読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

阿津川辰海「名探偵は嘘をつかない」 

名探偵は嘘をつかない名探偵は嘘をつかない
2017/6/16
阿津川 辰海

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★★★★★



 【内容紹介】

 名探偵・阿久津透。その性格、傲岸不遜にして冷酷非情。妥協を許さず、徹底的に犯人を追い詰める。しかし、重大な疑惑が持ちあがった。それは、彼が証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したというものだった―Kappa‐Two応募当時、弱冠20歳。新しい才能は、本格ミステリにどう挑んだのか。ミステリファン必読のデビュー作!




 石持浅海氏、東川篤哉氏らを輩出したカッパ・ワンが再始動です。これからは名前も新たに「カッパ・ツー」と言うらしいです。その再始動の狼煙を上げるのが本書のようです。
 満を持して、という言葉がまさにふさわしく、たいへんな大型新人の登場です。作者は東京大学の推理小説研究会「新月お茶の会」に今も在学中のサラブレッドです。

 目次を見ると、山口雅也氏の『生ける屍の死』、島田荘司氏の『斜め屋敷の犯罪』、クイーンの『災厄の町』、アントニイ・バークリーの『トライアル&エラー』など本格ミステリの影響を強く受けたと想像できるタイトルがズラッと並びます。基本はリーガルミステリーの体裁をとってはいるものの、一筋縄では行きません。前半には多段構えの密室殺人トリックを早々に披露して、本格ファンの度肝を抜いてきます。最終的な真相でもおかしくないレベルのトリック・犯行計画を、あっさりと最終真相の為の踏み台としているのです。この思い切りの良さ、出し惜しみの無さが新人らしくもあり、また新人離れしています。
 一筋縄ではいかない、という理由に、いわゆるSF要素が絡んでいる点も挙げられます。死者の魂が甦るのです。本書の場合は、まさしく被害者その人が蘇ってしまう為、物語前半に、その被害者の証言が得られてしまうのです。殺人後の犯人の犯行工作の一部始終が、その死者の証言によって明るみになってしまうのです。
 このように物語の前半部分で、すでに密室トリック、そして犯行計画の一部始終が読者の目の前に晒されるのですが、それでもなお本格ミステリとしての魅力が褪せないプロットが考え抜かれています。ここまで手掛かりを開陳しても、それでもなお敢然として謎が残るのです、フーダニット、ホワイダニット、ハウダニット、本格ミステリを支える3つの柱その全てが。
 すべての謎解きは法廷で行われます。そのため証拠による理詰めの推理で被告人を追い詰めていく過程が、本格ミステリとして好相性です。空振りと思われた証言、どこへ向かうのか分からない証言、数々の証言が登場しますが、見方を変え、組み合わせ方を変えると、実は隠されていた最終的な真相を指し示すのが、意外性が演出されていて良いです。従来の本格ミステリのように、例えば密室内で人が死にました。密室トリックと犯人は誰でしょう?といったような「謎」→「論理的解決」という単純線では説明できないような、良い意味で複雑さがあると思うし、謎の提示の仕方、謎の解かれていく過程(カードをオープンしていくタイミングと手際の良さ)、など工夫されていると思います。最も重要な謎を最後まで伏せ、それ以外の謎を早々に削ぎ落とすことで、本作のテーマが強調され、それによってクライマックスの感動も劇的なものになっています。こういう作品を読むと、本格ミステリの高度化、レベルアップを感じます。

 殺人事件を通して名探偵・阿久津透その人を探っていく物語でもあります。本格とはこうあるべきだ、というのではなく、名探偵とはこうあるべきだ、といったような名探偵の資質を題材にしている点は最近の傾向でしょうか。長い長い事件が幕を閉じた時、名探偵の全能感、カリスマ性、その圧倒的資質に、全登場人物、そして全ての読者は名探偵の前にひれ伏すことになるでしょう。本格ミステリの中心に立つのはトリックでも謎でも犯人でもその何ものでもなく、名探偵であることを示したような作品です。

 素晴らしい作品でした。間違いなく本格ミステリの次世代を担う大型新人の登場です。デビューおめでとうございます。
 デビュー作でこれほどのものを書いてしまうと次作が逆に心配になってくるのですが、応援しますぞ。
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[ 2017/06/24 02:48 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

