読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

映画「劇場版 名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)」  

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劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』公式サイト
http://www.conan-movie.jp/index.html



★★★★☆



 【内容紹介】

 百人一首で有名な皐月会主催の皐月杯の会見収録が行われていた大阪・日売テレビで、爆破事件が起きる。崩壊するビルに高校生探偵の服部平次とその幼なじみ・遠山和葉が取り残されるも、コナンが救い出す。犯行声明が出ないことに疑問を抱いて調べを進めるコナンと平次の前に、平次の婚約者だという百人一首高校生チャンピオンの大岡紅葉が現れる。




 ゴールデンウイーク恒例の映画『劇場版名探偵コナン』の最新作『から紅の恋歌(ラブレター)』を観に行きました。
 今作は京都が舞台です。京都といえばやっぱり『迷宮の十字路』を思い浮かべます。コナンファン一番人気の映画だそうです。そんな人気作と嫌でも比較されてしまう今作ですが、正直負けていないと思います。去年の『純黒の悪夢(ナイトメア)』は興行収入シリーズ最高を記録したにもかかわらず、謎解き、ミステリの趣向の両要素が薄く、ミステリ読みとしては満たされず悶々としていたのですが、この『から紅』にはそのいずれもが備わっています。しかも『迷宮の十字路』でみせた服部平次と遠山和葉の幼少期から延々と続く関係に、大岡紅葉という女性が絡んできて、三角関係に決着をつけるべく百人一首にて遠山和葉対大岡紅葉という直接対決が描かれるのはストーリーとして大変盛り上がります。「百人一首」が殺人事件を起こすほどの「憎悪」を生み出す側面が描かれる一方、幼少期から一人の女性を盲目的にさせるほどの「恋」を生み出す側面も同時に描かれるプロットはよく練られていると思います。
 ミステリ的な点としては、第一の殺人事件において、映像演出的に視聴者を惑わせようとするシーンが挿入されていたり、名探偵によるダミー推理が展開されていたり、これは結構バレバレなのですが、このようなミスリードを仕掛けてくる姿勢は好感が持てます。レッドヘリングがあの人からこの人へ、とその役割が移動するごとに真犯人候補も連動して変化していき、最終的に「から紅」とした悲劇へと決着するのは圧巻です。また更に「レッドヘリング(紅いニシン)」が空転してくミステリ的展開を、狙って「から紅」と掛けている(から札→から紅→紅いニシン)としたら神がかり的なプロットです。ただし、映像ミステリの宿命か、謎解きが完全な口頭による説明になってしまっており、もう少し過去の場面の映像と連動させた謎解きが欲しいところでした。

 スタッフロール後の“フィニッシングストローク”の脱力、服部平次の「もっと禍々しい何かや!」と笑えるシーンなど多くあって、そういうミステリ以外の楽しい要素も多いのも子供向け映画としては親切です。

 脚本:大倉崇裕、主題歌:倉木麻衣と力の入った布陣で、明らかに『迷宮の十字路』超えを意識した映画だと思うのですが、『迷宮の十字路』と並ぶか、それを超えるクオリティはあると思います。
 個人的には上の中~上の上あたりでしょうか。いや、もう21作もあるし、9段階評価では上の上でも良いのではないかと思います。大倉崇裕さん、素晴らしい作品ありがとうございました。



 
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映画「劇場版 名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」  

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劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』公式サイト
http://www.conan-movie.jp/index.html



★★☆☆☆



 【内容紹介】

 ある夜、日本の警察に侵入したスパイが世界中の組織の機密データを持ち出そうとするも失敗。公安警察の安室透とFBIの赤井秀一の追跡によって、スパイの車は道路のはるか下へ転落する。次の日、東都水族館に遊びにきていたコナンたちは、ケガをした美しい女性を見付ける。彼女は左右の瞳の色が異なるオッドアイで、記憶を失っていた。そんな彼女とコナンたちの一部始終を、黒ずくめの組織のベルモットが見つめていた。




