読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。
カテゴリー  [松本清張 ]


松本清張「時間の習俗」 

時間の習俗時間の習俗
(1972/12/19)
松本 清張

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――『点と線』の名コンビ三原警部補と鳥飼老刑事が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。




 以前、小倉の松本清張記念館へ訪れた時に印象的だったのが、資料館に一眼レフカメラおよびその関連品がたくさん展示されていたことです。いずれも松本清張愛用の品で、中には清張がオーダーメイドした一眼レフ(いわゆる”松本清張スペシャル”)もあって、なかなかのカメラ愛好家だったことが分かります。本書『時間の習俗』はそんなカメラ好きの清張らしさがよくあらわれた作品でした。
 メインとなるアリバイトリックにはカメラを使った工作が行なわれています。有名なので、本書を未読の人でも知っている人は多いかもしれません。しかし時代は移ろい、デジイチにシフトした今後は「フィルムを巻く」という概念が薄れていくのは確実で、そういう意味でトリックの点では朽化は免れません。ひょっとしたら今の若い読者にはピンと来ない人もいるかもしれません。しかしトリックは朽ちても本書の持つ魅力のもう一方の側面は決して朽ちることは無いでしょう。ドラマ性の高さです。
 思い出せば清張の上位作品『ゼロの焦点』では禎子の心情と北陸の荒天を対比させたスケールの大きな作品だったし、『点と線』では都会の喧騒の中で一瞬姿を現す幻想をトリックの要にしていたし、こういったドラマ性の高さも清張作品の特徴だと思います。
 そういった点で本書を見た場合、殺人という汚らわしい行為を隠蔽するために仕掛けられたトリックが、和布刈神社の神事を写した写真に依存している点がたいへん美しいと感じました。闇夜に灯される祭事の炎の美しい光景が、清張の巧みな筆のおかげで読んでいて目の前に浮かんできました。
 たとえば横溝正史の『悪魔の手毬歌』の手毬歌、『犬神家の一族』の菊人形などは、死体を直接装飾し、死を美しく彩りましたが、清張の場合もやり方こそ違えど、死のそばに犯人の仕掛けた美が潜んでいます。先に挙げた『ゼロの焦点』『点と線』、そして『時間の習俗』全部そうです。作風の点で清張と正史を両極に置くことがしばしばありますが、そうばかりではないことが本書を読むとよく分かります。
 実際のところ、刑事による犯人の絞込みにはかなりの無理があるし、犯人の用意したアリバイ工作の数々も、実行可能性という問題以外に、それらを用意することそれ自体が現実性を帯びていなかったりします。しかし、序盤の犯人特定を急いだのはアリバイ崩しを主に描くためだというのは明らかだし、アリバイトリックの複層構造だって謎が強固なぶん面白くないわけがありません。これらはすべて清張のサービス精神の表れで、本書の減価事項にはなり得ません。さらに清張の持ち味は「本格」だけではないし、高いドラマ性でも読者を楽しませてくれる点、満足度の高い1冊でした。




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[ 2015/05/14 23:21 ] 松本清張 | TB(0) | CM(0)

松本清張「高校殺人事件」 

高校殺人事件 (光文社文庫)高校殺人事件 (光文社文庫)
(2011/03/10)
松本 清張

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★★★☆☆

 武蔵野台地の一画で、多摩川を見下ろす城跡に私たちの高校はある。高校三年生の私の仲間で詩人ポーの心酔者で、クラスメイトや先生から愛されていた通称「ノッポ」が学校裏の沼で絞殺死体となって見つかった。彼の死をきっかけに学校の周りで不思議な出来事が続発する。はたして事件の真相とは―。清張作品では稀な青春推理小説で、瑞々しい感覚を放つ一作。

 松本清張ではめずらしいジュブナイル作品で、光文社文庫よりこのたび復活です。
 清張といえば!社会派推理!というイメージがまずありますが、この作品の主人公は高校生です。しかも少年探偵団のように仲間たちで力を合わせて犯人の正体に迫ってゆくのです。そこには時刻表もなく、足をすり減らす刑事さんの姿もありません。こういうだけで珍しいと思うし、文章も硬くなく読みやすいのも特徴です。

