読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

北里紗月「さようなら、お母さん」 

さようなら、お母さんさようなら、お母さん
2017/4/13
北里 紗月

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★★★★★



 【内容紹介】

 島田荘司選 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作!
 その女は「毒」だ。身体を蝕み、心を壊す。
 美しい義姉の周りで続発する死と災厄。兄を亡くした妹は、親友とともに、義姉の「本当の顔」に迫る。
 原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは? 玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が乗り出す!




 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の優秀作です。
 読後感は決して良いものでは無く、そういう意味ではイヤミスと言えるかもしれません。福ミスの法則発動です。
 リーダビリティはあって、新人の割に読めるのですが、なんというのでしょう、季節柄こういうことを思うのかもしれませんが、作品全体が面接対策をしまくった新卒学生のように思えてなりませんでした。先に書いたイヤミス要素、毒物に関する専門性、ポスト新本格を意識したゲーム性の排除、良くも悪くも福ミス対策を打って描かれた作品であるというのが第一印象です。
 奇病によって命を落とす男性が冒頭に登場するのはたいへんキャッチーで、さらに容疑者の生い立ちを求めて故郷の島へと渡る展開はスケールに膨らみがあってワクワクします。子供に対する母親の愛情が物語の核となるのは、本書を読む全ての人間に対して訴求力があります。ミステリとしては十二分に読めるのですが、では本格ミステリとしてはどうなのでしょう、という本格ファンが従来より福ミスに対して抱くものと同じ問題に直面してしまうことでしょう。
 ハウダニットについては、専門的も専門的で、そんなものが実在するのか、ググっても確証のないレベルの方法が採られています。しかし、毒物に関する蘊蓄や、血清のない毒蜘蛛に対する治療法が伏線となっているため、凶器をピンポイントで指摘できずとも、犯人がどのような方法を採ったかを推測することは可能で、このあたりの専門性を本格ミステリに落とし込む設計は上手いと思いました。
 ホワイダニットに力点が置かれているように見せかけて、じつはそれは帯やあらすじなど周辺からの情報より推測可能だったりします。そのため、ホワイダニット単体での評価よりも、ホワイダニットとハウダニットの相乗効果で本格ミステリとしての評価を高める作品だと思います。というのも、ネタバレを避けて言えば、凶器の裏表が、愛情の裏表と重ねられているからです。これはミステリだからこそ可能な小説の表現方法で、ミステリの文法によって物語の主題が描かれる点はポイントが高いところです。
 プロローグがミスリードとして機能していること、さらに展開を追うごとに犯人候補が入れ替わる展開を考えると、フーダニットの愉しみも疎かにされていません。
 全体としては福ミスらしい作品と言えると思います。

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[ 2017/04/21 02:23 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

早坂吝「双蛇密室」 

双蛇密室双蛇密室
2017/4/6
早坂 吝

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★★★★☆



 【内容紹介】

 「蛇の悪夢」に関わる「地と天」の密室。
 過去の扉を「援交探偵」が開く!

 前代未聞の大仕掛けでミステリランキングを席巻する「らいちシリーズ」新作!

 「援交探偵」上木らいちの「お客様」藍川刑事は「二匹の蛇」の夢を物心付いた時から見続けていた。
 一歳の頃、自宅で二匹の蛇に襲われたのが由来のようだと藍川が話したところ、らいちにそのエピソードの矛盾点を指摘される。
 両親が何かを隠している?
 意を決して実家に向かった藍川は、両親から蛇にまつわる二つの密室事件を告白された。
 それが「蛇の夢」へと繋がるのか。
 らいちも怯む(!?)驚天動地の真相とは?