 劇場版名探偵コナンの記念すべき20作品目です。
 今作は過去の劇場版に無いくらいに「黒づくめの組織」を主軸にしており、主人公(キーマン)は江戸川コナンでは無く、組織の一員のキュラソーと言っても過言ではありません。組織内の身内のいざこざを描いている感も強く、一個人の探偵である江戸川コナンはもとより、おなじみ目暮警部率いる警視庁も完全に蚊帳の外といった印象を受けます。その替わりに黒づくめの組織と向かい合うのが、FBIの赤井秀一、警察庁の安室透だったりするわけで、なんかよく実体はわからんけれども大きな力vs大きな力がぶつかり合ってるなあ、というのは伝わってきて、若干今までの劇場版とは毛色が異なります。
 殺人事件が発生してトリックを暴き、犯人をあぶりだすという展開も皆無です。そういうフーダニット的本格ミステリの面白さは無いのですが、先に書いたように、組織内のひとりの女性を描いたドラマとしては面白く見ることが出来ます。
 というのも感心したのが、タイトルにある「純黒」の意味です。ストレートな解釈として、黒づくめの組織の独擅場となる事件、というのはそれはそれで正解なのですが、何色にでも染まることの出来るキュラソー(組織の一員)と「純黒」を噛み合わせたことで、予想外の決着を見せる点も挙げられます。キュラソーは記憶を取り戻し、再び組織の一員として純黒に染まることになるのですが、「純黒」の意味づけは考えられていて、ラストのワンシーンは感動的です。小さいエピソードがこのワンシーンに収束するプロットにはうなりました。またキュラソーを感化させた点で、「少年探偵団」という小さな組織が一人の女性を中心にして「黒づくめの組織」と張り合い勝利した、という見方も可能であり、謎解きを軸としていない本作だからこそ可能な、コナンを抜きにした珍しい決着としても評価できます。

 わたしが勝手に勘違いしていただけかもしれませんが「ダブルフェイス」の意味など、視聴者の興味を煽るのは上手いと思います。
 とはいえミステリとしては評価の難しい作品です。組織内と組織外のキャラクタだけでなく人間関係までもコミック(アニメ)で描かれているものと地続きなものが多く、たとえば、赤井秀一と安室透の確執であるとかは、劇場版では詳しい説明がされませんが、これはコミックでも謎であるため、劇場版でも謎のまま残って良い…といったような、解くべき謎と、謎のまま残されても良い謎が混在しているため、コミックを追いかけていないとこういう線引きが判然としない部分が多いのです。
 コミックにおいて物語を貫く大きな謎である黒づくめの組織を、劇場版で描く以上こういう事態は仕方の無いことですが、そういう意味では単体ミステリとしての評価は下げざるを得ません。何か視聴者を罠にかけようといったようなテクニカルな趣向が見えれば別だったのですが、少なくともわたしには本作からはそういうものが感じられませんでした。
 全劇場版の中では下の下~下の中あたりです。


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来場者プレゼント



 あと劇場版名探偵コナンとしては初の試みとして、来場者プレゼントがあります。
 これは、好きな劇場版作品をひとつだけ48時間無料視聴できるというシリアルナンバー付きカードです。

 数量限定なのでほしい人は早めに劇場へ足を運んでみましょう。

映画「劇場版 名探偵コナン 業火の向日葵」  

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映画『名探偵コナン 業火の向日葵(ごうかのひまわり)』
http://www.conan-movie.jp/index.html


★★★★☆



 【内容紹介】

 金持ちたちが一堂に会したニューヨークのオークションで、鈴木次郎吉は以前日本で焼失したといわれているゴッホの傑作「ひまわり」を落札する。彼が3億ドルという大枚を支払ってその作品を手に入れたのは、世界中に分散してしまったゴッホの7枚のひまわりをそろえ、日本で展覧会を開くためだった。江戸川コナンたちもその大ニュースに注目していたが……。




