読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

山口雅也「落語魅捨理全集 坊主の愉しみ」 

落語魅捨理全集 坊主の愉しみ落語魅捨理全集 坊主の愉しみ
2017/5/11
山口 雅也

商品詳細を見る

★★★★☆



 【内容紹介】

 「猫の皿」「品川心中」「時そば」「あたま山」「花見の仇討」「そば清」「粗忽の使者」「らくだ」「田能久」…などなど。名作古典落語をベースに当代一の謎(リドル)マスター山口雅也が描く、愉快痛快奇天烈な江戸噺七篇!




 『日本殺人事件』の作者らしい面白い着想のミステリ集です。
 謎があり、意外な真相がありと、しっかりミステリしているので心配ご無用です。有名な古典落語をベースに大幅なアレンジが加えられており、ほぼ作者のオリジナルの噺になっているので、古典落語を知らない人も安心して読めます。
 あとがきにて、落語小説を目指した、と言うだけあり、噺の滑稽さ、落ちのつけ方はまさに落語のそれです。落語が好きな人にもおすすめです。

 ミステリの謎としては「密室」が多く登場しますが、その真相は一筋縄では行かないものばかりです。落語の様々な型「考え落ち」「とんとん落ち」「合わせ落ち」「地口落ち」「夢オチ」「楽屋落ち」…これら様々な落ちを成立させるために注力された作品ばかりで、それらに引っ張られるかたちでミステリの真相も突飛なものになっている感じです。収録作で圧巻なのが「そこつの死者は影法師 落語魅捨理全集五」で、落として落として更に落として、読者を別世界へと連れ去って行きます。例えばケメルマンの「九マイルは遠すぎる」が推理によって読者を途方もない場所へ連れて行く作品ならば、本作は「落ち」でそれをやってのけているのです。落語×ミステリでしか描け得ない面白い作品でした。
 落語とミステリの親和性は高く、推理作家の方やミステリ読者の方の中にも落語ファンは多いと聞きます。ミステリの作中世界に寄席や噺家を登場させたうえで「落語ミステリ」とする作品には多く出会いましたが、そのようにミステリの枠組で落語の世界を描くのではなく、本作のように落語の様式そのものを利用してミステリを描いた作品は珍しいのではないかと思います。わたしも何度か定席へ行って落語を聴いたことがありますが、古典落語とは言っても、噺家によっては一部現代的にアレンジされたりもします。本書にも通信販売だのバイオハザアドだの、時代を超越した現代的用語が飛び出してきて笑いを誘います。そういった落語の持つ柔軟性や自由度に注目してミステリを描く試みは斬新で前衛的だと思います。
 落語を聴く愉しみ、そしてミステリを読む愉しみ、その両方が渾然一体となった不思議な一冊です。
スポンサーサイト
[ 2017/05/17 01:13 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

山口雅也「謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)」 

謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) (ミステリ・ワールド)謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) (ミステリ・ワールド)
(2012/08/24)
山口 雅也

商品詳細を見る

★★★★☆

 〈ハヤカワ・ミステリワールド〉
 傑作保証付き☆新時代の異色作家短篇集「究極の謎=リドルが、貴方に新しいミステリ=謎の扉を開く」 ―― ミステリ(謎)に必ずしも答えがあるとは限らない。芥川龍之介「藪の中」のように、謎(リドル)があり、結末は読者の想像に任せる物語をリドル・ストーリーという。本書はそんな脳を刺激し興奮の極致へ誘うリドル・ストーリーばかりを集めた世界でも類を見ない短篇集だ。王女サロメと彼女を巡る人々の選択や、連続殺人鬼が出す謎々、サラリーマンが出会う不条理等奇妙な味の謎(リドル)をご堪能あれ。


 収録作はすべて、結末を読者の解釈にゆだねるリドルストーリー型の作品になっています。しかし、たとえば「犯人はどっちだ?」というような読者への挑戦的な本格ミステリ然とした結末ではなく、ジャケット写真からもお分かりいただけるように、奇妙な味、と言っても良いような作品ばかりです。ちなみにこのジャケット写真は同じ早川書房から出ていた“異色作家短篇集”の表紙を踏襲しています(再刊されてデザインが変わってしまったけれど)。

 収録作は以下の5編


 ●「異版 女か虎か」 アブラハム・ネイサン/山口雅也訳
 ●「群れ」 山口雅也
 ●「見知らぬカード」 山口雅也
 ●「謎の連続殺人鬼リドル」 アブラハム・ネイサン・ジュニア/山口雅也訳