 クラスメイトが殺されて同級生が探偵活動を行うという設定は魅力的なんですが、中盤くらいにあらわれる女の子が力を持ちすぎていて、ほとんど彼女の尽力で真相を見抜く結果になっているのは残念なところです。
 しかし、死体の隠匿場所の意外性や大胆さは、隠れたトリックメーカーである松本清張の面目躍如といったところではないでしょうか。たぶん結構な読者はその場所を見抜いてしまうんじゃないかと思いますが、たとえそれが見抜かれ易いものであったとしても、読者をアッといわせてやろうという清張の心意気が感じられました。
 そして死体発見場所やロウソクの位置から、高校生たちが様々な視点で推理を繰り広げる場面は熱がこもっています。
 トータルとしてはたいへんサービス精神のあふれる探偵小説で、アリバイ崩しや社会派が苦手な読者でも読めるのではないかと思います。面白かったです。

 ところで、松本清張は家庭が貧しかったために、小学校卒業後、家族のために働きに出たと聞きます。そういう清張がどういう気持ちで本書のような高校生たちが稚気として探偵活動にいそしむ物語を書いたのかが非常に気になりました。清張は随筆「学歴の克服」で学歴に対する劣等感を強調しています。
 読んでいる最中、清張の「私に面白い青春があるわけはなかった。濁った暗い半生であった」という言葉が頭を離れませんでした。
[ 2011/03/20 17:11 ] 松本清張 | TB(0) | CM(4)

松本清張「巨人の磯」 

巨人の磯 改版 (新潮文庫 ま 1-37)巨人の磯 改版 (新潮文庫 ま 1-37)
(2009/02)
松本 清張

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★★★☆☆

 大洗海岸に巨人と見紛うほどに膨張した死体が流れ着いた。警察は苦心の末に、海外旅行中の県議会議員と特定したが、その腐爛状態には驚きのトリックが隠されていた(表題作)。実力はありながら、地味な風貌が災いし、どの組織でも決してトップの椅子にはつけない元銀行副頭取。男が三十一歳も若いバーのマダムと再婚したとき、悲劇が幕を開ける「礼遇の資格」など傑作短編五編。

 当時探偵小説文壇を社会派推理の帳で覆い(昔のことはよく分からないけれどそうなんでしょう。)、本格読者の仮想敵となっていた(なっている?)松本清張も生誕はや100年。それを記念して新潮文庫からいくつかの本が復刊されていて、この『巨人の磯』もそのひとつです。

 表題作の「巨人の磯」はトリッキーな探偵小説だという前評判を聞いていて、読んでみると確かにそうなんだけど、意外性は正直そんなでもないです。トリック自体の意外性もそうだし、あの清張がこんなトリックで読ませる探偵小説を書いていただなんてえぇぇ!という意外性にしてもそう。特に後者に意外性を感じた読者は、よっぽど清張に偏見をもっていたとしか思えません。端的に言えば新本格厨というやつです。
 この短編集はむしろ表題作「巨人の磯」だけに注目するのではなく、奇妙な味、民俗学的薀蓄、歴史小説的新解釈、などなど収録作5作すべてから清張の引き出しの多さを感じるべきだと思います。邪馬台国の新解釈なんか驚きました。無理目の解釈だけど、清張のように考えれば確かに面白いし、何も学会で発表するものでもないんだから、面白ければそれだけでもうエンタメとしては十分でしょう。この新解釈の割に作品が地味なのが、さほど話題に上ってない原因だと思うけれど、解釈でいえば鯨統一郎さんの「邪馬台国はどこですか?」よりもトンでるので要注目だ。




本格ミステリ・フラッシュバック本格ミステリ・フラッシュバック
(2008/12)
千街 晶之大川 正人

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[ 2009/03/25 19:30 ] 松本清張 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
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誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社
・上野東照宮

【神奈川】
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院(鎌倉大仏殿)
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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