 劇場版名探偵コナンの19作品目、最新作を観てきました。
 今回は今までに無いタイプの作品で、史実をベースにした美術ミステリーです。
 現在までにゴッホの描いた『ひまわり』は7枚まで確認されており、そのうちの1枚が我が国日本で戦災によって焼失したとされています。いわゆる「芦屋のひまわり」というもので、その「芦屋のひまわり」が戦火を免れて発見されることから本物語は幕を開けます。
 なぜ「芦屋のひまわり」は焼失を免れていたのか?というのが本作品の大きなクエスチョンになっており、そこにオリジナルストーリーがつむがれていきます。損保ジャパン日本興亜美術館に展示されている『ひまわり』を毎日毎日欠かさず、なせか哀しげな瞳で見続ける、あるひとりの老婆の半生が深く関わっています。のみならず、ある1人のコナンレギュラーメンバーがその女性と浅からぬ関係だったとことが浮き彫りになるラストはオリジナリティがあり面白いです。
 全体のプロットとして、このような名画に翻弄される人物それぞれにスポットを当てることも可能だったはずですが、本作品ではそうしていないのが潔いところだと思います。なぜならコナン映画を観に来た観客が期待するのは、このような哀しげをまとうエピソードでは無く、爆破に継ぐ爆破、そして怪盗キッドの大活躍と、何より「らーーーん!」「しんいちーーー!」だからです。
 観客の需要と、そして美術ミステリーとしてのオリジナリティの両立が絶妙なバランスで描かれていると思います。確かに「芦屋のひまわり」にまつわるエピソードが割を食っていてしょぼい印象を受けますが、怪盗キッドの活躍に比重が置かれるのは仕方が無いことです。といってもこの怪盗キッドの命を掛けた怪盗劇が実は「芦屋のひまわり」に浅からぬ関係があって…と切っても切り離せない関係でジョイントしているところも良いですね。キッドの人柄の良さが表れています。

 ミステリとしてのクオリティも及第点と言って良いでしょう。
 怪盗キッド、と聞いてまず思い浮かべるのは変装ではないでしょうか?おそらく観客の誰もが、キッドの映っていないシーンでは、誰かがキッドの変装ではないのかと疑心暗鬼になりながら視聴したのではないでしょうか。この眩いばかりのキッド=変装というイメージが、あるひとつの事実を影に隠しています。
 さらに上記の固定観念と連動させて、映像を利用したトリックに昇華しているのが見事です。後半の美術館が爆発されるシーン、なぜか犯人と思われるある人物にアリバイが成立しているのです。これは視聴者にのみ発生する疑問で、視聴者が犯人と疑っていた(と思われる)当該人物がじつは視聴者にのみ差し出されたレッドヘリングであったのが実に巧妙です。
 このようなメタレベルの騙しという点では、真犯人の正体についても言えるでしょう。というのも、まさかスペシャルゲストである榮倉奈々さんが演じる人物が真犯人だなんて思いもよらなかったからです。声優として素人の彼女にまさか長ゼリフを演じさせるとは思わないじゃないですか。

 基本的に怪盗キッドのプロモーション映像なのですが、そうは言ってもミステリとして押さえるべきところは押さえており、しっかり観客を騙してくるのに好感が持てます。しかも推理小説を読んでいては味わえない、映像作品・アニメ作品で効果を発揮するトリックのため満足度は高いです。
 名探偵コナンファンはきっと満足できる作品でしょう。間違いなく過去18作品と比較して真ん中より上です。
 キッドの怪盗劇は1回だけではありません。何度も「ひまわり」を奪いに来ます。そのたびに描かれるキッドのアクロバット!映画館の大画面で観ることをオススメします。

 あとポルノグラフィティによるテーマソング「オー!リバル」最高。やっぱりボルノ良いわ。







映画「劇場版 名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」  

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名探偵コナン 異次元の狙撃手
http://www.conan-movie.jp/index.html