 援交探偵・上木らいちシリーズの最新長編です。タイトルにばばーんと「密室」と銘打っているだけあって、密室事件2つが描かれる、割とシンプルな本格ミステリです。分量も少なめでサクッと読めます。
 しかし、その密室には前例の無い前代未聞の密室トリックと犯人が描かれているため、きっと本格ミステリファンの心を満たしてくれることでしょう。ワンアイデア炸裂のため、むしろ今作のようなコンパクトさとは好相性と言えるかもしれません。
 蛇をめぐるロジックは面白くて、さすが謎解きの筋の良さを見せつけてくれますが、本作の場合、むしろ「援交探偵」シリーズらしいプロセスを経て真相へと到達する方に魅力を感じました。密室トリックについても、シリーズのどの段階でのそのトリックを思いついたのだ、と考えてしまうくらい、密室トリックが本シリーズに馴染んでいるところも高ポイントです。他の作家が描くと、もっとホラー寄りになったり重いテーマになったりそうですが、それを上木らいちではサラッと明るく描けてしまうのも良いですね。
 話の展開として、後発の「天の密室」を先に読者の前に晒すことで「地の密室」のミスリードとして機能しているし、物語上「地の密室」「天の密室」が2つワンセットであることにも必然性を持たせていて、このあたりは抜かりなく創られています。
 ラスト一行が今後のシリーズの行方をますます楽しみにしてくれます。謎解きのプロセスと、そこから導かれる意外な真相、いずれもコンパクトな中にギュッと盛り込まれています。なによりも密室ミステリ史に名を残すレベルのトリックは必見です。
[ 2017/04/10 02:38 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

市川哲也「屋上の名探偵」 

屋上の名探偵屋上の名探偵
2017/1/21
市川 哲也

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 最愛の姉の水着が盗まれた事件に、怒りのあまり首を突っ込んだおれ。残された上履きから割り出した容疑者には完璧なアリバイがあった。困ったおれは、昼休みには屋上にいるという、名探偵の誉れ高い蜜柑花子を頼ることに。東京から来た黒縁眼鏡におさげ髪の転校生。無口な彼女が見事な推理で瞬く間に犯人の名を挙げる!鮎川賞作家が爽やかに描く連作ミステリ。文庫オリジナル。




 鮎川賞作家の文庫オリジナルです。短編が4つ収録されています。

 「みずぎロジック」
 「人体バニッシュ」
 「卒業間際のセンチメンタル」
 「ダイイングみたいなメッセージのパズル」


 「みずぎロジック」は「Webミステリーズ!」初出。それ以外の3編は書き下ろしです。
 「みずぎロジック」はフーダニット、「人体バニッシュ」は衆人環視の中での人間消失、「卒業間際のセンチメンタル」はアリバイ崩し、「ダイイングみたいなメッセージのパズル」はダイイングメッセージを題材にしたミステリで、学園ものにしては濃い謎が揃っています。また創元らしく、殺人事件を描いていない日常の謎としても捉えることができます。そんな殺人事件無しのミステリ作品の中で「ダイイングみたいなメッセージのパズル」は異色です。ロジックに関しても本作が収録作中いちばん力が入っている印象です。作中では自著『名探偵の証明』のアリバイ講義の引用なんかもあって、ダイイングメッセージに対する並々ならぬこだわりが感じられます。ただ、作中人物も指摘しているように、ダイイングメッセージの書き手が生きている状態でダイイングメッセージをあれこれ解釈し、犯人探しをする様は、やっぱりどうしても推理をゲームの域にまで貶めているように思えてなりません。「犯人への牽制」と作中では説明され、それが友を思う気持ちにまで話が発展するのですが、むむむ?そうなんですか?と個人的にはあまり納得できない理由でした。
 過去に一癖ある少女探偵をブレーンとして、男の子が人前での謎解きを肩代わりする様子に、学園青春もの特有の恋愛模様を感じ取ることはできます。しかしストレートではなくて、主人公の男の子は重度のシスコンで、何故に何故だか、事件関係者も同性愛者であったり、主人公と同じシスコンであったりと、マイノリティな恋愛感情をもつキャラクターが、学園モノという狭い世界の中に高密度にひしめいているのには少し抵抗がありました。物語の中心にこのような人間関係が隠されているため、イラスト表紙から感じられる間口の広さとは裏腹に、実際読んでみると想像以上にとっつきにくい作品でした。論理的謎解きにこだわった本格ミステリの方向性は非常に好感が持てるのですが…。
[ 2017/02/03 01:33 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「原発サイバートラップ リアンクール・ランデブー」 

