読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

詠坂雄二「T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか」 

T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのかT島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか
2017/7/19
詠坂雄二

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 月島前線企画に持ち込まれた、既解決事件。孤島に渡った六人が全員死体で発見されたが、当人たちによって撮影された、渡島から全員死亡までの克明な録画テープが残っていた。何が起こったかはほぼ明確だ。警察はすでに手を引いている。ところが、依頼人は不満のようだ。真実が映っていなかったのか、あるいは嘘が映されていたのか―。目を眩ませる膨大な記録と、悲喜劇的な顛末。事件の背景に浮かび上がる、意外な真相とは!?




 作者がどういう意図で書いた作品なのか、想像するしか無いのですが、なんとなく新本格30周年を意識した作品のように思えます。物語は、かの有名な『そして誰もいなくなった』を彷彿とさせる、関係者全員が何らかのかたちで死亡していく経過を描いた作品です。作中で夢野久作の『瓶詰地獄』のリスペクトが示唆されていますが、それよりも時期が時期のせいか、わたしは綾辻行人氏の『十角館の殺人』を思い浮かべました。また、最近の傾向なのか、本格ミステリにおける名探偵のリスペクトを本書から感じます。おそらく、物語やプロット、トリックなどは全く違いますが、最近デビューした阿津川辰海氏の『名探偵は嘘をつかない』などと、やっていることは根っこの部分では同じではないかと考えます。
 正直、本書は本格ミステリとしてしか楽しめない反面、本格ミステリとしてはかなり玄人向けのネタが扱われていると思います。われわれ本格ミステリファンが何を楽しんで読書をしているのか、を再認識させるような仕掛けです。探偵による一応の推理が披露され、一応の解決がみられた時、読者は本書のページがまだ十分に残っていることを知るでしょう。そしてこの瞬間、最終章「補遺」に期待する事になります。おそらく読者は名探偵の力――名探偵の次なる推理が物語を牽引し、本格ミステリの面白さをさらなる高みへと昇華させることに。ただし、恐ろしいことに、この考えを読者にさせることが本書の狙いであり、犯人の思考と一部重ねることで、より本書のテーマ性を読者に訴えかけさせてくるのが巧妙なのです。麻耶雄嵩氏の「名探偵が舞台を求めるのではなく、舞台が名探偵を求めているのだ。」という帯の文句が象徴的で、本格ミステリは誰が創るのか、作者か?犯人か?舞台か?トリックか?――いいや名探偵だ、と本書を読み終わった時に読者に言わせてしまうほどの訴求力があります。読者も含め、全ては名探偵の力を求めているのです。
 孤島の連続殺人を描いている割に地味で、伝わりにくいネタに感じたりもするのですが、本格ミステリ文壇が成熟した今だからこそ評価されるべき作品であるとも思います。評価が難しいかも。新本格30周年の今年にぜひ。


 
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[ 2017/07/28 01:23 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

一田和樹「御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック」 

御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック御社のデータが流出しています: 吹鳴寺籐子のセキュリティチェック
2017/6/22
一田 和樹

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★★★★☆



 【内容紹介】

 エンタメ企業ソニカのオンラインゲーム顧客データから個人情報が盗まれ、ネットで公開されてしまう。犯人はツイッターで犯行声明を出し、忽然と姿を消した。調査を依頼された82歳のセキュリティ・コンサルタント、吹鳴寺籐子が、「社内の」ネットワークを走査すると…「アンチウイルスソフトを買わせ金を奪う詐欺」「顧客データが暗号化される悲劇」等々、いま会社員が直面する危機と解決法を描き出したIT連作ミステリ。