 ボーナストラック
 ●「私か分身(ドッペルゲンガー)か」 山口雅也



 「異版 女か虎か」と「謎の連続殺人鬼リドル」は、外国の作家が書いた作品を山口雅也さんが訳した、という体。
 リドルストーリーといっても2つのタイプの作品が収録されています。結末を読者が自由に考えるタイプの作品と、作者が用意したいくつかの選択肢の中から読者が結末を選択する作品、この2つです。前者のような作品が「群れ」「見知らぬカード」で、後者のような作品が「異版 女か虎か」「謎の連続殺人鬼リドル」「私か分身(ドッペルゲンガー)か」です。読者の好みによってどちらが好きかは分かれると思いますが、個人的には断然、結末の選択肢が用意されているタイプの作品が好きですね。そして何と言っても面白かったのが「異版 女か虎か」です。

 リドルストーリーの代名詞「女か虎か」を作者がさらにチューンナップした作品です。事前にオリジナルの「女か虎か」を読んでいれば違いがはっきりと分かることでしょう。結末において生死をかけた二択を迫るオリジナルですが、「異版」の方はそのレベルにとどまっていません。あらゆる関係者に二択を迫り、その取捨選択によっていかようにも結末が変わってしまうのです。結末部分は、要は生か死かの単純なものですが、そこへ行き着くまでのルートが無尽蔵にあるのです。変数が多すぎて結末を確定出来ないもどかしさがあり、それが本書の魅力になっています。これ樹形図を書くと面白いかもしれません。

 「謎の連続殺人鬼リドル」はリドルストーリーでありながら、ある部分では最適解が用意されていて、それを読者が推理する余地があり、パズル色の強い作品になっています。しかし、その最適解が分かったとしてもそれ以降の展開(2発の銃声音)が読者を混乱に陥れます。裏切られるのです、読者の推理を。2者の対立を硬直状態に持っていくはずの「最適解」が、直後にそれとは真逆の状況になってしまうのです。これがサプライズ。そのサプライズの直後にリドルストーリー特有の混乱に襲われます。こういった読後感や余韻はなかなか味わえません。すばらしい作品です。
 銃は誰が誰に対して撃ったのか、直前に導き出した「最適解」はこの場合本当の意味では最適解ではなかったのではないか、といったようにさまざまな解釈ができて楽しいです。

 「私か分身(ドッペルゲンガー)か」は既刊『モンスターズ』に収録されている「もう一人の私がもう一人」を作者自身が改作したもの。
 途中から2人の主人公をどっちがどっちか分からないような書き方をしていて、2人の人物を結び付けるばかりではなく、事件の発生状況、犯人がどちらでもおかしくないような状況までを1つに収束させてしまう書き様はすばらしいです。


 結末を見せないからこそ面白さが光っている作品ばかりです。謎が理屈で完全解明される本格ミステリファンにこそオススメしたい作品集です。たまにはこういうのも良いと思います。




モンスターズ (講談社文庫)モンスターズ (講談社文庫)
(2011/08/12)
山口 雅也

商品詳細を見る

不思議の国のアリス (文春文庫)不思議の国のアリス (文春文庫)
(2012/01/04)
ルイス キャロル、カズモト トモミ 他

商品詳細を見る
[ 2012/09/05 21:27 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

山口雅也「狩場最悪の航海記」 

狩場最悪の航海記狩場最悪の航海記
(2011/09)
山口 雅也

商品詳細を見る

★★★★☆

 2001年、ロンドンで偶然発見された『ガリヴァー旅行記』の続篇。そこには故意に省かれた旅行記の全容を示す記述が! 将軍・徳川綱吉が天然痘で臥せる日本に到着したガリヴァーは、側用人・狩場蟲齋から不老長寿の秘薬・竜仙粉を探す船旅への同行を請われ、軍艦で出立。ところが乗組員は犯罪者の寄せ集めで使い物にならず、さらには海賊の襲撃をうけ、船は乗っ取られてしまう。果たして秘薬は見つかるのか? ロジカルミステリーのファンタジスタが贈る、血湧き肉躍る超絶の冒険譚!