若竹七海「ぼくのミステリな日常」 

ぼくのミステリな日常ぼくのミステリな日常
1996/12/1
若竹 七海

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★★★★☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 月刊社内報の編集長に抜擢され、若竹七海の不完全燃焼ぎみなOL生活はどこへやら。慣れぬカメラ片手に創刊準備も怠りなく。そこへ「小説を載せろ」とのお達し。プロを頼む予算とてなく社内調達ままならず、大学時代の先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。かくして掲載された十二の物語が謎を呼ぶ、贅を凝らしたデビュー作。




 新本格再読フェアの一冊。目線を変えて若竹七海さんのデビューにしてみました。
 月イチの社内報に掲載される短編小説が一年分、計十二編に、額縁を加えてひとつの大きな作品――謂わば総タイトル『ぼくのミステリな日常』と成した傑作連作短編集です。
 短めの短編ですが、個々のクオリティが高いのが特徴。しっかりとした謎があり、謎解きがあり、そしてサプライズがあります。十二編立て続けに読ませる割には、叙述トリックに、幻想ふうオチ、犯行計画の緻密さに舌を巻くもの、などバラエティに富んでいるため、各話を追うごとに新鮮な驚きが待っています。
 意外な伏線の張り方も本書の大きなアイデアで、遊び心も効いていて、26年ほど前の作品ですが、こういうのはなかなかお目にかかった経験がありません。外枠の部分でいろいろやるのは、同じ新本格では二階堂黎人さんが某長編でやっていましたが、「社内報」と同一レベルにいる額縁と、そのさらに上位にいる額縁の、二重のレベルで存在する額縁を自由に行き来して真犯人をあぶり出す点、本書のほうがよりアクロバティックです。
 「日常」というタイトルから「日常の謎」を想起してしまいますが、ふつうに殺人事件は起きるし、幻想味の強い物語はあるし、そして何より積極的にトリックによって読者を騙しにかかる点で、趣を異にします。

 新本格ミステリというと、英米黄金期の復興という意味合いがどうしても強くて、今読むと「現代の古典」という新鮮さを欠いた評価になりがちなのですが、本格コードに依存していない本書の場合は今読んでも新鮮な驚きがあります。新本格以降によく見られるようになった、所謂「連鎖式」の作品としても、いまでも高く評価できるでしょう。たとえば最近の2014年に刊行された歌野晶午氏の『ずっとあなたが好きでした』と比較してみても、経年劣化をしていない本書のクオリティの高さが分かるはずです。
 ネタ量が多くサービス精神旺盛。十二話すべてが一気に収束し、意外なやり方で意外なところから姿を現す真犯人には興奮します。未読の方、そして既読の方でも久しぶりに読み返してみるのもおすすめですよ。
[ 2017/06/16 02:52 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

周木律「幻屍症 インビジブル」 

幻屍症 インビジブル幻屍症 インビジブル
2017/6/6
周木 律

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 絶海の孤島に建つ孤児院「四水園」で発生した、園生の不可解な転落死。他者の優れた部分が歪んで見える「幻視症」のユタカは、その事件をきっかけとして園内に伝わる「四忌」の噂を追い始めた。解けば願いが叶い、真実に辿り着けない者は死ぬという四つの謎…。相棒のミツルと共に解き明かすほどに、恐るべき悲劇が発生し!?この島を覆う闇の正体とは―?




 ◯◯症シリーズの第二弾。文庫書き下ろし長編です。なんだか売れているみたいですね。文庫発なのでとっつきやすいです。終盤で「あの方」の存在にちらっと触れられるくらいで、前作とは直接の関係はありません。本作から読んでも問題ないです。
 今回は孤島もので、主人公は“他者の優れた部分が歪んで見える”という「幻視症」の持ち主です。
 孤島は孤児院「四水園」で占められており、序盤からしばらくは完全に学園モノのテイストで物語が進みます。孤児院に伝わる「四忌」(学校の七不思議的なもの)の真相を探っていくうちに、園生の死亡者が次々と登場し、徐々に主人公たちの関心事は島の外、そして自分たちの今後、置かれた境遇、などへとシフトしていきます。
 フェンスで囲まれた孤島や、主人公の「幻視症」という特殊能力など、一見すると荒唐無稽にも見えますが、最終的に我々読者と地続きの世界へと接続されていくのが巧みです。前作においても、割とフィクショナルな物語の中にも、時折社会情勢を描いたシーンが登場しましたが、本作でもそれは引き継がれています。そうした社会性とフィクションの両輪が上手く噛み合ったラストで、前作よりも個人的には好みです。主人公の「幻視症」の真実についてもサプライズが効いていて、なるほどな、と結構驚けました。
 ただし、本書の場合、学生などのティーンエイジャーの読者も多いと思うのですが、結末部分の描かれ方が、一部職業にたいして、若者に誤解を招く恐れがあるのではないかと感じました。気にしすぎでしょうか?作品全体的に平易な文章で描かれていることもあり、あまり深いことは考えずにサクッと読み終わるのが吉かも。
 現代日本を皮肉まじりに描いた、敢えて社会派ミステリとしても楽しむことが可能な面白い作品です。