原発サイバートラップ リアンクール・ランデブー原発サイバートラップ リアンクール・ランデブー
2016/8/8
一田 和樹

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★★★★☆



 【内容紹介】

 韓国の原発がハッキングされ、放射性廃棄物をつり下げた気球が空に浮かんでいる。これが破壊されれば日本が最大の被害を受けることになる。が、日本は表向き手出しできない。ハッカー集団にアメリカ軍需企業も巻き込んで対応を急ぐのだが…「犯人」は、事件をどこへ着地させるつもりなのか。想定外の危機に日本は何ができるのか。セキュリティの陥穽を突くサイバーサスペンス!




 サイバーミステリならこの御方、福ミス作家の一田和樹さんの新作は原発をターゲットにしたミステリです。
 作者の持ち味が遺憾なく発揮された一作です。
 タイトルの「リアンクール」というのは、日本の竹島のことで、原発については日本のではなく韓国のものがターゲットにされます。韓国の原発、というと海の向こうのもので危機感が湧きにくいところですが、じつはその距離は意外と近く、先の東日本大震災でメルトダウンを起こした福島第一原発~東京間よりも日本から近いところにあるそうです。つまり韓国の原発(第二古里原発)が破壊されるともろに日本に被害を及ぼすのです。
 このような「対岸の火事」と思わせがちな微妙な距離、さらにコンピューターやインターネットといったリアルタイムで何が行われているのか把握しにくく、(わたしなんかにとっては)仕組みが理解し難いものを利用して“戦争”が行われるため、ミステリとしてのホワットダニット的興味がそのまま不安感や恐怖にもつながりサスペンスを盛り上げます。一方、目に見えて(わたしなんかにとっても)理解しやすい事象として描かれるのが、韓国側から日本へと行われる竹島の独立と承認であったり、第二古里原発上空に浮かぶ使用済み核燃料を吊るした大量のドローンなのです。ドローンのランプが光った!ネット民が突撃した!ツイッターで大量にリツイートされてる!といったキャッチーな出来事の数々に目を奪われているうちに、犯人の奸計に知らず知らずはまっていくのが面白いです。
 現代の戦争はヤリを持って行うものではない、というのがよく分かるミステリで、高度なカードゲームを見せられている印象をうけました。セキュリティホールの情報がどれほどまで重要な切り札となりうるのか描かれていて、いかに相手にその切り札を使わせ、自分のそれを温存するか、駆け引きのある戦略が楽しいです。クライマックスにおいて、誰もレイズしてこず、こちらもスリーカードあたりで勝てるかな、と思って手札をオープンした時、意外な人物の手にロイヤルストレートフラッシュが揃っているのが衝撃的です。

 本書の最後のページに査読された専門家の名前が記載されています。おそらく本書で描かれたテロ行為は条件が揃えば実行可能なのだろうな、という予感を嫌でも読者にさせる一ページで、フィクションがノンフィクションに片足を突っ込む恐怖が味わえます。


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[ 2016/08/17 00:02 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

イーデン・フィルポッツ「守銭奴の遺産」 

守銭奴の遺産守銭奴の遺産
2016/7
イーデン フィルポッツ

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 難解なジグソーパズルのように入り組む謎! 殺された守銭奴の遺産を巡り、遺された人々の思惑が交錯する。『別冊宝石』に抄訳された「密室の守銭奴」が完訳となって新装刊。