 IT系ミステリ連作短編集です。
 わたしはあんまり(というか全く)ネットセキュリティには詳しくないのですが、そういう人間が読んでも楽しめる作品集です。ミステリさえ好きであればIT系の知識はさほど多くなくても大丈夫なのが親切です。
 作中でも作者自身もあとがきで書いていますが、要はたとえ技術が進歩しても人間のあり方は変化しないのです。犯罪を起こすのも人間で、犯行トリックによって探偵を騙し、罠にかけるのも人間だからで、ミステリとして本作の根底を流れるものは、いわゆる「古典」と言われる探偵小説群のそれと何ら変わりません。ミスディレクション、見えない人、意外な犯人、いわゆる狂人の論理など、これらを最新のIT(?使い方多分違いますが、ひとまずこの言葉で逃げます)と噛み合わせているのが本格ミステリとしての大きな見どころです。涙香、乱歩の時代から今日までの我が国の探偵小説史を眺めてみても、この手の探偵小説は非常に珍しいと思います。ドローンやVRなど最新技術を利用したミステリの新作が矢継ぎ早に刊行されている昨今、本作もそういった作品のひとつと言えるでしょう。しかし、最新の技術が使用されているとは言え、今後年月が経っても意外と経年劣化は少ないと想像します。先にも書いたとおりコアの部分に人間の変わらない部分が据えられており、かつ、長年我々が愛している本格ミステリ特有の騙しが盛り込まれているからです。
 連作集のため、最終話で大きなサプライズが発動します。ここにおいて、主人公が老婆であることが実は「IT」×「年寄り」という絵的なミスマッチさを演出するだけでなく、ミステリとして物語として大変重要な布石であったことがわかります。さらにそれまで要所要所で顔を出していた彼女の相方が、これから何かしそうな、という「過程」ではなく、老婆と一緒に生活しているそれ自体が「結果」であった構図の逆転が鮮やかです。
 トリックはバラエティに富んでいますが、難を言うなら、個人情報が流出したという企業に赴き依頼を受けるという展開と謎が四編一様である点でしょうか。しかし、殺人が起こって探偵が現場に赴いて…というのがミステリの王道展開であったりするし、それを考えると、わたしが気にし過ぎなだけかもしれません。
[ 2017/07/22 00:14 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

早坂吝「ドローン探偵と世界の終わりの館」 

ドローン探偵と世界の終わりの館ドローン探偵と世界の終わりの館
2017/7/12
早坂 吝

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 颯爽と空から現れ犯人を捕獲する……そんな神出鬼没な存在として知られるドローン探偵こと飛鷹六騎(ひだか・ろっき)は、日々、犯人確保に余念がない。ところがある日、捜査中に両足を骨折。折しも大学探検部の面々と「廃墟探検」を計画中で、悩んだ六騎はドローンを使った妙案、廃墟付近に停めた車でドローンを操り、カメラ越しに探検するという方法を思いつく。
 そうして向かった廃墟、その実態は「ヴァルハラ」と呼ばれる洋館で、北欧神話の終末論に取り憑かれた男が建てた〈迷宮〉だった。神話にもとづいた仕掛けが至るところに施されたその場所を意気揚々と探検する部員たち。しかし、いつしかそこには不穏な気配が漂い、部員が一人、また一人と襲われ始め――。
 いったい犯人は誰なのか、なぜ皆を襲うのか? 六騎に打てる手はあるのか?
 本格ミステリーの申し子にして、定石破りの天才が贈る、これぞ究極のエンターテインメント!!




 上木らいちの登場しないノンシリーズ作品。ひょっとしたら新シリーズになりそうな予感のする長編です。
 探偵役が外部からドローンを駆使して、クローズドサークル内の事件現場を探索し真相まで到達する新しいタイプの本格ミステリです。
 おそらく大部分の人が騙されるであろう一発ネタが炸裂して、メイントリックは印象的です。ドローン自体が、我々一般人に認知されてから日が浅く、その認識を利用したトリックなのですが、ひょっとしたら本作のミステリとしての鮮度は今が最旬の可能性があります。最近、ドローンの操縦を習得するための専門学校があるのをニュースなんかで耳にしたのですが、今後ドローンがもっと社会に浸透し、被災地などに派遣されるのが当たり前になる時代が来る頃には、本書で描かれるミスリードが機能しなくなる可能性があります。上手い例えが思い浮かびませんが、むかしは「ケータイ」というと電話かメールでしたが、今は写真が撮れます。20年前はカメラを持たずに写真は撮れませんでしたが、いまはそんなことは無いのです。本書で描かれるドローンの、もう一つの側面が一般化されると、真相も「だから何?」となる可能性があります。
 とはいえ、本書の大ネタが明らかになった瞬間、密室トリックや犯行動機、それまでに事あるごとに語られてきた北欧神話の終末論が芋づる式に結びついていく快感は健在で、こちらは本格ミステリ特有の面白さなので朽ちないと思われます。

 話のネタにはなると思います。語弊を招く可能性がありますが、敢えて言うなら「バカミス」です。軽いノリで読めるのに、形態が単行本なのが惜しいですがおすすめです。奇想爆発です!
[ 2017/07/16 01:46 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

