
 なんかライトがお馬鹿ちゃんにみえたりもしたけど、映画全体の評価としては良くもなく悪くもなくといったところ。
[ 2006/10/28 10:49 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)

ピーター・ラヴゼイ「降霊会の怪事件」 

降霊会の怪事件 降霊会の怪事件
ピーター ラヴゼイ (2002/06)
早川書房

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★★★☆☆

 19世紀末ロンドン。上流家庭を狙った連続盗難事件を追うクリッブ部長刑事は、ひょんなことから人気霊媒師の降霊会に立ち会うことに。霊の存在などまるで信じないクリッブだったが、不気味な物音や闇を飛ぶ青白い手などの怪現象に驚愕する。騒然とする中、さらに霊媒師が不可解な感電死を遂げた!
 クリッブと部下のサッカレイ巡査は怪異現象に隠された巧緻な罠に挑むが…名匠が放つ本格ミステリ。

 クリッブ部長刑事シリーズの中の1作。事件は怪奇趣味に覆われた衆人環視中に起こった不可能犯罪だし、終盤の謎解きにもずいぶんと力を入れていたりして、ラヴゼイっぽくなくてちょっとビックリ。主人公が警察の人間なため、足による捜査は健在で、こういった捜査方法とカーやアルテを彷彿とさせる事件の取り合わせは、意外性があり面白いです。
 重要データからミスリードで読者の目をそらせるというより、重要データをあえて直接描かず、その周辺をしっかりと描いて見えないものの輪郭を浮き彫りにするといったテクニックが何箇所か見受けられました。それはさながら、服がひっぱられたり物音がしたりなどして、直接は見えない幽霊の存在をほのめかす方法と似ており、降霊会を題材にしたこのような作品と見事にマッチした描写方法と言えるでしょう。
 登場人物が水面下において、各々の行動をとるため、表面的に見れば事件は難解です。一本筋に見えた事件が登場人物の数だけ分かれていく展開は、キャラクターでも読ませてくれるピーター・ラヴゼイらしいです。
[ 2006/10/27 20:30 ] ピーター・ラヴゼイ | TB(0) | CM(0)

島田荘司「犬坊里美の冒険」 

犬坊里美の冒険 犬坊里美の冒険
島田 荘司 (2006/10/21)
光文社

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★★★☆☆

 雪舟祭のさなか、衆人環視の総社神道宮の境内に、忽然と現れて消えた一体の腐乱死体! 残された髪の毛から死体の身元が特定され、容疑者として、ひとりのホームレスが逮捕・起訴された――。しかし、死体は、どこに消えたのか? そして、被告人の頑なな態度は、なぜなのか? 司法修習生として、倉敷の弁護士事務所で研修を始めた犬坊里美は、志願して、その事件を担当した! 
 里美の恋と涙を描く青春小説として、津山、倉敷、総社を舞台にした旅情ミステリーとして、そして仰天のトリックが炸裂する島田「本格」の神髄として、おもしろさ満載の司法ミステリー、ここに登場!

 ここにきて新シリーズの開幕ですか。いやぁ島田荘司さんもお歳の割になかなかエネルギッシュですな。
 事件は単純で、神社の離れの床下から発見された死体が5分ほどで消えてしまったというもの。そして、たまたま現場にいたホームレスに濡れ衣が着せられて、彼を冤罪から救うために犬坊里美が奮闘する物語です。犬坊里美のスタンドプレイも間々ありますが、彼女の同期の司法修習生も活躍を見せます。芹沢や尾登、そして添田といった修習生は今後も活躍の場が与えられることでしょう。なかでも検事を目指すという添田紀子は、弁護士となった里美といずれ戦う日が来るのかもしれません。シリーズの今後を大いに期待させる仲間たちです。ただ、シリーズの第一作としては申し分ありませんが、ミステリとしてはちと弱い。1つだけ最後まで浮いたエピソードがあるため、それが伏線だと嫌でも分かってしまいます。
 真実ではなくとも検察、被告人、弁護士の3者にとって良いように裁判は進んでいくため、里美が「何のため」に行動するのかが実に純粋に浮き彫りになってきます。被告人が何もしゃべらなくても何故か裁判は進んでいくという異様な状況や、犯行動機や犯行シーンで感じる人間臭さや生々しさといったものは、作者自身が「ユーモアミステリ」と言うこの作品にも、従来の社会派作品同様のものを感じます。(方言に聞き覚えのあるものばっかりだから、なおさら犯人の告白は辛かった(ノД`) )

 あとひとつ気になったけれど、笠岡市って岡山だよね…?島田さんが間違えるとは思えないから、わたしの知識不足なのかな。昔は広島県にあったとか?
[ 2006/10/25 21:46 ] 島田荘司 | TB(0) | CM(1)

ロナルド・A・ノックス「サイロの死体」 

サイロの死体 世界探偵小説全集 (27) サイロの死体 世界探偵小説全集 (27)
ロナルド A.ノックス (2000/07)
国書刊行会

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★★★★☆

 地方の大邸宅のパーティで、客たちが車を使った追いかけっこに興じている最中、ゲストのひとりがサイロの中で死体となっているのが発見される。名作『陸橋殺人事件』で知られるノックスのもうひとつの代表作。

 序盤の駆け落ちレースはワクワクしますが、それが終わったあとの捜査は、訳文の読みにくさのせいか少々ダレます。しかしその後の解決篇では、さすがは『陸橋殺人事件』の作者、とてもひねくれた真相を用意してくれています。
 事件のあらましから真相を射抜く過程は実に論理的で、フェアであります。解決篇では、作中にちりばめられた手がかりを確認できるよう、その提示場所(ページ番号)が記されおり、p.232あたりに書かれてあるような一分の隙から推理していくことが可能です。つまり、うまくいけば読者にも真相に到達できるわけです。
 サイロを使った殺害方法であったり、関係者全員に容疑をふっかけようとする犯人であったり、その犯行計画を猿が台無しにしてしまったり、よりにもよってターゲットとする人物と駆け落ちするはめになったりと、真相に漂うある種のユーモアも面白い作品です。そして忘れてならないのが犯人が特定されてからの展開。残りわずかなページ数にも関わらず幕を閉じようとしない物語は、読者に期待を抱かせ、最後の最後に探偵によって告げられる真相は、ノックスらしいひじょうに気の利いたサプライズです。
 終盤の展開が抜群なだけに、中盤ダレたのが非常にもったいない。