★★★★☆



 【内容紹介】

 高さ635メートルを誇るベルツリータワーのオープニングセレモニーに出席し、東京を見渡せる展望台からの景色に胸を躍らせるコナンたち。そんな中、一発の弾丸が強固なガラス窓を貫通し男性の胸を撃ち抜く。騒然とする状況下で、コナンと女子高生探偵・世良真純はFBIを巻き込む形でスナイパーを追い掛けるものの、すんでのところで逃げられてしまう。警察、FBI、コナン、世良が調べを進めていく過程で、海軍特殊部隊ネイビーシールズと事件の関連が浮上。さらに謎めいた大学院生・沖矢昴の暗躍も……。




 GW恒例のアニメ映画の名探偵コナンをさっそく観てきました。
 今作では黒の組織を追うFBIのお馴染みの捜査官が大勢登場するうえに、世良真純沖矢昴といった比較的最近登場したメンバーも登場する作品になっていました。コミックやアニメを最近見ていないわたしは、世良や沖矢といったキャラクターはこの劇場版で初めて目にしました。映画の中の解説を聞くと、いずれも赤井秀一と関係の深そうな人物で、コナン最終回へ向けての重要人物でありそうでした。

 アニメや漫画を見ていないわたしには、原作でどこまで情報(秘密)が開示されているのかよく分からないのですが、本作最大の見どころはおそらくラストワンカットにおけるある人物の一言だと思われます。原作で語られるコナンの大きな物語とも関わりの深い劇場作品になっています。

 コナンの原作ファンは歓喜する内容であるのは間違いなさそうですが、わたしのように漫画を読んでいない視聴者も十分楽しめる内容でした。作品単体の出来も悪くありません。
 連続狙撃事件の絵の移り変わりが楽しいミステリです。犯人候補となる人物やその犯行動機、次のターゲット候補、次の狙撃地点、などなどが推理を重ねていくうちに二転三転していき、事件の様相がどんどん違った見え方をするのがミステリとして練られていると思います。割と会話のみで推理が転がっていくので視聴者が若干置いてぼりな感はありましたが、都会的なロケーションとそれを利用した視覚的な演出・ネタなどは映像的に功を相しており、映像ミステリとしては良作と言えると思います。
 アガサ博士の欠陥アイテムや改良の加えられたボール射出ベルト、さらに赤井秀一がジョディ・スターリングに語った狙撃手の心得など、細々としたエピソードがクライマックスにおいて伏線として浮かび上がってくる点は盛り上がります。そして映像的な演出においてもこのクライマックスは盛り上がりを見せます。
 過去の劇場版で『漆黒の追跡者(チェイサー)』という作品がありましたが、タワーの展望台で犯人と対決する点では似ていますが、本作『異次元の狙撃手』は演出の点でそれを上回っています。超ロングレンジからの狙撃を行なう沖矢昴がカッコいいし、そのスポッターとしてタワーの外で立ち回るコナンのアイデアも良く、一方のタワー内の少年探偵団と毛利蘭が犯人と直接対決する展開は手に汗を握ります。コナンがあることをして沖矢昴による狙撃を可能にするのですが、それがまた本作を象徴するような綺麗な絵になっていて良いです。

 今作は映像作品としてもミステリとしても割と高レベルでまとまっている作品ではないでしょうか。
 狙撃手から狙われないように都民が晴れの日でも傘を差すシーンであるとか、序盤のパトカーや車がおもちゃのようにバンバン爆発していく展開など、なんだかいつも以上にアニメ的な展開が目立ちました。アニメであることを割り切って結構自由にやっている印象です。こういうのも悪くないです。




映画「名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)」  


映画『名探偵コナン 絶海の探偵』
http://www.conan-movie.jp/index.html


★★★☆☆



 【内容紹介】

海上自衛隊によるイージス艦の体験航海を楽しむため、京都の舞鶴港沖にやってきたコナンたち少年探偵団一同。しかし突然、けたたましい音が鳴り響き、左腕を失った自衛隊員の遺体が見つかる。捜査に乗り出したコナンは、イージス艦にある国のスパイ“X”が紛れ込んでいることを突き止めるも、スパイの魔の手はコナンたちにも忍び寄っていた。