小林泰三「わざわざゾンビを殺す人間なんていない。」 

わざわざゾンビを殺す人間なんていない。わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
2017/6/30
小林 泰三

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 全人類がウイルスに侵され、死ねば誰もが活性化遺体になる世界。家畜ゾンビが施設で管理され、野良ゾンビが徘徊する日常のなか、とある細胞活性化研究者が、密室の中で突然ゾンビ化してしまう。彼はいつ死んだのか?どうやってゾンビになったのか?生者と死者の境目はどこだったのか?騒然とする現場にあらわれたのは、謎の探偵・八つ頭瑠璃。彼女とともに、物語は衝撃の真相が待ち受けるラストへと加速していく。世界もキャラクターもトリックも真相も予測不可!極上のゾンビ×ミステリー、開幕。




 ゾンビが当たり前に存在し、すべての人類がそのゾンビウイルスに感染しているという、そんな世界で起こる殺人事件を描いたミステリです。あたりまえにゾンビが存在するとはいっても、作中ではゾンビパニック的な盛り上がりも描かれているので、おとなしい謎解き小説になっていないのも良いところです。文体や登場人物の会話も独特で、登場人物たちの頭のネジが何本か飛んでいるのではないか、と読者に思わせることも狙いなのかもしれません。少し狂った世界間と見事にマッチしています。
 序盤には密室殺人も描かれており、その密室トリックもゾンビの生態を上手く活かしたもので面白いです。パズル要素が強く、本格ファンにおすすめです。本書のようなドタバタの多い物語の中にあっては、意外なほど論理的に解かれていくため、緩急つけたバランス感覚も楽しめます。
 密室トリックも良かったのですが、それよりも感心したのが、ゾンビと医療を結びつけた点です。過去の事件の真相が明らかになっていく終盤、ある段階でiPS細胞が主人公の出生に関わる大きな謎を解く鍵となります。ゾンビウイルスによって死してもなお生きながらえる人間と、最先端医療技術によって死をも克服する人間、いずれが本当のゾンビであるのか曖昧になっていく展開はテーマ性という点で面白いし、何よりもミステリとしての、とあるサプライズを効果的に演出しているのが素晴らしいです。
 死んだものが復活して活動するゾンビは、やっぱりTVゲームなどのイメージで、どちらかというと忌み嫌われる存在だと思うのですが、そんな中で、最終シーンにおける、ある人物たちの涙が印象的です。それが哀しみの涙ではなく喜びのそれであるのが素敵です。
 作中では活性化遺体(いわゆるゾンビ)の知能を昆虫並であると設定されていますが、そんなゾンビを介して描かれるのは、実は家族愛であったり姉妹愛であったり、異性間の恋愛であったりします。たしかにゾンビ映画やゲームに見られるスプラッタ的な要素はふんだんに描かれているのですが、よくよく見るとビックリするくらいの人間の愛が描かれているのです。ゾンビと人間、うまい具合にコントラストを成した良作品だと思います。

 ちなみに本書の表紙イラストをまじまじと眺めていると、あることに気づくと思います。それが結末部分を予見させる危険があるので、あまりじっくりとは見ないほうが良いかもしれません。

[ 2017/07/05 01:50 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

松岡圭祐「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」 

シャーロック・ホームズ対伊藤博文シャーロック・ホームズ対伊藤博文
2017/6/15
松岡 圭祐

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★★★★☆



 【内容紹介】

 シャーロック・ホームズが現実の歴史に溶けこんだ。いかに彼は目撃者のいないライヘンバッハの滝の死闘で、モリアーティ教授への正当防衛を立証し、社会復帰しえたのか。日本で実際に起きた大津事件の謎に挑み、伊藤博文と逢着する。聖典のあらゆる矛盾が解消され論証される、20世紀以来最高のホームズ物語。