論創海外ミステリ56~57 

 ↓↓今月発売の2冊↓↓

闇に葬れ 闇に葬れ
ジョン ブラックバーン (2006/10/25)
論創社

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納骨堂に響く哄笑
ブラックバーンの最高傑作

クーンツと並び称されるブラックバーン
による息をつかせぬ疾風怒濤の怪作


6つの奇妙なもの 6つの奇妙なもの
クリストファー セント ジョン スクリッ (2006/10/25)
論創社

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夭折した作家が贈る
第一級の異色本格

証人の見ている前で被害者にコップを
手渡した人物が犯人でないとすれば、
毒を入れることができた者は誰もいない……


 ジョン・ブラックバーンの『闇に葬れ』は、貴族の墓に埋められた杯の封印が解かれ、イギリス中を恐怖に陥れるというホラーっぽい作品みたいだ。この作家は『小人たちが怖いので』で有名な人。これを機に『小人たち~』が復刊されないかな。

 クリストファー・セント・ジョン・スプリッグの『六つの奇妙なもの』は、降霊会が行われるお屋敷で怪奇現象や不可能犯罪が勃発する本格ミステリらしい。この作家の邦訳作品は、ロバート・エイディーによる密室アンソロジー『これが密室だ』で「死は八時半に訪れる」が読めるだけかな。

 『六つの奇妙なもの』が気になる。



小人たちがこわいので 小人たちがこわいので
菊池 光、ジョン・ブラックバーン 他 (1973/07)
東京創元社

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これが密室だ! これが密室だ!
ロバート エイディー、 他 (1997/05)
新樹社

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[ 2006/10/24 20:05 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

長崎出版 海外ミステリ Gem Collection 創刊!! 

 2ちゃんねるの海外古典スレで知りました。

 長崎出版株式会社


 第1回配本はマイケル・イネス『証拠は語る』

 原題は『The Weight of the Evidence』で、凶器が隕石という変わったミステリとして『世界ミステリ作家辞典』でも名前が挙がっていましたね。

 『Appleby on Ararat』『The New Sonia Wayward』が河出書房の<KAWADE MYSTERY>から出るわけだから、あとは『Appleby at Allington』という作品をどこかが拾わないかな。
 さらに言えば処女作の『学長の死』を東京創元社が復刊してくれれば、もう言うこと無しなんだけど…。

 だけど新しいレーベルが出来てうれしいね。これからどんな作品が出るんだろう。目が離せません。
[ 2006/10/23 18:07 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(1)

山口雅也「奇偶」 

奇偶(上) 奇偶(上)
山口 雅也 (2006/10/14)
講談社

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奇偶(下) 奇偶(下)
山口 雅也 (2006/10/14)
講談社

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★★★★★

 「神は骰子(さいころ)を振らない」ならば全ては必然だというのか。奇妙な偶然の連鎖の果てに起こった原発事故を皮切りに「偶然」に翻弄される推理作家・火渡雅(ひわたりみやび)。太極柄ネクタイの男の事故死と現場での怪しい人影を目撃した後、片方の視力を失うが……。
 思想と思索に満ちた知の書であり、不安と不穏を描き出した傑作。

 ようやく読了。単行本発売当初に買い逃して、ずるずると文庫落ちまで待っていたんですが、上下分冊にして販売するとは呆れた。新書版に比べて値段が少ししか安くなっていないし、解説すらついていない。もともと1冊の本を2冊に分けたから、本棚に並べてみても格好悪い。さすが講談社、やってくれますね。
 出版社側に対しての不満はありますが、まあ愚痴はこのくらいにして、内容の方は現代ミステリを代表する傑作です。上巻のほうには、火渡雅の遭遇した、殺人事件か否かがはっきりしない、偶然の連鎖とも解釈できる事件が描かれます。そしてその後何百ページにもわたって物理学(量子論)、心理学、易学、哲学などあらゆる角度から≪偶然≫が検討されていきます。その果てに下巻でようやく発生する密室殺人事件。その真相たるやとんでもないものですが、膨大な≪偶然≫と≪必然≫の検討があったからこそ受け入れられるものであり、成立するトリックです。密室内にいた福助の真相はおおよその見当はつきましたが、これを真相として堂々と使えるのもこの作品ぐらいでしょう。なぜなら、そのトンデモトリックに対する反論を無効化させるほどの強度を持った議論が、作中で延々とされているからです。しかし、この真相を受け入れてしまうのならば、逆の問題も生じることになります。つまり、確立0でない事象を排除できない限り、唯一絶対の真相を見抜くことは不可能である、という問題です。このミステリの息の根を止めてしまいそうなほどの問題を、ミステリという形で突きつけた点でこの作品は歴史に残るでしょう。世界観が変わってしまいそうです。
[ 2006/10/22 21:04 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

大場つぐみ 小畑健「DEATH NOTE HOW TO READ」13巻 

DEATH NOTE HOW TO READ 13 (13) DEATH NOTE HOW TO READ 13 (13)
大場 つぐみ (2006/10/13)
集英社

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★★★☆☆

 詳細ページはこちら

 本編のほうは12巻で終了していて、この巻は作者のインタビューや本編の分析などが載っている、いわばファンブックです。
 原作と漫画を違う人が担当しているので、その打ち合わせの方法とかはなかなか興味深いし、大場さんのネームや小畑さんの下書き原稿などもいっぱい掲載されてあるので、それらの相違点を探すのも面白いです。
 デスノートに関する疑問に原作者自身が答えていたり、作中のデスノートのやりとりを整理してあるので、とりあえず本編の完全理解はできるはず。あらためてデスノートの行方を確認すると、その計算高さには驚くばかりです。

 本書の要はやはり小畑さんと大場さんのインタビューで、そこでも面白い話がされています。ミステリの話も出てきており、


 ――小説はよく読まれますか?
 大場「実は全然読んでいません」
 小畑「自分は多少は読んでいます。京極夏彦さん等が好きです。(後略)」


 ふむ、原作者がミステリを読んでいないとは驚きだ。小畑さんにはぜひ京極作品をコミカライズしていただきたいですね。もしそうなれば神がかった作画ですごい本ができそうだ。
[ 2006/10/21 20:55 ] 大場つぐみ | TB(0) | CM(0)

