読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

天祢涼「希望が死んだ夜に」 

希望が死んだ夜に希望が死んだ夜に
2017/9/13
天祢 涼

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★★★★☆



 【内容紹介】

 神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生の冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたものの、「あんたたちにはわかんない」と動機は全く語らない。
 なぜ、美少女ののぞみは殺されたのか。
 二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がってくる。
 希望の「希」という漢字が「ねが(う)」と読むことから名づけられた、ネガ。現在は、母親の映子と川崎市登戸のボロアパートに暮らしている。
 母はあまり働かなくなり、生活保護も断られた。まわりに頼れる大人や友人がいないネガだったが、あるとき、運命的な出会いをした……。




 昨年ツイッターを中心に話題になった「日本死ね」というフレーズを小説化したような物語で、今現在の日本の生きづらさを描いた作品です。
 未来の進路について悩むべき中学生が、最終的に「希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国」と結論づけさせる展開が衝撃的です。しかし、そこへ至るまでの展開は決して荒唐無稽ではなく、リストラ、転職失敗、離婚、母子・父子家庭、生活保護、貧困スパイラル、ネグレクト、児童虐待など、これら現在進行形で現代の日本が抱える問題がリアルで、今後日本を支えていく子供へとシワ寄せが集中していく様子が残酷に描かれていきます。
 基本的に子どもたちに罪はなく、すべての元凶はこのような環境・社会を作った大人たちだったりするのですが、それがミステリとしての真相にも反省されているが巧妙です。ネガが黙秘を続ける動機もそうなのですが、親友同士のネガとのぞみが追い詰められ、作中で描かれるような結論に至ったクライマックスにおいてもなお、自己の保身のために子どもたちの裏へ隠れてコソコソとする真犯人がゲスいです。自己のために子供に金銭を稼がせるネガの母親、生活保護のために大切なフルートを捨てさせるのぞみの父親、直接的に罪には問われないであろうこれらの人物ですが、真犯人の行動原理となんら変わらないのが社会の闇を表しているようで象徴的です。
 現在の「希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国」が大人によって作られたものであり、その「真っ暗」な中で生きるのが子供であるならば、その「希望が死んだ夜」を作った大人を裁く一撃を加えたのが、じつは社会のレールから外れたホームレスであるのが皮肉です。子供が社会に押しつぶされる時、社会の外部に立つホームレスが事件解決の決め手となる構図は探偵小説としては面白く読みました。

 「面白かった」と言うとなんだか語弊があるかもしれませんが、読んで良かったです。今の日本をリアルに切り取った社会派ミステリなので、今後何十年か経って本書を読み返すことがあれば、その時は「このときの日本が一番ひどかった」と思えれば良いな、と思います。
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[ 2017/09/25 20:08 ] 天祢涼 | TB(0) | CM(0)

第五回文学フリマ大阪へ行きました。 

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堺市産業振興センター

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 もう先週の話になりますが、9月18日に開催された第五回文学フリマ大阪へ行きました。
 場所は例年通り堺市産業振興センターというところで、大阪の市営地下鉄御堂筋線の最南端、なかもず駅から徒歩数分くらいのところにあります。


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カタログ

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購入物



 無料でいただけるものも含めて、いろいろもらって来ました。
 ミステリー系の小説や評論の頒布物が中心です。

 京都大学推理小説研究会が機関紙の『蒼鴉城』を頒布していたので1冊買ってみることにしました。初めて読みます。わたしが買ったのは40号で、なんでも記念号だとか。目次を見ると研究会OBの祝辞が載っているようでした。

 小説以外にも、カメラが趣味と思われる方が、簡単な写真集を販売していたので、それも幾つか買ってみました。


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 会場の外にはキッチンカーがあって、そこでカレーライスの販売が行われていました。
 会場内をウロウロして、ちょうどお腹がすいてきたところだったので、お昼はここで食べることにします。
 なかなか本格的なカレーで、わたしには少し辛かったです。