 山口雅也さんの久々の大作長編。『生ける屍の死』、『奇偶』と傑作を発表している過去があるだけに、嫌が応でも期待が高まります。
 今回は『ガリヴァー旅行記』の続編という設定で、ガリヴァーが日本を訪れた時のをことを記述しています。恥ずかしながら本家の『ガリヴァー旅行記』は未読なんですが、そちらには日本でのことは記述されていないようで、そこの部分を埋めるのが本書です。異国の人間が日本を訪れて異文化コミュニケーションをとるところは『日本殺人事件』のようですが、そこまでギャグ路線に進んではおらず、割と普通の冒険小説です。あくまで『ガリヴァー旅行記』の続編なので、そこらへんはまじめにやっている様子。しかしタイトルに「最悪の航海記」とあるようにその冒険は平坦ではなく、てんやわんやあってなかなか盛り上がります。
 前半はガリヴァーと日本人の狩場が話しているシーンしか印象に残っていませんが、いざ「秘薬・竜仙粉」を求めに大海原へ出航してからはテンションが変わります。いまふうに言うと『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか『ワンピース』とかそういった感じのテンションに移行していき、秘薬の眠る孤島に付いたかと思うと、今度は恐竜たちと戦いだして、今度はまるで『モンスターハンター』のようです。結果的にそうなったのかは分かりませんが、最近の流行がいい感じで取り入れられています。
 異国の人間や生き物と出会ったり、価値観の違いに触れたり、仲間と協力し合って巨大な敵を倒したりと、なかなか教育的な冒険小説で、『ガリヴァー旅行記』と同じく児童書として小学校の図書館にあっても違和感がありません。もちろん本書は児童書ではないのだけれど、エンタメとしてよく出来ているので、年齢的にもそうだしミステリファン以外の幅広い読者に受け入れられると思います。

 しかし忘れてはならないのが、作者がミステリ作家の山口雅也さんだということ。もちろんトリックが仕掛けられています。後半には作中で密室殺人が勃発して、それを狩場が謎解きします。『奇偶』と違って、長い物語のまとめとしての密室殺人ではないので、個人的にはこれは無くても良かったんじゃないかと思った。しかし他方で、“『ガリヴァー旅行記』の続篇”という設定を利用したトリックも仕掛けられており、こちらの方はなかなか良かった。本書はレミュエル・ガリヴァーが著したという体ですが、実際書いているのは山口雅也さんです。この微妙なズレの中に、本来感じるべき違和感を隠してしまいサプライズに繋げているのは高度だった。

 なにやら労作感が漂っていますが、読者としてはそういうことは心配せずに思いっきり楽しめる作品だと思います。『生ける屍の死』や『奇偶』と違って、ミステリとして実験的なところは少ないので、トリックがあるとはいえあまり本格は期待しないほうが良いかも。




パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]
(2011/11/02)
ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス 他

商品詳細を見る

ONE PIECE 63 (ジャンプコミックス)ONE PIECE 63 (ジャンプコミックス)
(2011/08/04)
尾田 栄一郎

商品詳細を見る

モンスターハンターポータブル 3rd HD Ver.モンスターハンターポータブル 3rd HD Ver.
(2011/08/25)
PlayStation 3

商品詳細を見る
[ 2011/10/04 22:19 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

山口雅也「新・垂里冴子のお見合いと推理」 

新・垂里冴子のお見合いと推理新・垂里冴子のお見合いと推理
(2009/05/29)
山口 雅也

商品詳細を見る

★★★☆☆

 垂里家最大の懸案事項。それは長女・冴子の結婚問題!小説家を志し、毎日、原稿ばかり書いている冴子だが、周囲からは次々とお見合い話が舞い込む。それでも、やっぱり、お見合いするたびに事件に巻き込まれ、お相手そっちのけで謎を解くはめに!はてさて、今回の冴子のお見合いの成否は、そして事件の行く末は。

 垂里冴子と東京茶夢がついに競演!夢の競演が遂に実現です!
 あんまり盛り上がってないけれど、2人が持つ独特の雰囲気(ボケてるのか真面目なのかよく分からないところ)が話をより面白くしています。
 エラリー・クイーンの“逆立ちした犬”を日本風にアレンジしたところなんか、さすがクイーンの影響を受けた作家だけあります。新本格の香りがプンプンして大好きです。
 ペンギンショーの最中に宝石が消失して、それに絡んで連続殺人が勃発する話も、謎の不可能性と理詰めの推理がしっかりしているから、本格ファンも満足できることでしょう。ライトな雰囲気ではあるけれど、ミステリそれ自体は決してライトではないのです。そのうえ、アクション有りボケ有りユーモア有りと、謎解きのみにこだわらない作風が良く、『奇偶』や『生ける屍の死』のようにマニアックになりすぎていないので、多くの人に読んでもらいたいですね。

 日本殺人事件シリーズの最新作も読みたくなってきました。「神は寝ている猿」がそれって言えばそれなんだけど、長編が読みたい。




日本殺人事件 (角川文庫)日本殺人事件 (角川文庫)
(1998/05)
山口 雅也

商品詳細を見る
[ 2009/06/18 21:12 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

山口雅也「キッド・ピストルズの最低の帰還」 

キッド・ピストルズの最低の帰還キッド・ピストルズの最低の帰還
(2008/05/22)
山口雅也

商品詳細を見る

★★★★☆

 現実と、似ているようで全然違うパラレル英国の刑事、キッド・ピストルズ。パンクでキッチュな風貌のキッドが挑む事件には、なぜかマザーグースの古謡が響いていて……。
 鬼才・山口雅也が満を持して放つ傑作シリーズ、13年ぶりの大復活!