新樹社ミステリ再起動 

 しばらく音沙汰のなかった<新樹社ミステリ>ですが、どうやら今月の23日に1冊刊行されるようです。

スリープ村の殺人者 スリープ村の殺人者
ミルワード・ケネディ、大澤 晶 他 (2006/10/23)
新樹社

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 9月にしては暑い日、ボートでスリープ村の貸し別荘を目指す男が渡し場で出会ったのは? 時間が経つにつれ、連続殺人事件の謎はますます深まっていく…。忘却を恐れず、探偵小説の手法を「推理」にしぼった黄金時代の傑作。


 ミルワード・ケネディという人の長編は国書刊行会の<世界探偵小説全集>から『救いの死』というのが刊行されているだけで、その実力はまだ把握しきれていないといったところ。今回訳される『スリープ村の殺人者』(原題は『The Murderer of Sleep』)はここのコラムを読むと『救いの死』と双璧をなす著者の代表作のようだ。


 なお今後の新樹社の刊行予定としては

 ロナルド・A・ノックス 『The Three Taps』
 E・C・R・ロラック 『Part for a Poisoner』
 キャロル・カーナック 『The Double Turn』
 マージェリー・アリンガム 『Dancers in Mourning』

 があるらしい。
 アリンガムの『Dancers in Mourning』がここにあったか。『屍衣の流行』より先に訳されていれば嬉しかったけれど、それはともかく<新樹社ミステリ>の再始動を喜びたい。ノックスが楽しみだ!


救いの死 救いの死
ミルワード ケネディ (2000/10)
国書刊行会

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[ 2006/10/21 12:10 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

TVドラマ「逃亡者 木島丈一郎」 

交渉人 真下正義 プレミアム・エディション (初回限定生産) 交渉人 真下正義 プレミアム・エディション (初回限定生産)
<特典DISC 3>「逃亡者 木島丈一郎」
ユースケ・サンタマリア (2005/12/17)
ポニーキャニオン

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★★☆☆☆

 2004年10月30日。東京都台東区のあるアパートで事件が発生する。子供を人質に立てこもる男。動機は不明。駆けつけた警察の中には、交渉課準備室の真下正義(ユースケ・サンタマリア)の姿もある。部下の倉橋(ムロツヨシ)とともに、犯人と電話でコンタクトを取ろうと試みる真下。がしかし、犯人は電話に出ようとしない…それどころか電話のプラグが引き抜かれ、回線不通になってしまった。焦った真下が拡声器を取り出し、スイッチを入れようともたついているところに後方からやってきた男、木島丈一郎(寺島進)。「何をタラタラやってんだ、バカヤロウ!」と、真下を一喝するや否や、さっさと部下に指示を出し、アパートのベランダから現場に突入。「犯人確保だ、バカヤロウ!」と階下の真下に叫ぶ木島が目にしたのは、マスコミに囲まれ、ちやほやされながらインタビューを受けている真下の姿だった…。

 映像作品なので、画的にかっこいいシーンやほのぼのするシーンがあり、それを楽しむには問題ないと思いますが、逃亡劇でありながらこの緊張感の無さはさすがにつまらないわけで…。最後の最後まで愚直に「逃亡者」を演じる木島丈一郎にも違和感あり。人情話に感動するのが、鑑賞者としてはベストな態度なのでしょうが、わたしには無理でした。展開に違和感を感じたのは先週の『交渉人 真下正義』も同じで、結局そういう作品ならば、盛り上がる『交渉人』の方が楽しめます。まあ映画作品とTVドラマを比べるのも無理がありますが。
[ 2006/10/20 23:06 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)

小森健太朗「駒場の七つの迷宮」 

駒場の七つの迷宮 駒場の七つの迷宮
小森 健太朗 (2000/08)
光文社

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★★★☆☆

 東大駒場キャンパスには七つの迷宮がある。その全てに足を踏み入れたとき、明らかになる真相とは!?新興宗教サークル『思索と超越研究会』に所属する東大生・葛城陵治は、朝の勧誘活動中に不思議な女性と出会う。彼女・鈴葦素亜羅はいくつもの宗教をかけもちして天才的な勧誘活動を行なう、人呼んで〈勧誘女王〉だった。彼女の独特な考え方に戸惑いつつ惹かれる葛城。やがて素亜羅も入会した葛城たちのサークルは、駒場寮での死体発見に始まる奇怪な事件の連鎖に遭遇する!新本格推理の雄・小森健太朗が母校・東京大学を舞台に巻き起こす怪事件。この迷宮に、出口はあるのか。

 東京大学の駒場キャンパスで繰り広げられる連続怪事件。キャンパス内には池があったり塔があったり、さらには地下通路があったりと、ミステリの舞台として不足は無いようだ。
 宗教団体の勧誘員の視点で描かれ、序盤からその手の話が続くのため正直とっつきにくいものの、勧誘合戦や美人カリスマ勧誘員などのおかげで結構読めます。物語が進むにつれて宗教色は薄くなっていきますが、動機はやっぱり宗教的な考えから来るもので、そのあたり宗教とミステリを併せた作品を書いてきた小森健太朗さんらしいものといえます。一歩間違えばギャグともなりそうな動機ですが、それに説得力を与える伏線がきちんと張られているあたりはさすがです。
 また被害者が生前に遺した漫画の下書きもミステリ(しかも密室)となっており、その真相もまた「見えない人」テーマのトリックとして実に秀逸。作中作で描かないと現実問題このトリックを描くのは不可能なので、メタ構造の扱い方に巧さを感じます。作者の宗教的な側面ではなく『ローウェル城の密室』や『コミケ殺人事件』で見せたメタミステリーと書き手としての側面があらわれたところといえます。
 以上のように宗教ミステリーでありながら、メタ構造のミステリーとしても楽しめる、たいへん作者らしい作品といえますが、学生寮の密室や漫画に描かれた密室など個々を見るとけっこうイケてるトリックなのに、全体に流れを感じません。単発単発で解決されるため、それを統べる解決篇が盛り上がらないのです。もっとも別の意味では盛り上がりますが…。
 「見えない人」トリック、そして当たり前すぎて逆に意外な犯人などは貴重で面白いものだとは思いますが、作品全体に目を向けるとなんとも微妙。でも続きは気になるので『本郷九つの聖域』も早く読んでみたいですね。
[ 2006/10/19 22:16 ] 小森健太朗 | TB(0) | CM(0)