 古来、『別冊宝石』にて抄訳された「密室の守銭奴」の完訳版です。
 期待した人も多いでしょう。わたしもそのひとりです。
 被害者となる守銭奴を囲む完全なる密室、これが本書のメインとなる謎で、開幕早々に読者の目の前に提供されます。しかし、それ以降の展開は密室から離れた場所で探偵活動が行われるのが良くも悪くも印象的です。その探偵活動の中で発見される新たなる死体、そこから発生しする様々な推理――犯人候補であったり、密室で殺された守銭奴と樽から発見された女性の遺体の繋がりや、彼らを殺害する動機など、さまざまな仮説が組み上げられ、展開は地味ながらも本格ファンとしては面白い展開が続きます。この最中も密室の謎については絶賛放置中で、この密室トリックが明らかにされるのが最後の最後、極めて印象的な形で真相が姿を現します。トリック解明のきっかけとなるこの切り口は素敵だと思うのですが、そのトリック自体は手放しには絶賛しにくいところがあります。探偵役のトリックの説明が漠然としすぎているように思うのです。作者としては「犯人はこのトリックで○を○○した(している)のだから、人間を殺せることは説明するまでもないだろう」といったような説得力の持たせ方をしたいのだと思うのですが、現場の状況がイメージできません。犯行トリックにしろ手がかりの処理についてもです。
 さらに疑問符に拍車を掛けるのが、犯人の動機と心理です。終盤に探偵役の一人が、犯人の心の内を分析するシーンがあるのですが、これがもう「お前は何を言っているんだ」とツッコミを入れたくなるほど理解が及びません。もうひとりの探偵役が賛同できないふうなつっこみを入れてはくれるのですが、結局それが受け入れられることは無く、この分析が犯人の心理を示す真相として物語は幕を閉じてしまいます。
 良く言えば意外な犯人、犯行動機なのですが、少し納得のできないところが多かったです。密室トリックにしてもそうです。このように割と期待した部分では肩透かしを喰らった反面、手がかりをかき集めて仮説を立てていく展開は王道の本格ミステリのそれで、この点では満足度の高い作品でした。
 正直評価のしにくいところはありますが、本書を完訳版で読めたことそれ自体は大変嬉しいことです。論創社に感謝です。

[ 2016/07/17 08:59 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」 

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた
2016/7/7
井上 真偽

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★★★★★



 【内容紹介】

 聖女伝説が伝わる地方で結婚式中に発生した、毒殺事件。それは、同じ盃を回し飲みした八人のうち三人(+犬)だけが殺害されるという不可解なものだった。参列した中国人美女のフーリンと、才気煥発な少年探偵・八ツ星は事件の捜査に乗り出す。数多の推理と論理的否定の果て、突然、真犯人の名乗りが!?青髪の探偵・上苙は、進化した「奇蹟の実在」を証明できるのか?




 「その可能性はすでに考えた」シリーズの第二弾。
 基本的なコンセプトは前作同様、奇跡の証明のため、すべての可能性を論理的に否定してゆきます。容疑者が限定されているだけでなく、時間的にも空間的にも限定された中で、衆人環視の中の毒殺という不可能犯罪が描かれます。このように事件の構成要素をかなり限定的にしているうえに、犬の乱入などといったイレギュラー(犯人が想定することの出来ない出来事)を盛り込んでいるため、犯人候補、毒の入手・投入のタイミング、毒殺トリックといった組み合わせは意外と少なくすっきりとした印象を受けます。これはマイナスではなく、過度に肥大化していないため読者にとっても負担は少なく、すべての可能性を隅々まで理解しやすい利点があります。
 数々の推理が不成立であることを証明する切り口も鮮やかで、おおっと驚かせるだけの切れ味があるのも良いところです。流しに捨てられたピザなどには意表を突かれました。そして本作において謎解きを面白くしている要素のひとつとして、視点人物であるフーリンの立場の移ろいが挙げられます。傍観者であった彼女が、中盤において、ある理由から本格ミステリのステージ上に引きずり出されます。この時点から謎解きはさらに前段とは違う別種のアプローチがされてゆくのです。一件の毒殺事件を描きながらも、序盤と中盤において立場の違う2人の人間が推理に取り組むことで、そのロジックはさらに深度を増していくことになります。