[ 2017/06/11 01:35 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

吉田恭教「鬼を纏う魔女」 

鬼を纏う魔女鬼を纏う魔女
2017/6/1
吉田恭教

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★★★★☆



 【内容紹介】

 この女は何者か? なにゆえ冥界から解き放たれたのか?
 冥界の異変。死神に魅入られし人々。そして彼らを嗤う鬼――。
 捜一七係の鉄火面・東條有紀が不可思議な事件を追う。
 渋谷区宮益坂で発生した通り魔事件に巻き込まれた被害者は四人、うち三人は死亡し、ただ一人生き残ったのは、乳房に般若の刺青を刻んだ若く美しい女性だった。
 しかし、意識不明となって生死の境を彷徨う彼女は身元に繋がるような物を所持しておらず、警視庁捜査一課の東條有紀は、被害者の刺青から身元の特定を試みる。
 そして彫師の情報を得て被害者の戸籍に辿り着いたものの、そこには不可思議な記載があった。




 東條有紀シリーズの最新作。コンスタントに新刊が出る一方で、安定したクオリティを保っています。
 本作は捜査活動の一環として、宗教施設への潜入捜査や、真夜中の青木ケ原樹海探索などが描かれていて、冒険要素多めです。まさに鬼が出るか蛇が出るかの展開にワクワクします。いずれも探索の果てに意外な真相が待ち受けているのも気が利いており、良い意味で読者を裏切ってくれ、良い意味で期待に応えてくれる展開です。
 人間関係は前作ほどにはパズル的に複雑化されてないものの、関係者の証言によって事件の全体像が徐々に姿を表していく展開は本作にも健在です。一方で、関係者の年齢の問題など、証言によって否定されるべき首実検が、証言によって謎として確定してしまったりなどし、読者は翻弄されることでしょう。また、白と思われていた人物が次々と黒に反転していく終盤の展開も圧巻です。
 ただ、一部で真相がぼやかされている部分があったり、宗教施設の地下で発見されたあるものについては全く謎のまま残ったりしています。論理の及ばぬこれらの「余地」については、むしろ本作の魅力の一端でもあり、物語に不気味さを添えています。シリーズ過去作を読んでも思いましたが、論理で解決する謎と、敢えて謎のまま残す――というより超常的なファクターを読者に示唆したうえで解決されない謎―この二つのバランス、間合いが絶妙なのが東條有紀シリーズの素晴らしいところです。東條有紀シリーズの次回作は早くも来月7月に講談社から出るそうです。楽しみです。
[ 2017/06/05 01:02 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

甲賀三郎「蟇屋敷の殺人」 

蟇屋敷の殺人蟇屋敷の殺人
2017/5/8
甲賀 三郎

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★★★★☆



 【内容紹介】

 東京・丸の内の路上に停車中の自動車内に、謎の首切断死体が発見された―。広大な屋敷に蠢くがま蛙、久恋の女秘書、怪奇な幽霊、いわくの美女、蟇屋敷主人…。探偵作家と刑事は横浜、鎌倉、埼玉奥地、大阪へと犯人を追う。大胆なトリック、秀逸なプロット、気宇壮大なスケール。スリリングに展開する甲賀三郎の最高傑作、初の文庫化!KAWADEノスタルジック探偵・怪奇・幻想シリーズ。