柳広司「はじまりの島」 

はじまりの島 はじまりの島
柳 広司 (2006/09/30)
東京創元社

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★★★★☆

 1835年9月、英国海軍船ビーグル号は本国への帰途ガラパゴス諸島に立ち寄った。真水の調達に向かう船と一時離れ、島に上陸したのは艦長を含む11名。翌日、宣教師の絞殺死体が発見された。犯人は捕鯨船の船長を惨殺し逃亡したスペイン人の銛打ちなのか?若き博物学者ダーウィンが混沌の中から掬い上げたのは、異様な動機と事件の驚くべき全体像だった!本格ミステリの白眉。

 ダーウィン一行がガラパゴス諸島で遭遇した連続殺人を描く、かなり王道のクローズドサークルな孤島もの。
 なかなかいいですね。殺人鬼が潜む島で数日間キャンプをするという設定がたまりません。この舞台を選んだ以上、あれが関わってこないはずがないとは思っていたんですが、それでもトリックはよみ切れなかったなぁ。実際にカメさんが死体を乗っけてトコトコと運ぶ姿を想像すると、なかなかシュールで絵になっていると思います。
 完全さを否定し「全てを知ることはできない」というダーウィンの考え方を、ミステリ的なオチにに絡めた方法は見事だし、それを同時に、後に発表される『種の起源』へと結び付けていく業も歴史ミステリとして実に巧いです。犯行動機や犯行方法の意外性というミステリとしての面白さ、そして『種の起源』を発表することになるダーウィンの最重要期を描いた歴史小説としての面白さをもあり、その2つが渾然一体となった傑作です。
 手がかりの提示や唐突な自白などは少し気になりましたが、犯人の類を見ないスケールの大きな動機は印象的で、世界をまわったダーウィン一行の旅と釣り合った、この作品で描かれるべき素晴らしいものでした。
[ 2006/10/18 21:10 ] 柳広司 | TB(1) | CM(2)

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」 

向日葵の咲かない夏 向日葵の咲かない夏
道尾 秀介 (2005/11)
新潮社

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★★★★★

 明日から夏休みという終業式の日、小学校を休んだS君の家に寄った僕は、彼が家の中で首を吊っているのを発見する。慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けてみると、なぜか死体は消えていた。「嘘じゃない。確かに見たんだ!」混乱する僕の前に、今度はS君の生まれ変わりと称するモノが現れ、訴えた。―僕は、殺されたんだ。半信半疑のまま、僕と妹・ミカはS君に言われるままに、真相を探る調査を開始した。

 本年度(といっても出たのは去年)の重要作品のひとつをようやく読了。『シャドウ』のweb上で公開されたあとがきで、作者自身がこの作品の名前を出し、関連性を示唆していたため、読まないわけにはいかなくなりました。読んでみて改めて『シャドウ』を思い返してみると、それに仕掛けられたミスディレクションはさらに強固なものになることに気づきます。そしてこの『向日葵』の読者が感じたという<陰惨>だとか<可哀想>だとかというのも読んでみてようやく分かった。わたしとしては、やはりああいうことが無ければこういった物語は描けないだろうと思うので、そこまで違和感は感じませんでしたが。子供の描き方は異なるけれど、作品の核となる部分や物語の底に流れるものに同一のものを感じます。
 登場人物と物語との関係をミステリで描いた傑作で、京極夏彦さんの『邪魅の雫』と同じ年度に出たのは単なる偶然でしょうか。子供の視点で語られること、あのようなトリックを仕掛ける必然性は大きく、読者が騙されることで物語は完成します。
 スマートな本格を求めるなら『骸の爪』のような気もしますが、この『向日葵』には『骸』にはない魅力があるのも事実です。そして騙しのテクニックという点では『シャドウ』の方が個人的にポイントは高いですが、実際驚いたのと読んでいて面白かったのはこの『向日葵』の方でした。作品全体を覆う、えもいわれぬ不気味さや緊張感、そしてラストの切なさ…。本年度を代表するミステリであることは間違いありません。
[ 2006/10/16 22:32 ] 道尾秀介 | TB(0) | CM(0)

MY BEST RANKING 始まったよ 

 本年度を締めくくる恒例行事がはじまるよ。

 http://www.harashobo.co.jp/mystery/allbest

 投票期間は2006年10月16日から11月6日24時までらしい。

 今年は芦辺、綾辻、有栖川、加賀美、京極、小森、島田、竹本、柄刀、鳥飼、東川、米澤ら本格の主力メンバーがシリーズ最新作を出したし、ノンシリーズでも乙一、法月、山田正紀らが良作を出した。また、蒼井、道尾、三津田といった新たな顔ぶれも秀作を連発したので、今年度は不作ではないと思いますが、どれが一番?と言われると悩みますね。

 本ランキングの方は、なんか乙一か道尾秀介が1位をかっさらって行きそうな気がするなぁ。
[ 2006/10/16 21:03 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

蒼井上鷹「出られない五人」 

出られない五人―酩酊作家R・Hを巡るミステリー 出られない五人―酩酊作家R・Hを巡るミステリー
蒼井 上鷹 (2006/09)
祥伝社

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★★☆☆☆

 東京郊外のビル地下にあるバー“ざばずば”に集う男女5人。脳溢血で急逝した愛すべき酔いどれ作家・アール柱野を偲び、彼の馴染みの店で一晩語り明かそうという趣旨の会合だった。だが、突如身元不明の死体が目の前に転がり出たところから、5人に疑心暗鬼が生じる。殺人犯がこの中にいる!?翌朝まで鍵をかけられ外に出られぬ密室の中、緊張感は高まっていく。しかし5人には、それぞれ、出るに出られぬ「理由」があったのだ…。ミステリ界期待の大型新人が放つ傑作長編。

 これは面白くなかったなぁ。一作目の『九杯目には早すぎる』が良かっただけに余計に残念です。
 視点がころころと替わりながら物語が進んでいくので、密室劇と言えどまあ退屈せずに読めます。読者には登場人物の内面がわかるわけだから、疑心暗鬼になりながら会話をする彼らの姿も面白かったりします。死体が発見されて、さあ推理の開始だ!と期待したはいいものの、一向にそれらしい気配はなく、ただキャラクターの面白さで物語は展開するのみ。お願いですから謎解きや推理ディスカッションをしてください、と懇願したくなるような展開でした。死体を前にしてそういう事をするのは不自然なのかもしれませんが、推理小説である以上、少なくともわたしはそういうのを読みたかった。なんか最近のミステリーという感じがします。
[ 2006/10/15 20:31 ] 蒼井上鷹 | TB(0) | CM(0)

映画「交渉人 真下正義」 

交渉人 真下正義 スタンダード・エディション 交渉人 真下正義 スタンダード・エディション
ユースケ・サンタマリア (2005/12/17)
ポニーキャニオン

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★★★☆☆

 2004年のクリスマス・イブの日に、東京の地下鉄の最新鋭実験車輌が(通称クモ)が乗っ取られ、乗降客200万人の命が危険にされされるハメに。その犯人からの指名もあり、警視庁初の交渉人・真下正義が奮闘する!