予告



 ゴールデンウィーク恒例のアニメ映画、『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』を観て来ました。
 大阪の梅田の映画館では舞台挨拶もあったようですが、自分は都合が付かず別の回を観ました。
 今回は淀屋橋やなんば駅など、犯人の逃走ルートが大阪のあちこちとかかわっているため、大阪の映画館で大阪が舞台の映画を観る、というオツな観かたが出来ました。

 今作はTVドラマが人気を博している『相棒』シリーズの櫻井武晴氏が脚本を担当したことで話題です。
 アニメならではの、いわゆる“ありえない展開”を混ぜながらも大人でも観るに耐える骨太のストーリーがなかなか良かったです。
 イージス艦の内部情報を極秘裏に流出させる犯人――いや、スパイXを見つけ出すのが本作の主眼。
 イージス艦の情報流出がもたらす国家レベルの影響を考えると、一人の探偵が扱うのにはシリーズでも指折りのスケールを抱える作品です。しかし、本映画のメインターゲットであろうと思われる子供客たちにどれだけ伝わるのかはよく分からないところ。「日本のために自衛隊、警察、海上保安庁がひとつになりましょう!」という展開よりも、爆発があって、黒の組織との銃撃戦があって…といった展開の方が、子供たちにとっては分かりやすい盛り上がりで良かったのではないか、とは思います。反面、そういった展開はマンネリだと思いなおし、さらに劇中で描かれる“最強の盾”イージス艦の戦闘訓練の様子は事実に即した内容だと思われるので、そういったリアルに片足を突っ込んだフィクションとしては面白く観れるのではないかと思います。序盤ではエヴァンゲリオンなど、アニメ作品でよく観られる戦闘配備の緊迫感が伝わってくる内容で、実際の海上自衛艦がああいったことを行なって日本を護っていると思うと、言葉は悪いですか心躍ります。

 ミステリとしての出来を見ると、シリーズでも良いほうに入るのではないでしょうか。
 自分は『相棒』シリーズをほとんど観たことが無いので、この脚本家のやり方というのがよく分からないのですが、多層構造のクライマックスを得意とするのでしょうか。ともかく本作ではそれが如実にあらわれており、終盤にかけて物語は一気に盛り上がりを見せます。
 この“盛り上がり”というのが、本格ミステリとしての盛り上がりであるというのが一番の評価ポイントでしょう。
 なにより冒頭のワンシーンに巨大な伏線が張られていることには驚きました、それも映像作品ならではの。ほかにも重要と思われる手がかりを空転させ、逆にギャグと思われるようなエピソードを終盤に至って伏線として浮上させる展開などは本格ミステリの面白さ意外にありません。
 さらに探偵による手がかりの処理の仕方から、事件における探偵の存在意義などといったミステリの構造にまで目を向けることも可能で、とにかく本格ミステリファンの間では観賞後に話が弾みそうな映画です。

 中盤の中だるみが激しいので良作認定は出来ないものの、ミステリとしてはまずまず、といったところ。
 総評としてシリーズ全体では真ん中あたりでしょうか。
 スタッフロール後のコナンのセリフ「江戸川コナン、ただの○○○○○さ!」というセリフもスパイミステリーなだけに気が効いて好きです。

 やはりスパイ作品とは別の部分――いわゆる「らーん!」「しんいちー!」の盛り上がりで幕を閉じてしまうのは『名探偵コナン』の宿命なのでしょうか。
 国家間の事件に発展しそうなふうを匂わせている割にこぢんまりまとまっている印象。本格ミステリの良いところ(ミスリード、伏線、ドンデン返し)も悪いところ(中だるみ、器の割に地味な展開)も出てしまったような作品。古野まほろ氏の『天帝のみぎわなる鳳翔』までとは言いませんが、振り切れてほしかった。