 第一の波、戦前の本格探偵小説の雄・甲賀三郎の長編。本の裏を見ると「最高傑作」という文言も書かれてあります。初文庫化です。
 初めて聞くタイトルで、もちろん初めて読んだのですが、大変おもしろかったです。まさに探偵小説の歴史に埋もれた傑作と言っても良くて、東京・丸の内の車中で発見された首切り死体に端を発した物語は、東京・大阪間を行き来するスケールの大きな物語へと発展していきます。そして何より本書を印象づけるのは「蟇屋敷」の存在でしょう。庭には足の踏み場もないくらいのガマガエルが跋扈し、応接室には巨大なガマの置物が鎮座して、来客そして我々読者を歓迎してくれます。夜な夜な屋敷の庭で目撃されるのっぺらぼうの化物に、事件の一切を黙秘する怪しい屋敷の主人、登場人物も一筋縄では行きません。

 そして何より注目すべきなのが「本格」としての完成度です。

 「探偵小説とは、まづ犯罪(主として殺人)が起こり、その犯人を捜査する人物(必ずしも職業探偵に限らない)が、主人公として活躍する小説である」

 当時、甲賀三郎が提唱した、この「本格」の理念がまさにかたちとなった作品です。次々と段階的に暴かれる真実が面白く、さらにさらに、とにかくページを捲るたびにいろんな事件が起こるのです。これらはいずれも探偵の活躍によるもので、時には犯人を追い詰め、時には追い詰められ、と当時の探偵小説のいかにも「古典」!といった面白さが詰まっています。
 最終的に全ての怪奇と謎が論理的に説明付けられるのは、本格の骨格そのものです。すでに昭和初期にこのレベルにまで達していたのかと驚くばかりです。そして何よりプロットが秀逸のため、何度読んでも楽しめそうです。

 甲賀三郎を語る際には、所謂「本格・変格」論争が挙げられると思われます。変格派の筆頭として江戸川乱歩あたりの名前が上がると思うのですが、本書に描かれているような、地下の怪人や、その怪人の結ばれ得ぬ恋などに江戸川乱歩のテイストが見られるのが面白いところです。しかしそれを犯人の異常心理とするのではなく、その犯行動機を、謎を解く側の探偵役に一定の理解を示させることでこちら側(健全側)へ押し留めている点は作者らしいところかもしれません。
 そして時を越えて、本書のあるトリックには、帯の推薦者である三津田信三氏の某長編を想起させるものが使われているのも興味深いですね。

 現代の本格ミステリファンが読めば面白い発見のある作品だと思います。なかなか今では読めない古典の面白さもあります。甲賀三郎の代表作としてこの作品が挙がっているのは見たことがありません。再評価すべきだと思います。おすすめです。

[ 2017/05/28 20:57 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

須田狗一「神の手廻しオルガン」 

神の手廻しオルガン神の手廻しオルガン
2017/5/17
須田 狗一

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★★★★★



 【内容紹介】

 ポーランド人強制収容所囚人の日記に隠された意外な真実とは!日本とポーランドで起きた二つの殺人事件。72年前のナチスの闇が、今、甦る。正義の在り方と家族愛を問う、社会派ミステリー!




 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作です。
 江戸川乱歩賞、横溝正史賞のいずれも受賞作の無かった年に、福ミスに本作のような力作が応募されたことは大変に嬉しいことです。島田荘司御大の言うように、優秀な本格ミステリが福ミスにも集まっていることの証左では無いでしょうか。
 前回受賞作『アムステルダムの詭計』に引き続いて、今回も社会派色の強いミステリです。72年前のポーランド人強制収容所で発生した事件と、現代の猟奇的殺人件の2つが、時間と、そして国境を越えて結びつく、大変にスケールの大きな作品です。
 ナチスによるポーランド侵攻という、我々日本人にとっては馴染みの薄い事件が中心に描かれているのですが、物語の根幹にあるのは、人と人との愛情であったり、人が持つ欲望であったりします。過去と現在の事件を通してそれらがクローズアップされていくため、犯人側、そして探偵側いずれにも感情移入しやすく、同じヒトとして物語に没入できることでしょう。
 ミステリのトリックと物語のテーマが渾然一体となっている点に驚くばかりです。ポーランド人強制収容所の囚人が書いた日記が作中作として挿入されます。このような伝聞ではなくリアルタイムな目線で当時の収容所の様子が描かれるのは、もはやこの点で新人離れしていて、作者の知見の高さをうかがわせます。島田荘司御大の傑作『アトポス』をも想起させる構成ですが、決して幻想方向には振り切れていません。この作中作で生じる違和感から、ある事実を見抜き、そこからさらに医学的知識を導入することである人物に到達する一連のロジックの流れが大変に美しいです。そしてこのミステリとしての詐術そのものが、犯人による犯行動機と密接にリンクするのがじつに巧妙です。「神の手廻しオルガン」が動機を生み、トリックを生み、ミステリとして完成するのですが、本作の場合はそれだけではないのです。
 この72年前の過去の事件におけるある人物の失敗が、反省として現在の事件において活かされるのです。ある女性が「神の手廻しオルガン」によって間違いを犯そうとするその瞬間、探偵役の「あなたはあなたの人生を生きるべきです。あなたの罪だけをつぐなうべきです。」という台詞にたいへん心を打たれました。時を超え国境を越えて描かれた事件でも、我々読者に訴えかけてくるものは大きいです。