 ホームズパスティーシュの歴史に新たな一作が加わりました。文庫書き下ろしです!
 本書では、シャーロック・ホームズと同時代に生きた伊藤博文とを遭遇させたばかりではなく、ライヘンバッハの滝へモリアーティ教授を叩き込んだ「最後の事件」から、ホームズ復活の「空き家の冒険」までのいわゆる“大空白時代”を描いた、正典の謎を解くひとつの仮説としても読むことが出来ます。
 言うまでもなく、もちろん小説の中のホームズが伊藤博文なんかに会えるわけがないのですが、伊藤博文が、フィクションのホームズの空白期間へ入り込むのは自由なわけで、「こうだったら素敵だな」が十全に描かれています。特に素晴らしいのが、我が国日本を近代国家へと導いた伊藤博文に、シャーロック・ホームズの助力が少なからずある点です。まさに日本の近代史にホームズを滑り込ませたとも言える内容で、日本を取り巻く諸外国との諸々の事件、及び国内でのとある事件、さまざまな歴史が、本書で描かれるホームズの冒険とリンクし合うのがスリリングです。ホームズパスティーシュという点を除いても、一つの事件解決が次の事件へとつながっていくプロットは考えられていて、なかなか読み応えがあり、ミステリ単体としても楽しめる内容でした。
 本書においてホームズは、ロシアを相手に大きな事件を解決することになるのですが、解決によって日本に及ぼした影響も大きく、ホームズファンであり、かつ日本人である読者ならば、きっと喜びも大きいことでしょう。あのホームズが日本の為にここまでやってくれたのか!と感動もひとしおです。なんだか、フィクションとノンフィクションがごちゃごちゃになった感想ですが、たぶん本書の場合はこれで良いと思います。ここまで虚実を自然に一体化させているのは、ホームズ及び日本の近代史いずれにも造詣が深くないと出来ることではありません。
 「最後の事件」の結末部分で幕を開け、「空き家の冒険」の結末部分で幕を閉じる本書の構成は美しいです。本書を読むにあたって、正典が既読であることはほぼ必須だと思うので、ホームズファンにはぜひ。おすすめです。
[ 2017/06/30 02:34 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

阿津川辰海「名探偵は嘘をつかない」 

名探偵は嘘をつかない名探偵は嘘をつかない
2017/6/16
阿津川 辰海

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★★★★★



 【内容紹介】

 名探偵・阿久津透。その性格、傲岸不遜にして冷酷非情。妥協を許さず、徹底的に犯人を追い詰める。しかし、重大な疑惑が持ちあがった。それは、彼が証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したというものだった―Kappa‐Two応募当時、弱冠20歳。新しい才能は、本格ミステリにどう挑んだのか。ミステリファン必読のデビュー作!




 石持浅海氏、東川篤哉氏らを輩出したカッパ・ワンが再始動です。これからは名前も新たに「カッパ・ツー」と言うらしいです。その再始動の狼煙を上げるのが本書のようです。
 満を持して、という言葉がまさにふさわしく、たいへんな大型新人の登場です。作者は東京大学の推理小説研究会「新月お茶の会」に今も在学中のサラブレッドです。

 目次を見ると、山口雅也氏の『生ける屍の死』、島田荘司氏の『斜め屋敷の犯罪』、クイーンの『災厄の町』、アントニイ・バークリーの『トライアル&エラー』など本格ミステリの影響を強く受けたと想像できるタイトルがズラッと並びます。基本はリーガルミステリーの体裁をとってはいるものの、一筋縄では行きません。前半には多段構えの密室殺人トリックを早々に披露して、本格ファンの度肝を抜いてきます。最終的な真相でもおかしくないレベルのトリック・犯行計画を、あっさりと最終真相の為の踏み台としているのです。この思い切りの良さ、出し惜しみの無さが新人らしくもあり、また新人離れしています。
 一筋縄ではいかない、という理由に、いわゆるSF要素が絡んでいる点も挙げられます。死者の魂が甦るのです。本書の場合は、まさしく被害者その人が蘇ってしまう為、物語前半に、その被害者の証言が得られてしまうのです。殺人後の犯人の犯行工作の一部始終が、その死者の証言によって明るみになってしまうのです。
 このように物語の前半部分で、すでに密室トリック、そして犯行計画の一部始終が読者の目の前に晒されるのですが、それでもなお本格ミステリとしての魅力が褪せないプロットが考え抜かれています。ここまで手掛かりを開陳しても、それでもなお敢然として謎が残るのです、フーダニット、ホワイダニット、ハウダニット、本格ミステリを支える3つの柱その全てが。
 すべての謎解きは法廷で行われます。そのため証拠による理詰めの推理で被告人を追い詰めていく過程が、本格ミステリとして好相性です。空振りと思われた証言、どこへ向かうのか分からない証言、数々の証言が登場しますが、見方を変え、組み合わせ方を変えると、実は隠されていた最終的な真相を指し示すのが、意外性が演出されていて良いです。従来の本格ミステリのように、例えば密室内で人が死にました。密室トリックと犯人は誰でしょう?といったような「謎」→「論理的解決」という単純線では説明できないような、良い意味で複雑さがあると思うし、謎の提示の仕方、謎の解かれていく過程(カードをオープンしていくタイミングと手際の良さ)、など工夫されていると思います。最も重要な謎を最後まで伏せ、それ以外の謎を早々に削ぎ落とすことで、本作のテーマが強調され、それによってクライマックスの感動も劇的なものになっています。こういう作品を読むと、本格ミステリの高度化、レベルアップを感じます。