 徹底された可能性の否定、その行きつく先は奇蹟の成立であるはずです。しかしながら、同時に本格ミステリとして(奇蹟を信じない)の立場を取る場合、それは消去法推理につながってしまいます。かつて名探偵はこう言いました――あらゆる可能性を否定して残ったものが、いくら起こりそうもないことでもそれが真実であるのです。奇蹟の証明によって打ちひしがれるとき、実はそれが翻って真実への道標へと変貌する瞬間が訪れます。徹底された可能性の否定がそれまでに行われたからこそ、実にわかりやすい形でそれは読者の前に姿を現します。とてつもない物量の謎解きが読者に対するミスリードになっているだけでなく、真相を暗がりの中にただひとつ浮かび上がらせる消去法的演出にも寄与しているのです。ここまでの持って行き方は実に巧妙であり、これほど鮮やかなものはそうそう読めるものではありません。

 とにかくすさまじい本格ミステリです。昔から散々読んできた本格ミステリのロジックは徹底されているのですが、出来上がった本作『聖女の毒杯』はかつてのどの本格ミステリにも無い、別種のオーラをまとっています。それはまさに本書の光り輝くカバーが象徴しているかのようです。
[ 2016/07/11 22:14 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

小林泰三「クララ殺し」 

クララ殺しクララ殺し
2016/6/30
小林 泰三

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★★★★★



 【内容紹介】

 大学院生・井森建は、ここ最近妙な夢をよく見ていた。自分がビルという名前の蜥蜴で、アリスという少女や異様な生き物が存在する不思議の国に棲んでいるというものだ。だがある夜、ビルは不思議の国ではない緑豊かな山中で、車椅子の美少女クララと“お爺さん”なる男と出会った。夢の中で「向こうでも会おう」と告げられた通り、翌朝井森は大学の校門前で“くらら”と出会う。彼女は、何者かに命を狙われていると助けを求めてきたのだが…。夢の“クララ”と現実の“くらら”を巡る、冷酷な殺人ゲーム。




 地球と“ホフマン宇宙”の二重の世界を舞台にした非日常本格ミステリです。
 前作『アリス殺し』の続編ですが、今作はルイス・キャロルではなくE.T.A.ホフマンの作品世界が題材になっています。
 それぞれの世界の登場人物が、もう一方の世界に“アーヴァタール”を持っていて、お互いの思考を共有しています。“ホフマン宇宙”の“アーヴァタール”が命を落とさない限り、地球にいるその本体は何度死んでもその死がリセットされる特殊状況下で殺人事件が発生します。
 ふたつの世界を行き来する推理が抜群に面白く、この特殊状況下ならではの論理過程が斬新です。どちらの世界の誰がどのタイミングで命を落としたのか、思考を共有するがゆえに発生する落とし穴、二重の世界を股にかけたアリバイトリックなど、擦れっ枯らしの本格ファンも新しい感覚で楽しめることでしょう。
 複雑化される事件や謎解きが、単純な着眼点によって真実が明らかにされるという落差も面白いです。“アーヴァタール”について前提として読者の目の前に明らかにされている設定から、巧みに目を逸らされます。ミスリードの効きが良いのは、提示されるものを読者が受け入れざるをえないほどの特殊状況をこしらえている故かもしれません。そういう意味でもこのような世界観を本格ミステリに応用したのは成功と言えます。

 犯人があっさりと「人殺し」の手段を取ってしまう点が、少しの驚きを感じたのですが、それ以上に犯人の最期が目に焼き付いて離れません。この“ホフマン宇宙”での犯人(アーヴァタール)の最期と、現実世界(地球)の本体とを、現代的な形でリンクさせたのも綺麗です。“ホフマン宇宙”で残酷に思われた「これ」は、我々の世界に置き換えると、実はこういうことなのか、と少し考えさせられました。

 2016年の本格ミステリの大きな収穫です。オススメです。
[ 2016/07/06 01:38 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

最新のつぶやき
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ハーイ!ハーイ! ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!