 昨年の福山ばら祭のステージ上で島田荘司御大は、日本の推理小説の歴史は、本格派か社会派かの、そのいずれか一方に振り子が振り切れていた、それの繰り返しである(第一・ニの波→清張の呪縛→第三の波)とおっしゃっていましたが、本作『神の手廻しオルガン』は本格ミステリと社会派推理小説の二重の光輪を纏った、新たな時代――ポスト新本格の時代にふさわしい本格ミステリと言えるでしょう。パズルのように人物が動き、手掛かりのピースが当てはまり、謎が解かれるタイプのミステリでは味わえない感動があります。傑作です。強くおすすめします。
[ 2017/05/24 02:53 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

宮西真冬「誰かが見ている」 

誰かが見ている誰かが見ている
2017/4/13
宮西 真冬

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 夫婦にも親子にも恋人にも「裏」がある。女性4人が繰り広げる極限のサスペンス!千夏子…ブログに虚偽の「幸せな育児生活」を書くことが止められない主婦。結子…年下の夫とのセックスレスに悩む、アパレル店の店長。春花…ストレスで過食に走り、恋人との結婚だけに救いを求める保育士。柚季…優しい夫と娘に恵まれ、円満な家庭を築いているように見える主婦。それぞれの思惑が意外な形でリンクする時、絶望と希望の天秤が激しく揺れる。




 2年ぶりくらいのメフィスト賞受賞作です。
 メインとなる登場人物は女性4人で、それぞれ子供や夫に対して悩みを抱えています。似たような悩みを抱える女性たち視点人物が次々と入れ替わりながら物語が展開していきますが、不思議と混乱無く描かれている点が新人離れしています。
 作者は女性で、独身か既婚者かは分かりませんが、女性らしい視点、女性だから気付ける点が随所に盛り込まれているのも特徴です。男のわたしが読んでも、気づかなかったけど言われてみれば確かにそうだな、と結構ズキっとくる場面があります。たとえば「家事を手伝うよ」という妻への一言が、実は「手伝う」という言葉がもう自分の仕事ではないという思いの表れである、という感覚など。こういった女性ならではの視点が、4人の女性の関係を、ボタンを掛け違えたかのごとく、徐々にねじれさせていくのが本書の大きな魅力です。
 ブログなどのインターネットが幅を利かせているのも今ふうで、SNSをやっていたら感じる「自己満足」「見栄の張り合い」「相手の上に立ちたい」「いいね!をいっぱいもらいたい」とかいう心理が隠し立て無く描かれるもの良く、登場人物は女性ばかりですが、ツイッターやブログをやっている男のわたしでも、結構感情移入できてしまいます。
 そういえば、「妊娠菌の付いた妊娠米」や「陣痛の時に妊婦が描いた富士山とコウノトリの絵」がオークションサイトで取引されている出来事が最近ニュースになりましたね。出品者は不妊に悩む女性のために~という理由で出品していますが、本書を読むとそうとばかりは思えなくなってしまいます。それが良いとか悪いとかは別にして、感情を持つ人である以上、もはや仕方が無い点もあるのではないか、納得出来る部分もあり、そのニュースへの見方も変わってきます。

 後半にさしかかったところで、ひとつミステリ的なサプライズがありますが、その仕掛け一点で支えられている作品ではありません。サスペンスやミステリと言うより、どちらかと言うと文芸寄りの作品ではないかと思います。
 人が持つ裏の顔を結構えぐってくる作品ですが、気取ったところがなく、一周回ってある種の気持ちよさがあります。不快な感じにはなりませんでしたね。キレイ事ばかり並べ立ててお涙頂戴と言った小説よりずっと読み心地が良いです。おすすめです。
[ 2017/05/11 20:00 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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