 TVで放送されていたのを観ました。先に『容疑者 室井慎次』の方を観てその面白く無さにガッカリしましたが、こっちの『真下』は思ったより楽しめました。
 地下鉄の閉鎖空間をうまくつかって緊迫感ある物語に仕立ててあるし、真下正義のみならず、線引き屋さんなど好感が持てるキャラが多かったので良かった。
 ただ地下鉄の事件をコンサートホールへ持っていく展開(…いや逆かな?)には違和感を感じます。結果的にラストシーンの見栄えは良くなりましたが。似たようなことは『踊る大捜査線2 レインボーブリッジを封鎖せよ』のエピソードのまとめ方でも感じました。
 『室井』なんかに比べると全然マシに思えますが、『真下』の犯人がはっきり描かれてないことを考えると、『真下』『室井』の双方が今後の作品の伏線になっていることも考えられ、現時点ではまだ最終的な感想を言うべきではないのかもしれません。
[ 2006/10/14 23:45 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)

蒼井上鷹「九杯目には早すぎる」 

九杯目には早すぎる 九杯目には早すぎる
蒼井 上鷹 (2005/11)
双葉社

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★★★★☆

 休日に上司と遭遇、無理やりに酒を付き合わされていたら、上司にも自分にもまるで予期せぬ事態が―第26回小説推理新人賞受賞作『キリング・タイム』を始め、第58回日本推理作家協会賞・短編部門の候補作に選ばれた『大松鮨の奇妙な客』など、ユーモラスな空気の中でミステリーの醍醐味を味わえる作品の数々。小気味のよい短編集をご堪能あれ。

 最近の注目株のひとり蒼井上鷹さんの第一作。

「大松鮨の奇妙な客」
「においます?」
「わたしはこうしてデビューした」
「清潔で明るい食卓」
「タン・バタン!」
「最後のメッセージ」
「見えない線」
「九杯目には早すぎる」
「キリング・タイム」


 短編とショート・ショートが交互に並べられており、前者には展開の妙&どんでん返しの連続、後者には刹那の破壊力がしっかりとそなわっています。ユーモラスでありながら、それで誤魔化すようなことをせず、どの作品も騙しにこだわっている点に好感が持てます。短編集で一篇くらいは入っていてほしいな、というレベルの作品がずらりと顔を並べる素晴らしい本です。今年読んだ本格ミステリの短編集ではこれがベスト。

 全体的に書き下ろしのものより『小説推理』に掲載された作品の方が面白かった。でも収録作の中でベストを選ぶとなると、ちょっと出来ないなぁ。「大松鮨の奇妙な客」「わたしはこうしてデビューした」「最後のメッセージ」「見えない線」「キリング・タイム」あたりが良かったかな。叙述トリック、意外な犯行計画、等々どの作品も微妙に騙し方が異なっており、なかなかネタが読めない。読めたと思った瞬間にも、更なるどんでん返しに対して無防備になり、とにかく騙される。わたしは全作品騙されました(笑)。

 今年の本格短編の重要作であることは間違いないと思います。短編の方は申し分ありません。ならば長編の方はいかほどでしょうか。『出られない五人』が長編作品かな?早速読んでみよう。
[ 2006/10/13 21:45 ] 蒼井上鷹 | TB(0) | CM(0)

ノーベル文学賞 

 ああ~逃しちゃったね。残念だ。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061012-00000513-yom-soci


 村上春樹さんの小説は読んだことないんですが、TVなどのニュースで外国の読者や評論家がベタ褒めしているのを見ると、ひょっとしたらひょっとするんじゃないか、と結構注目していたんですけどね。

 ノーベル文学賞に限らずノーベル賞については詳しくないのだけれど、なにやら文学賞は「地域持ち回り」で決定されているらしい。まだ次のチャンスがあるのか、もう可能性はなくなったのか、そこらへんが気になるところ。

 ミステリの話題で言うと、何年か前の桐野夏生さんのMWA賞を思い出しますね。
 残念です。

 でも受賞者のオルハン・パムクの邦訳作品を調べてみると、なかなか面白そうな本を書いてる。『わたしの名は「紅」』という作品は歴史ミステリーらしく、東西文明が交錯する都市イスタンブルで展開する細密画師たちの苦悩と葛藤を描いたものらしい。細密画師の苦悩と葛藤というのに惹かれる。


わたしの名は「紅」 わたしの名は「紅」
オルハン パムク (2004/11)
藤原書店

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[ 2006/10/12 20:54 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

浅暮三文「ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー」 

ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー
浅暮 三文 (2006/10/06)
講談社

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★★★☆☆

 強盗が遭遇した墓地での奇妙な出来事、RCカー故障で浮かび上がる大事件、密室からの遺言喪失、大量の薔薇に隠された凶行-。武蔵野の面影残る街で起きた事件を、「ビックリさせたれ」精神で描く本格ミステリー。

 短編と短編の間に全体を貫く物語を断片的に挿入していくことで、大きなひとつの物語として楽しめるよう加筆がされた作品です。短編の外でも驚かしてやろうという、まさに「びっくりさせたれ」とか「どや、オモロイやろ」という作者の言葉が形になった作品です。