 やっぱりこのシリーズ、なんだかんだで面白い。
 収録作のうち1995年に雑誌掲載された「アリバイの泡」「鼠が耳をすます時」に比べ2007年以降に発表された「誰が駒鳥を殺そうが」「教祖と七人の女房と七袋の中の猫」「超子供たちの安息日」などのほうが面白く、シリーズ完全復活といってもいいと思います。

 「誰が駒鳥を殺そうが」は僧正殺人事件でもよく知られているマザーグース「誰が駒鳥を殺そうが」が題材となっていて、この有名な童謡を復活第一作に持ってきているところを見ると、作者の意気込みの強さを感じます。
 童謡の雀、駒鳥、蝿、鳩の役割が固定観念として植え付け、さらにコマドリとロビンの2人を登場させることで読者を煙に巻きます。事件は射程外から射られた矢による不可能犯罪で、謎の見せ方が抜群に上手いです。マザーグースに忠実でありながらも日本の流儀を持ち込むことで、ミステリとしての完成度を増した傑作です。

 「アリバイの泡」は2/3のアリバイというアイデアが素晴らしいです。三つ子のうちから1人の犯人を特定する手がかりは、単純でありながら唯1人を限定するものです。三つ子のうちの1人が間違いなく犯人だけど、だれが犯人かが分からない、という間合いが絶妙で、さらに、そこまで探偵側にカードをさらしているのに、監視カメラで見られているにもかかわらず視覚情報がまったく当てにならないという(というより見なきゃ良かった的なww)離れ業を成し遂げた作品です。

 「教祖と七人の女房と七袋の中の猫」、これも広い意味での密室で、いろいろ推理を出し合っては潰されていくという展開。そのなかに1つさりげなく強力なミスリードを有した推理が混じっていています。また、問題のトラックにもミスリードがあり、結果的に探偵側、犯人側の双方が読者に対してミスリードを仕掛けてくることになるのです。これは上手いです。そのミスリードとなる推理が、真相に肉薄しているものなので、かなり大胆なことをやっていると思います。

 「鼠が耳をすます時」異色の凶器として面白いけど、最近じゃあ良く知られてます。これは13年前はどうだったんでしょう。海野十三の現代版として印象に残るトリックですが、作品としてみると収録作の中ではいちばん残念な出来。

 「超子供たちの安息日」、この作品で描かれているのは、超能力を持った子供たちが収容された施設でおこる密室殺人事件です。このアイデアだけでご飯3杯はいけるというくらい魅力的で、なかなか読ませます。「超能力」という通常のミステリにはない設定の方にばかり警戒をしてしまい、ミステリとして基本的な方に対して無防備になってしまった的なトリックです。
 巻頭の「誰が駒鳥を殺そうが」で描かれたとある事件が伏線となって浮かび上がる趣向が面白く、また超能力全開の世界でも地に足の付いた論理で真相を暴きます。超能力を「逃げ道」として使うのではなく、論理的謎解きを構築するファクターとして積極的に利用しているのが恐れ入ります。素晴らしい作品でした。
[ 2008/05/27 21:28 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

山口雅也「モンスターズ」 

モンスターズモンスターズ
(2008/03)
山口 雅也

商品詳細を見る

★★★☆☆

 誰のなかにも潜んでいるモンスター それに乗っ取られた時に始まるミステリ
深く、濃く、そしてゆっくりと謎は深まる……『ミステリーズ』『マニアックス』に続くシリーズ第3弾