 なんか大阪で第一回開催の時には、次にまた大阪で開催されるかどうかわからない、といったような不安定なことを耳にしていたのですが、こうやって今回の第五回が無事開催されたことは、結構軌道に乗ってきたということでしょうか。
 なんにせよ素敵なイベントだと思うので、長く続いて欲しいものです。

 頒布物についてはこれからゆっくり読ませていただきます。


 【関連リンク】
 文学フリマ - 文学フリマ公式サイト-お知らせ
 http://bunfree.net/






[ 2017/09/24 21:02 ] 【おでかけ】 | TB(0) | CM(0)

彼岸花を撮りに行きました。 

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彼岸花



 こんにちは!
 管理人のウイスキーぼんぼんです。

 休日を利用して彼岸花を撮って来ました。
 9月下旬から10月上旬あたりに見頃を迎える花で、田んぼや川の土手なんかに群生します。草の緑と彼岸花の赤の、補色調和が楽しめます。
 日本各地に名所があるようで、そのうちの京都の亀岡市まで足を運んでみました。


背中合わせ背中合わせ

連城 三紀彦

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 ミステリファン的には連城三紀彦さんの「彼岸花」という作品が有名でしょうか?そうでもないかな?
 「死人花」とかあまり良いイメージのない名前ですが、「赤い花・天上の花」の意味で、めでたい兆しとされることもある、とのこと(Wikipediaより)。
 ちなみに彼岸花を家に持ち帰ると火事になるという言い伝えがあるそうなので、そのあたりにも注意して撮影に望みたいです。


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桂川



 亀岡市は観光地で人気の嵐山を北へ行ったところにあります。渡月橋の掛かっている桂川を北上したあたりです。


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 車塚古墳あたりに群生すると聞いたので、そのあたりを散策です。
 確かに群生していましたが、群生場所が田んぼのあぜ道だったりするので、人んちの土地に入らないよう撮影には気を使います。

 チョウチョウがひらひらと舞っていて、なかなか絵になります。


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出雲大神宮

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出雲大神宮 御朱印






 車塚古墳の東に出雲大神宮という丹波国一之宮があったので、せっかくなので参拝していきます。
 島根の有名な出雲大社はこの出雲大神宮の分社だそうで、ルーツはこちらのほうにあるそうです。驚きです。
 ありがたく御朱印をいただいて帰りました。


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 おじさんや、あと若い女の子らが大きな一眼レフを携えて彼岸花を撮影していましたね。初めて訪れた場所なので、最盛期なのかそうでないのかがよく分からないのですが、まあこんなもんか、という感じです。

 ひとしきり彼岸花を撮影したので、今度は南の方の穴太寺周辺へと移動です。


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穴太寺

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穴太寺 御朱印






 穴太寺も有名なお寺で、西国三十三所第21番札所なんだそうな。ここでも御朱印をもらいつつ、彼岸花撮影にいそしみます。
 御朱印は何種類かあったのですが「御本尊の御朱印ちょーだい」というと上の写真の御朱印がもらえました。

 御朱印&彼岸花ということでか、ここでもカメラを携えた女の子が多かったです。インスタ映えする写真を狙っているのでしょうか。


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近づく

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さらに近づく



 いいですね~。こちらも群生していました。
 そもそも彼岸花の群生って、田舎では普通に見られる光景なのかもしれませんが、わたし個人としてはあんまりこういう光景は見たことがなく、なかなか珍しく観賞しました。

[ 2017/09/24 00:22 ] 【写真・カメラ】 | TB(0) | CM(0)

知念実希人「崩れる脳を抱きしめて」 

崩れる脳を抱きしめて崩れる脳を抱きしめて
2017/9/15
知念 実希人

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★★★★☆



 【内容紹介】

 彼女は幻だったのか?
 今世紀最高の恋愛ミステリー!!