 殺人事件を通して名探偵・阿久津透その人を探っていく物語でもあります。本格とはこうあるべきだ、というのではなく、名探偵とはこうあるべきだ、といったような名探偵の資質を題材にしている点は最近の傾向でしょうか。長い長い事件が幕を閉じた時、名探偵の全能感、カリスマ性、その圧倒的資質に、全登場人物、そして全ての読者は名探偵の前にひれ伏すことになるでしょう。本格ミステリの中心に立つのはトリックでも謎でも犯人でもその何ものでもなく、名探偵であることを示したような作品です。

 素晴らしい作品でした。間違いなく本格ミステリの次世代を担う大型新人の登場です。デビューおめでとうございます。
 デビュー作でこれほどのものを書いてしまうと次作が逆に心配になってくるのですが、応援しますぞ。
[ 2017/06/24 02:48 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

若竹七海「ぼくのミステリな日常」 

ぼくのミステリな日常ぼくのミステリな日常
1996/12/1
若竹 七海

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★★★★☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 月刊社内報の編集長に抜擢され、若竹七海の不完全燃焼ぎみなOL生活はどこへやら。慣れぬカメラ片手に創刊準備も怠りなく。そこへ「小説を載せろ」とのお達し。プロを頼む予算とてなく社内調達ままならず、大学時代の先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。かくして掲載された十二の物語が謎を呼ぶ、贅を凝らしたデビュー作。




 新本格再読フェアの一冊。目線を変えて若竹七海さんのデビューにしてみました。
 月イチの社内報に掲載される短編小説が一年分、計十二編に、額縁を加えてひとつの大きな作品――謂わば総タイトル『ぼくのミステリな日常』と成した傑作連作短編集です。
 短めの短編ですが、個々のクオリティが高いのが特徴。しっかりとした謎があり、謎解きがあり、そしてサプライズがあります。十二編立て続けに読ませる割には、叙述トリックに、幻想ふうオチ、犯行計画の緻密さに舌を巻くもの、などバラエティに富んでいるため、各話を追うごとに新鮮な驚きが待っています。
 意外な伏線の張り方も本書の大きなアイデアで、遊び心も効いていて、26年ほど前の作品ですが、こういうのはなかなかお目にかかった経験がありません。外枠の部分でいろいろやるのは、同じ新本格では二階堂黎人さんが某長編でやっていましたが、「社内報」と同一レベルにいる額縁と、そのさらに上位にいる額縁の、二重のレベルで存在する額縁を自由に行き来して真犯人をあぶり出す点、本書のほうがよりアクロバティックです。
 「日常」というタイトルから「日常の謎」を想起してしまいますが、ふつうに殺人事件は起きるし、幻想味の強い物語はあるし、そして何より積極的にトリックによって読者を騙しにかかる点で、趣を異にします。

 新本格ミステリというと、英米黄金期の復興という意味合いがどうしても強くて、今読むと「現代の古典」という新鮮さを欠いた評価になりがちなのですが、本格コードに依存していない本書の場合は今読んでも新鮮な驚きがあります。新本格以降によく見られるようになった、所謂「連鎖式」の作品としても、いまでも高く評価できるでしょう。たとえば最近の2014年に刊行された歌野晶午氏の『ずっとあなたが好きでした』と比較してみても、経年劣化をしていない本書のクオリティの高さが分かるはずです。
 ネタ量が多くサービス精神旺盛。十二話すべてが一気に収束し、意外なやり方で意外なところから姿を現す真犯人には興奮します。未読の方、そして既読の方でも久しぶりに読み返してみるのもおすすめですよ。
[ 2017/06/16 02:52 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社

【神奈川】
・上野東照宮
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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