 やっぱり山口さんって雰囲気作りが上手い。日本人離れしてます。
 表題作の「モンスターズ」なんかは、海外+モンスターが跋扈する世界の両方が見事に描かれています。
 が、しかし、残念ながら<Mシリーズ>の中では一番つまらなかったです。
 個々の短編のプロットはとてもよく練りこまれて、「もう一人の私がもう一人」などは、真反対の二人の人間を徐々に徐々にダブらせてく、それも伏線によって違和感無く、その伏線の配置のタイミングが上手いんですよね。結末部分だけ見れば、この「もう一人の私がもう一人」ほか、「死人の車」「箱の中の中」「モンスターズ――怪物團殺害事件」などはさほど意外性のあるものではありませんが、物語の雰囲気とプロット、これが面白いものばかりなのです。ですから、結末の意外性ではなく、結末までの道程が一番楽しい。収録作は例外なく物語に引き込まれます。
 でも『ミステリーズ』にしろ『マニアックス』にしろ、もっとユーモアというか愉快なところというか、そういうニコニコしながら読めたところがあるんですよね。今回の『モンスターズ』はそういうテイストが少ないように思います。でもまあ前2作を読んだのが中学生くらいのとき(一番楽しくミステりが読めた時期)だから、そのときほどこのシリーズが楽しめなかったのは読む側の問題かもしれません。

 ただし、それを加味しても表題作「モンスターズ」は読んでしかるべき傑作だと思います。人狼、吸血鬼、透明人間…彼らの属性を利用した密室殺人は必見です。
[ 2008/04/09 20:30 ] 山口雅也 | TB(0) | CM(0)

山口雅也「キッド・ピストルズの慢心」 

キッド・ピストルズの慢心 キッド・ピストルズの慢心
山口 雅也 (2000/10)
講談社

この商品の詳細を見る

★★★☆☆

 もうひとつのイギリス、パラレル英国で活躍するパンクス出身の捜査官キッド・ピストルズとピンク・ベラドンナ。2人のまわりで起こる事件は、いつも懐かしい童謡《マザーグース》を連想させるものだった。スタイリッシュな世界、美しい論理で本格の頂点を極める、マザーグース・ミステリ連作シリーズ登場。


 マザーグース・ミステリといえばこのキッド・ピストルズ・シリーズ!
 つい先日『キャット・ザ・リパー』というゲームを攻略したばっかりなので、より楽しく読めた気がします。


 【収録作】

 キッド・ピストルズの慢心
 靴の中の死体
 さらわれた幽霊
 執事の血
 ピンク・ベラドンナの改心



 「キッド・ピストルズの慢心」と「ピンク・ベラドンナの改心」は、彼らが警察に勤め、探偵活動をしはじめるに至った動機が描かれており、シリーズファン必見の作品といえるでしょう。

 すべての作品でマザーグースに彩られた事件を描いています。
 「キッド・ピストルズの慢心」は<鋳かけ屋、仕立て屋>、「靴の中の死体」は<靴に棲む老婆>、「さらわれた幽霊」は<ちっちゃなボー・ピープ>、「執事の血」は<巨人の唄>、「ピンク・ベラドンナの改心」は<ジャックとジル>が扱われています。

 『キッド・ピストルズの冒瀆』に比べてずいぶん軽い作品が集まった感じですが、舞台や謎の設定に魅力的なものが多く、それらはミステリーファンの心をくすぐるものである為、シリーズファンの期待には応えてくれるはずです。
 「靴の中の死体」は、殺人事件の発生した場所がなんと靴の形をした館というもので、これはエラリークイーンの『靴に潜む老婆』でもあり得なかった設定です。しかも現場は雪の積もった密室というのだからたまりません。
 「さらわれた幽霊」も、20年前に誘拐されて行方不明になった少年が、姿を見せないまま再び現在誘拐されるという異様な謎です。
 謎や状況、それから舞台といったものは確かに楽しめるのですが、肝心の真相はよめてしまうものが多かったためちょっと残念です。「キッド・ピストルズの慢心」あたりは、それがメインではなさそうなので、まあいいんですが、「執事の血」あたりは随分早く真相がわかったちゃったなぁ。
 「靴の中の死体」も真相は単純なものですが、犯人告発の証拠の出し方はとても上手いと思いました。「ピンク・ベラドンナの改心」はSMの世界をユーモア交じり(探偵士のあの人が○○だったり)で語る物語が、犯人に対してピンクが憤る解決篇へと一転する展開がギャップがあって面白いです。

 「キッド・ピストルズの慢心」でキッドの前に立ちはだかったあの人物は再び登場しそうな気がしますが、いかんせん続編が出版されないから気になって仕方がない。もうこれでキッド・ピストルズ・シリーズは終わりなのかなぁ。
[ 2006/12/07 21:07 ] 山口雅也 | TB(1) | CM(0)
スポンサードリンク
プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

FC2プロフへ
mixi(放置中)
Twitterはじめました
食べログもはじめました(NEW!)

好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社
・上野東照宮

【神奈川】
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院(鎌倉大仏殿)
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

最新のつぶやき
2016年の水樹奈々さん
ハーイ!ハーイ! ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!