 作家デビュー5周年、
 実業之日本社創業120周年記念作品

 圧巻のラスト20ページ!
 驚愕し、感動する!!!
 広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の
 碓氷は、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。
 外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる
 碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を
 通わせていく。実習を終え広島に帰った
 碓氷に、ユカリの死の知らせが届く――。




 知念実希人氏の作家デビュー5周年と、実業之日本社創業120周年の両方がクロスする、作者にとっても版元にとっても勝負作となるであろう作品です。
 単行本税抜き1,200円、美麗な表紙イラスト、そしてキャッチーなタイトルと、「圧巻」「驚愕」「感動」という大フォントが並ぶ帯――書店に足を運んだ人間がレジへこの本を持っていくハードルは極めて低いと思われます。
 内容としては、簡単に言うと難病を患う女性に研修医が恋をする物語なのですが、前半部に患者である彼女との出会いを描き、後半は一転、場面が変わり彼女との別れを描くプロットは、起伏があり贅沢です。前半部分では、医者が患者に恋をする(あるいはその逆も)、というある意味王道のプロットを貫き、読者に「あるよねあるよね」といった安心した読書を提供しながらも、後半では彼女は死んだのか?はたまた生きているのか?遺書は本物か?最新の遺書なのか?古い遺書ならば最新の遺書はどこへ行ったのか?落としたのか?誰かが握りつぶしたのか?そもそも彼女は病院へ入院していたのか?医師たちの反応は?根本的に脳みそが崩れているのは主人公の研修医の方ではないのか??――と、数々の疑問符が一気に読者を襲い、物語はミステリとしての姿を現し始めます。ただ、これをサスペンスとしてのスピード感を損なうこと無く、かつ恋愛小説しての感情を置き去りにすること無く描いているのは達者で、理詰めの推理を求められるミステリと上手く噛み合わせている印象です。
 前半部分が終わるころに、主人公の父親の本心が明らかになり、後半に差しかかる頃には、さらに「患者の正体」という真相に肉薄するようなミステリとしての底が一段開けられます。しかしそれでもなお謎が継続し、クライマックスでどんでん返しを仕掛けてくる謎の強度と大きさには、恋愛小説と侮っていると足をすくわれることになるでしょう。
 作者自身が「僕にしか書けない恋愛小説」と語るとおり、患者と医者という登場人物の関係性以外にも、末期患者が生きる意味を考え、その想いが駆動力となっている点など、これらがミステリとして恋愛小説として上手く噛み合っているところなども医者としての作者の持ち味が発揮されたところなのではないかと思います。なぜそこまでしたのか?するのか?というその答えが、そのまま想いの大きさへと転化され、その登場人物のエネルギーが、ミステリとしてのサプライズの大きさ、恋愛小説としての感動の大きさ、物語の支えるこの2つの両輪へと伝わり迎えるラストは心揺さぶられます。

[ 2017/09/22 02:06 ] 知念 実希人 | TB(0) | CM(0)

二階堂黎人「巨大幽霊マンモス事件」 

巨大幽霊マンモス事件巨大幽霊マンモス事件
2017/9/7
二階堂 黎人

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★★★☆☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 ロシア革命から数年経ったシベリア奥地。
 逃亡貴族たちが身を隠す<死の谷>と呼ばれた辺境へ
 秘密裏に物資を運ぶ<商隊>と呼ばれる一団がいた。
 その命知らずな彼らさえも、恐怖に陥る事件が発生!
 未知なる殺人鬼の執拗な追跡、連続する密室殺人、
 <死の谷>に甦った巨大マンモス……。

 常識を超えた不可解な未解決事件を
 名探偵・二階堂蘭子が鮮やかに解き明かす!