 収録作は

 「ポケットは犯罪のために」
 「J・サーバーを読んでいた男」
 「フライヤーを追え」
 「薔薇一輪」
 「函に入ったサルトル」
 「五つのR」

 どれも比較的軽めの作品です。謎の設定に面白いものが多く、包装も何もされていない薔薇一輪だけを持って歩いてゆく人たち、朝に白い服を着て散歩に行った男が夕方帰ってきたときは赤い服だった、ラジコンが意思を持って勝手に動いた、などなど真相が気になるものばかりです。それだけで読み進める原動力となり、読んでいる最中はたいへん楽しいのですが、真相は割としょぼかったりするので脱力感がなんともいえません。小さな謎が大きな事件へと結びついていく作品が多いので展開の意外性はあるんですが。
 全体に仕掛けられたメタ趣向には思わず笑みがこぼれましたが、事実は事実としてあるわけだから、どうも効果的でないように思います。例えばこのような趣向の作品を古泉迦十さんとか津村巧さんとかがひょこっと出せばまた違ってくるんだけど。もしそうなったら泣くかも(笑)
[ 2006/10/11 21:41 ] 浅暮三文 | TB(0) | CM(0)

中島望「クラムボン殺し」 

クラムボン殺し クラムボン殺し
中島 望 (2006/10/06)
講談社

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★★☆☆☆

 留守中に部屋を荒らされた七浦陽子は一人暮らしの20代女性。世間を震撼させる「眼球抜き連続殺人」の被害者も全て一人暮らしの20代女性。自分が次の標的だと感じた陽子は、探偵の新島に捜査を依頼するが…。

 帯につられて買った。今は反省している。
 帯だけ見ると、割と本格系のミステリという印象をうけますが、読んだ感じでは見立て殺人などの本格要素以外にも、ホラーありアクションありサイコスリラーありのごちゃまぜエンターテインメントといったところです。
 犯行動機が異様で面白いけど、これは犯人の日記に書かれているので早い段階で読者に明らかになります。また、犯人も意外性を狙って書かれているふうですが、これも先入観さえ持たなければ容易に見当がついてしまいます。動機・犯人ともに面白いだけに、最後まで明らかにせず(明らかにならず)もっとひっぱっていてくれれば作品全体の印象も違ってくるのになぁ。
 とはいうものの、さすがはメフィスト賞作家と言うべきか、かつてのあの地雷原へ突入するスリルや快感がこの作品には存在します。だって文字どおりの怪物が普通にくぁw瀬drftgyふじこlp;@:「」……その片鱗を再び味わいたい人には強くオススメ。


      キュポン
                               キュポン
[ 2006/10/10 19:17 ] 中島望 | TB(0) | CM(0)

矢野龍王「箱の中の天国と地獄」 

箱の中の天国と地獄 箱の中の天国と地獄
矢野 龍王 (2006/10/06)
講談社

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★★☆☆☆

 般若の面を被る謎の男に集められた男女6人が、密室と化した25階建の極秘施設から脱出するために繰り広げる極限の二者択一ゲーム。彼らはただ運を天に任せるしかないのか、それともどこかにヒントが隠されているのか?

 あいかわらずの作風です。ドラクエとかにでてくるような宝箱を空けていって最上階を目指す展開です。設定としては今までで一番シンプルかな?こういう設定だと単調になりそうなものですが、パーティーを増やしたり減らしたり、建物を昇ったり降りたりさせたりするなど、工夫が見られます。もちろん宝箱といえばその中にはアイテムが入っており、そのアイテムで登場人物が一喜一憂するのも面白い。アイテムや設定をまんま一緒にして二次創作をすると面白いかもね。
 そして肝心の真相ですが、これは例に漏れず面白くない。いや真相に限らず、この作品はいろんな映画のせっていがごちゃ混ぜにされているので、どこかで見たことあるなというものばかりです。クローン人間が外の世界を夢見るのは『アイランド』、死に際のチープな感動は『バトルロワイヤル』、罠を回避しながら出口を探すのは『CUBE』、そして犯人はあの作品…。映画を見た方なら<特等席>(p.38)という言葉で分かっちゃうよね。

 最後のはっきり書かれて無いオチに関しても、斜め読みした方のためにちょっと書いておきます。般若の監視場所のことですが。

※以下ネタバレです!注意してね!※



 p.309
 白くて細長いプラスチック管

 直前の行からこれはスーツケースのなかにあったもので、さらに最終ページのヒントからストローのことだと想像がつきます。p.314<空になった牛乳ブリックパックが道端に落ちていた>とあわせて考えると、般若が牛乳を飲んでいた場所はスーツケース内と考えるのが妥当でしょう。ちなみに般若が牛乳を飲んでいたことはp.185の第7章冒頭に書かれてあります。

 では般若がスーツケース内に潜んでいたとして各章の冒頭を振り返ってみると、いろいろ説明のつくことがあります。


 p.245 第9章冒頭
 それにしても、後頭部がずきずき痛む 

 これはp.211で布袋が大黒に向かってスーツケースを投げ飛ばしたときにぶつけたのでしょう。


 p.185 第7章冒頭
 急に下腹部に痛みを覚えてきた。

 そのすぐあとp.214のスーツケースの水漏れから考えると、多分下腹部の痛みというのは尿意のことでしょう。眠っているときに漏らしたんだと思います。さらにその後目が覚めたとき(p.245)にはもうその痛みについては描かれていません。


 p.38 第2章冒頭
 特等席

 これは言うまでも無く最前列の席、つまり事件を一番近くで見ることのできる場所のことですね。




 書いていて思ったけれど、わざわざ解説の必要も無かったかもしれない……。
[ 2006/10/09 19:33 ] 矢野龍王 | TB(0) | CM(0)

マージェリー・アリンガム「屍衣の流行」 

屍衣の流行 世界探偵小説全集 (40) 屍衣の流行 世界探偵小説全集 (40)
マージェリー・アリンガム (2006/09)
国書刊行会

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★★★★☆

 華やかな魅力をふりまく人気女優ジョージアをめぐる男たちの死。3年前に謎の失踪を遂げた元婚約者が藪の中から白骨死体で発見され、真相解明を依頼されたアルバート・キャンピオンはジョージアに接近、暗い噂の絶えない夫レイモンド、航空機会社社長アラン・デルなど、彼女をめぐる複雑な人間模様を目撃する。そこにはキャンピオンの妹でファッション・デザイナーのヴァルの姿もあった。数週間後、シーザーズ・コートで催されたレイモンドのアフリカ飛行壮行式典の最中、ついに事件は起こった......。
 巧妙きわまる計画殺人に挑むキャンピオンの活躍。女王クリスティーがその才能を羨んだという英国ミステリ界の巨匠アリンガムの代表傑作。