 ちなみに来年のコナン映画は東京スカイツリー(?)が絡む作品みたいです。ちょこっと予告映像が流れました。

映画「名探偵コナン 11人目のストライカー」 



名探偵コナン 11人目のストライカー
http://www.conan-movie.jp/index.html


★★★★☆

 毛利小五郎の探偵事務所に脅迫電話が舞い込み、小五郎の前で路上の自動車が爆発。そのころスタジアムでサッカー観戦中だったコナンは、犯人が突きつけた暗号を解読しなければ次の爆破が実行されると聞かされる。暗号解読に挑むコナンだったが、恐るべき真実に突き当たり……。

 2012年4月14日公開 上映時間:1時間50分


 毎年恒例のゴールデンウィーク映画の劇場版名探偵コナン。今回も映画館で観ました。『名探偵コナン 11人目のストライカー』です。

 今作は予告映像から爆破爆破の連続で、結果的に建物などが爆発してしまった、という消極的な爆破事件では無く、犯人が爆破予告をしサッカースタジアムを爆破していくという積極的な爆破事件が描かれます。
 爆破事件を中心に据えているだけあり、映像的、扇情的な力の入れようがすさまじく、中盤の前座であるはずのスタジアム爆破事件なんか、もうそれだけでクライマックスになっても差し支えないような盛り上がり方をします。スピーディーな暗号解読とそこからの爆弾の特定、コナンが7つ道具を使って被害を最小限に食い止める展開はテンポが良く息を呑みます。
 スタジアムの外(毛利&警察視点)とスタジアムの中(コナン&少年探偵団視点)の両方の情報を手に入れることのできる視聴者にとっては暗号の解読はきわめて容易で、のちの展開で起こりうることを早い段階で予想させます。しかしこれは作品にとってマイナス要因にはなっておらず、序盤から描かれる大勢の観衆、そして暗号解読結果を視聴者自身が事前に脳内で照らし合わせることで、視聴者の感情を煽ることに繋がっているのです。
 全体的に演出に興奮する場面が多く、クラブチーム全体を巻き込んだ爆弾解除の方法なんかスケールが大きくて良かったし、何より終盤おいてある人物が“11人目のストライカー”の資格を得る場面があるのですが、この演出もすごくカッコよかったです。「黒の組織」を絡めた犯人対峙のクライマックスなんかも良いんですが、本作の場合、この映画内で始まって犯人と対決し、それならではの演出がされているのでまとまりは良かったです。

 ミステリー的な側面に目を向けると、アリバイトリックを繰り出す必然性…というより不確実さ(犯人自身では操作しにくい要因が何点か絡んでる)が目につきましたが、そういうのは抜きにしてトリック自体にはいかにも「探偵小説」って感じで結構好きです。若干昭和の探偵小説の香りがしました。
 それよりも個人的に感心したのがミスリードです。コナンが「犯人は文章によってミスリードしようとしている」といった推理をしたあと、警察が犯人として追っていくのが新聞社に勤める人間です。記事を書くことを生業としている人物です。文章(犯行予告文書)によるミスリードと犯人の職業をさりげなくリンクさせているのが巧みで、作中ではハッキリと言ってはいないものの視聴者は成り行き上この間違った人物を犯人と考えてしまう可能性が高いのです。

 青空の下、グリーンのフィールド、そしてJリーグ全面協力というだけあってかスポーツ色も強く、爆破事件が起こっていると言っても、言葉は悪いですが何か明るい雰囲気が漂っています。いかにもホリデーな映画といった感じです。
 今作は「黒の組織」は登場しません。
 さらにテーマソングも「B'z」ではありません。
 しかしそれが本作の場合プラスになっています。テーマソングなども「いきものがかり」の若くてフレッシュなイメージが作品の持つ雰囲気と合致しています。

 声優初挑戦のJリーガーの体当たりの演技なんか、棒過ぎて聞いちゃいられないレベルなんだけど、そういうのも逆に盛り上がるし(もう上手くないことはわかってるんだから、誰も責めやしない)、娯楽作品として観て楽しめる要素は多かったと思います。
 去年の『沈黙の15分(クォーター)』が悪すぎて本作が相対的に良く見えてるのかもしれませんが、それにしても劇場版シリーズの中では「中の上」あるいは「上の下」くらいは行くでしょう。今年のはおすすめ。