 英国のビッグ4の一角、マージェリー・アリンガムの最高傑作といわれる作品です。
 既に訳されている『霧の中の虎』や『判事への花束』とかの評判があまりよくない(乱歩の評価もあまり高くない)ので、この作家は食わず嫌いをしていたのですが、なにやら『世界ミステリ作家事典』によると、この『屍衣の流行』は女史の最高傑作ということらしいので、この際思い切って読んでみました。一作だけ読んでアリンガムのことをどうこう言えませんが、これを読む限りではぜんぜん悪くなかった。同世代の作家のイネスみたく、文学性重視・パズラーではない云々を聞いていたけど、むしろ物語部分より犯行計画などのミステリ部分の方が面白く感じました。わたしが登場人物たちの会話のやりとりに面白さを感じられなかったのは、ひょっとしたら女性らしい視点でそれらが書かれているからかも。女性っていうのは~みたいな雰囲気が微妙に漂っていたのがどうも肌に合わなかった。探偵役が男性なのが救いか。ですが、だからといって恋愛だの嫉妬だのといった人間関係の描写をとっぱらってしまうと、この作品のレベルは間違いなく地に堕ちます。なぜなら登場人物の心理描写があってこそ納得できる真相だからです。ここまで登場人物の人間性と犯行計画が一体となったミステリはそうありませんよ。クリスティーがうらやむのも無理は無いといったところでしょうか。

 あと解説のアリンガム問答も面白かった。これを読むと、評価の高い作品をポツンポツンと訳していくんじゃなくて、第1作から順番に訳してくれていたらアリンガム作品の印象も大きく変わっていたのかなぁと感じます。実際この作品にしても『Dancers in Mourning』と共通した登場人物が出てくるだけではなく、彼らの人間関係も進展していったりしています。『屍衣の流行』はミステリとしては不満はありませんが、いきなり読んでしまったためにシリーズキャラクターの面白さが味わえなかったのが少々残念でしたね。シリーズキャラクターを追いかけていくのもアリンガムの楽しみ方のひとつみたいですから。未読で英語の得意な方は『Dancers in Mourning』→『屍衣の流行』の順で読んだ方が良いかも。

 とにもかくにもアリンガム初挑戦だったわたしにとっては良い作品でした。もちろんアリンガムの作風から本格好き以外にもうける作品なので、もっと多くの人が手にとりやすい値段設定だったら良かったな。

ジェームズ・アンダースン「血染めのエッグ・コージイ事件」 

血染めのエッグ・コージイ事件 血染めのエッグ・コージイ事件
ジェームズ アンダースン (2006/09)
扶桑社

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★★★★☆

 1930年代の英国。バーフォード伯爵家の荘園屋敷に、テキサスの大富豪、大公国の特使、英海軍少佐など豪華な顔ぶれが集まる。やがて嵐の夜に勃発する、宝石盗難事件と、謎の連続殺人。犯人は15人の中にいるはずだが、手がかりは庭に残された、血のついた茹で卵覆い(エッグ・コージイ)だけ…。復古的な舞台立てと、ロジカルな推理、けれん味あふれるトリック、そして意外な結末。70年代に黄金期本格の味わいを復活させた作品として名高い、伝説のパズラーが待望の復刊。

 これは面白かった。黄金時代を思わせるきわめて王道な本格ミステリです。
 舞台はたいそうなお屋敷で、クローズドサークルでこそ無いもののカントリーハウスミステリであることには違いなく、館フェチのわたしにはそれだけでもうたまりません。
 容疑者となる登場人物は大勢でてきますが、顔ぶれが多彩で、しっかりと書き分けがされているため、パズラーとはいえ登場人物で混乱することは無いでしょう。というか、事件発生時はかなり登場人物の行動が入り組んでくるので、書き分けがされていないと話にも何もなりません。
 カバーに「伝説のパズラー」と書かれているだけあり、解決篇の読み応えは抜群で、登場人物たちの行動が明らかにされていく過程は、まさにパズル状態。しかも犯人が繰り出したトリックたるやビックリ仰天の大仕掛け。でもこのトリックはインパクトがあるだけに、ネタばらしされやすそうです。藤原宰太郎さんあたりがもうしてたりして(笑)。読もうと思っている方は早めに読むことをお勧めします。
 で、謎が次々と解かれていく解決篇ですが、最後まで残るのがタイトルにある<血のついたエッグ・コージイ>。はっきりいって期待を裏切られるほどその真相はしょぼいんですが、まあそれはご愛嬌ということで。もうね緻密な推理だけでお腹いっぱいの状態ですから、これは瑣末な問題ですよ(笑)。

 なお、この『血染めのエッグコージイ事件』はシリーズ作品の1作目で、このシリーズは今現在3作出ているようです。2作目の『切り裂かれたミンクコート事件』というやつも近々翻訳される予定があるとのこと。その舞台はなんと1作目とおなじオールダリー荘!!これは楽しみだ。あまり間を空けずに読みたいな。

 本格過ぎるほどの本格なうえ、事件はお屋敷という狭い舞台で起こるので、日本の新本格ファンにはウケがいいと思います。お勧めです。

10年ベスト 

 ミステリーリーグのサイト上で行われていた「オールベスト・アンケート」の集計が終わったみたいです。

 素行迷宮10/5

 わたしの投票は以下のとおり。

おなまえ(ハンドルネーム可):ウイスキーぼんぼん


1位:紅楼夢の殺人
2位:ミステリ・オペラ
3位:イニシエーション・ラブ
4位:絡新婦の理
5位:メルカトルと美袋のための殺人


コメント

『紅楼夢の殺人』…仮にオールタイムベストを選ぶとしてもこの作品は入れるかもしれません。出るべくして出たというか、本格ミステリを語るうえでこの作品は外せません。
『ミステリ・オペラ』…壮大なミステリ曼荼羅。探偵小説と昭和史を見事に融合させた大傑作だと思います。
『イニシエーション・ラブ』…新本格ミステリで流行した叙述トリックが、最強の形で作品となったのがこれだと思います。
『絡新婦の理』…探偵以上に事件を掌握する真犯人が強烈に印象に残っています。分量のある作品ですが、読んでいる最中は先が気になってページをめくる手が止まりませんでした。
『メルカトルと美袋のための殺人』…短編集の中ではこれか泡坂妻夫さんの『曾我佳城全集』ですが、心情的に新本格作家の作品を優先して選びたかったのでこれにしました。


 いい具合に崩れた本格が並んで、第三の波のランキングとしてはなかなか見ばえがいいんじゃないかと。叙述トリック、メタミステリ、トリック連発型、短編集、キャラクター性重視のミステリ、とまあ結果的にバラエティに富んだ顔ぶれになったみたい。
 これが新本格の前半10年だと、きっと端正なものや叙述トリックものばかりを並べていたかもね。
 京極作品は人気が集中するんだろうなぁと思いつつも、投票せずにはいられませんでした。『イニシエーション・ラブ』は本格としてこれはどうなんだろうと、さすがに当時は当惑して投票しませんでしたが、もう今回は関係ないや(笑)ここ10年の本格のベストとしちゃあ『紅楼夢の殺人』かなぁ。まあ少数派であることは自覚してますが。
[ 2006/10/05 18:55 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

講談社ノベルス10月の新刊 

 amazonに表紙きてたー。

 今月は大漁だ!!

ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー
浅暮 三文 (2006/10/06)
講談社

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QED ventus 御霊将門 QED ventus 御霊将門
高田 崇史 (2006/10/06)
講談社

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クラムボン殺し クラムボン殺し
中島 望 (2006/10/06)
講談社

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十津川警部 幻想の信州上田 十津川警部 幻想の信州上田
西村 京太郎 (2006/10/06)
講談社

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箱の中の天国と地獄 箱の中の天国と地獄
矢野 龍王 (2006/10/06)
講談社

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 スクロールおつかれさまです。

 おおお、『ポケットは犯罪のために』の表紙なかなかいいじゃん!
 今月は上の5冊プラス下旬発売の西尾維新さんの『零崎軋識の人間ノック』の計6冊。

 とりあえずグレさんと矢野さんは買いで、高田さんのは文庫落ち待ち。

 気になるのが中島望さんの『クラムボン殺し』で、帯を見るとけっこう面白そうだ。ノンシリーズなら読んでみようかな。
[ 2006/10/05 18:29 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

道尾秀介「シャドウ」 

シャドウ シャドウ
道尾 秀介 (2006/09/30)
東京創元社

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★★★★☆

 人間は、死んだらどうなるの?―いなくなるのよ―いなくなって、どうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、鳳介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作。

 この人の本はあまり読んでいないから、詳しいことは言えませんが、路線としては短編の「流れ星のつくり方」と同じ系統に属する作品といえるのではないでしょうか。ピュアな少年少女を事件に介入させる物語で、この系統の作品が好きな人にはもちろん、フェアに気持ちよく騙されたいという人にもおすすめできます。
 騙しのテクニックが冴える作品ですが、そこにあるのは例えば『葉桜の季節に君を思うということ』などとはまた別種の驚きですね。この『シャドウ』はミスリードが半端ではないのです。
 思いきりネタバレになるんで伏せるしかないんですが、この作品に仕掛けられたミスリードをひとつ具体的に書けば

 洋一郎が現場で見た空調の室外機と、それを見て「あれは、利用できるかもしれない」という彼の考え
 凰介が見た意味ありげな幻覚
 凰介が夜に聞いたファンの音
 恵が飛び降りたのが夜である事実

 以上のことから、読者は 凰介 が極めて怪しい人物であると推測するでしょう。……え?しない?……わたしは「凰介が聞いたファンの音は空調のに違いない!彼は夢遊病か何か精神を病んでいて、夜な夜な恵を殺しに行ったのだろう。」とか思っちゃいました(汗)
 こんな感じでいたるところにミスリードを仕掛けており、出てくるもの出てくるものその全てに読者が思っているのとは別の意味が隠されていると言っても過言ではありません。ですからラストのカタルシスはとても大きいのです。泡坂妻夫さんの短編「G線上の鼬」がよく全編伏線という言葉で絶賛されますが、この『シャドウ』は全編ミスリードといった感じでしょうか。なんか印象は似ています。

 目に見えたトリックとかは無いんですが、それでも『シャドウ』はかなり計算されて書かれたミステリだと思うし、そのうえきちんとそれを成功させていると思います。
 う~ん、どうかなぁ、『本ミス』は無理でも『このミス』の方にはランクインするかな?良い作品なんで、もうここまでくれば投票者の好みの問題ですね。
[ 2006/10/04 20:30 ] 道尾秀介 | TB(0) | CM(0)

エラリイ・クイーン「クイーンのフルハウス」 

クイーンのフルハウス クイーンのフルハウス
エラリイ・クイーン (1979/09)
早川書房

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★★★☆☆

 エラリイ・クイーンの後期の短編集です。
 3篇のノヴェレットと2編のショート・ショートが収録されており、全体をポーカーの役であるフルハウスに見立てた構成になっています。


 ノヴェレット

 「ドン・ファンの死」目立ったトリックはなく、犯人にいたるプロセスもそこまですごいものではありませんが、お芝居を成功させようとてんやわんやするオーナーたちや濡れ衣を着せられたヒロインの救済などはお話としては悪くありません。日本語に翻訳したがために真相が露呈しやすくなっているのが難点か。

 「ライツヴィルの遺産」よくありがちな遺産がらみの事件ですが、真相にはひねりが効いており読者の思い込みを逆手に取った面白い作品です。悲劇のヒロインを守るエラリイもヒーローっぽく描かれていてなかなか良かった。

 「キャロル事件」収録作のなかでは文句無しのベスト。後期に発表された作品だけあって、真相は実にそれっぽいです。死刑執行のタイムリミットと犯人特定のロジックが見事に一体となっているのみならず、探偵役が真実を告発すればそれで事件解決なのか?という法と正義のはざまに揺れ動くエラリイを描ききった傑作です。死刑執行の瞬間を描いたシーンも必見。

 ショート・ショート

 「Eの殺人」謎解きクイズレベルの作品ですが、そのなかでもきちんと推理が展開していく面白さを描いています。真相は死者が死に際に残したにしては、ちと複雑なので、ダイイングメッセージものとしてこれはどうなんでしょう。もっと単純明快な驚きが欲しいところです。

 「パラダイスのダイヤモンド」言葉遊びレベルだけど、ダイイングメッセージとしては悪くなく、メッセージの受信者側のミスということで割と基本にも忠実なので「Eの殺人」よりはこっちのほうが好みかな。さりげなくかつ正確にはられている伏線も悪くない。
[ 2006/10/03 21:32 ] エラリー・クイーン | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社
・上野東照宮

【神奈川】
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院(鎌倉大仏殿)
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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2016年の水樹奈々さん
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