 ちなみに来年は“海洋ミステリー”になりそうです。客船が予告映像に映っていました。




映画「劇場版 名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)」  



 映画『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』

★★☆☆☆


 劇場版名探偵コナンの15周年記念作品。
 キャッチコピーは「ラスト15分、予測不能!」。
 ちなみにタイトルにある「15分」というのは、人が雪崩などの雪に生き埋めにされたとき、生死を分かつ限界の時間が15分とのこと。

 原作者の青山自身が「アクションに次ぐアクション」「たぶん今までの中で一番動いてる」というだけあって、開始早々いきなり大盛り上がりです。冒頭からタイトルが出てくるまでの数分間のうちに、大爆発があったり、コナンがスケボーに乗ってビュンビュン犯人に迫ったり、もう序盤からクライマックス!このつかみは間違いなくシリーズ一番。最強です。
 しかしその「冒頭クライマックス」の後は、ダム問題を背景にした平凡な事件が描かれていき、なんだか2時間ドラマっぽい展開が続きます。ラスト15分までほぼ大アクションが無いに等しく、クライマックスの蘭と新一(コナン)による「らーーん!」「しんいちーー!」というやりとりも取ってつけたようです。結局最後の最後までアクションはおあずけ、というのは『漆黒の追跡者(チェイサー)』のようでした。あれもたしか「バトルミステリー」というのが売りだったはず。

 ミステリとしての内容は、宝石店の強盗事件、交通事故(ひき逃げ)、ダム建設、雪崩によって記憶を失った少年、などなど大小様々な事件がひとつに収束していきます。この本筋自体はきわめて単純なもので、話を整理していけば謎でもなんでもありません。犯人は視聴者の目の前に簡単に姿を現すでしょう。それよりも、その本筋に付随する形で描かれている、ダイヤモンドダストに怯える冬馬少年や、暗いところが苦手と言うみずきさん、美人女性はメガネよりもコンタクトレンズに限るという毛利小五郎の好み、などといった細かいエピソードが本筋を導くための伏線や手がかりとして機能しているのは驚かされるところです。序盤の列車爆発事件では、犯人の予告状がカモフラージュであると、コナンがたちどころに見抜いてしまい、推理の飛躍が目に付いたものの、ひとつの真相を導くために、大なり小なり何らかの手がかりや伏線を配置しているのは好感が持てます。ミステリとしての見どころはこっちにあるのではないでしょうか。
 ただし、本作の要であるところのダムを爆破させる動機にはさすがに首を傾げたくなります。ダムを爆破して得られる対価が少なすぎるのです。あっさり○○はあきらめなよ、と突っ込みたくなります。しかし映画だから爆破はあった方が良い訳で、ミステリとして話が多少ヘンテコになっても映画作品として完成させる上ではこの選択はしかたがなかったのかもしれません。脚本担当のジレンマが垣間見えます。

 あと見どころといえば…雪上にて足跡の無い密室…つまるところ不可能犯罪が1件出てきます。これが結構突然でビックリしました。少し色めきたったけれど、まあトリックはその場でコナンに見抜かれてしまうほどのチープなもの。ただこのトリックを推理するシーンがいささか珍妙で、死体を目の前にしてトリックが分かっただの分からないだの言い合ううえに、毛利小五郎なんかスッテンコロリンのコントをしだす始末。死体の前でのこの光景にはいささか違和感を感じました。

 前作の『天空の難破船(ロストシップ)』が良かっただけに残念ですね。15周年といいつつここ数年の劇場版では最悪の出来。全劇場版作品の中では確実に真ん中より下。ミステリとして何らかの趣向や、飛び越えようとしたハードル、やろうとしたことなどにビビッとくれば、また違ったんでしょうが、正直何も来なかった。

 ちなみにラストシーンで泣いている人がいました。
 東北にコナンがいれば津波をなんとかしてくれたかも…そんなことをふと思った。


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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
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・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
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・三千院 聖観音
・実光院
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・宝厳院
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・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
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・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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2016年の水樹奈々さん
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