 待ってましたの二階堂蘭子シリーズ最新長編です。
 タイトル予告があって十余年。あとがきにあたる「好事家へノート」によると、我が国の社会情勢の影響で、初期構想をストレートに作品として表現できなくなったそうで、紆余曲折あったことが想像できます。しかし何はともあれ上梓お疲れ様でした。そして作家生活25周年おめでとうございます。

 最近続いていた蘭子vs.ラビリンスシリーズよりも『人狼城の恐怖』に近い本格ミステリ度の高い作品です。
 タイトルにもある「巨大幽霊マンモス」が物語の中心にはあるのですが、ミステリとしてメインの謎としていないプロットが、なんだかヘンテコな印象を受けます。いや、メインといえばメインなのですが、その真相は不可能犯罪を書き続けてきた二階堂氏にしては、なんだかあっけない真相です。しかしそれに代わる形で読者を満足させてくれるのが、やはりと言うべきか、ふたつの密室殺人の謎なのです。とくに礼拝堂の密室には驚きました。目が醒めるような異形の真相もそうなのですが、現場にばらまかれた手掛かりから真相を構築してくと、あまりに自然に誤った真相へとミスリードされるのが巧妙です。機械トリックや大掛かりな物理トリック単体で魅せるのではなく、ミスリードと密室トリックをワンセットで仕掛けてくるあたり、さすが当代きってのトリックメーカー。熟練の業を感じます。
 <殺人芸術会>の会合にて語られる事件を解いていくアームチェア・ディテクティブスタイルや、二階堂蘭子がリアルタイムで事件にかかわらない点などは、緊張感や謎の不可能度合いを削ぐかたちになっているのですが、これらがダイレクトに減価事項とはなりません。これらを犠牲にしてまで盛り込まれた新機軸のトリックは、二階堂蘭子ものには珍しいトリックで、そのトリックが真犯人の意外性を狙ったフーダニットへと繋がるのが凝っています。ここにおいて<殺人芸術会>というシチュエーションが活きてくるわけです。不足なくサプライズを演出させてみせた完成度と併せて評価すべきところです。やはり本格ミステリにおいて、犯人を指摘する瞬間は作中でも重要度の高い場面だと思うし、本作の場合そこへ向けての演出が凝っていて、段階的に真犯人を暗がりから表舞台に引きずり出す展開にはゾクゾクして興奮します。
 本作『巨大幽霊マンモス事件』が、随分前に発表された「ロシア館の謎」の続編という体の物語であり、かつトリックについても「ロシア館-」を事前に再読しておいた方が良いほどの強い結び付きがあるため、単体で評価しづらいのが悩みどころでしょうか。

 全体を通してみても、たいへんまとまりが良いです。<死の谷>へと向かう冒険趣味、その道中で続発する不可能犯罪、目的地で待ち受ける巨大マンモスの謎、時空を超えて名探偵によってすべての謎が解明されるクライマックス――いわゆる館ものや孤島ものなどの狭い空間が舞台となるミステリとは、ひと味違ったプロットが読ませます。
 作家生活25周年記念の作品ならば、あの人ではなく、もっともっと我らが二階堂蘭子にスポットを当てた作品であったらなあ、と思うのですが、タイトル予告から十年以上経っている訳ですし、あまりそこは考えないようにします。


[ 2017/09/20 02:25 ] 二階堂黎人 | TB(0) | CM(0)

柾木政宗「NO推理、NO探偵?」 

NO推理、NO探偵?NO推理、NO探偵?
2017/9/7
柾木 政宗

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★★★★★



 【内容紹介】

 私はユウ。女子高生探偵・アイちゃんの助手兼熱烈な応援団だ。けれど、我らがアイドルは推理とかいうしちめんどくさい小話が大好きで飛び道具、掟破り上等の今の本格ミステリ界ではいまいちパッとしない。決めた!私がアイちゃんをサポートして超メジャーな名探偵に育て上げる!そのためには…ねえ。「推理って、別にいらなくない―?」NO推理探偵VS.絶対予測不可能な真犯人、本格ミステリの未来を賭けた死闘の幕が上がる!




 帯に「絶賛」か「激怒」しかいらない、と書かれてあったので、わたしは「絶賛」の立場を取らせていただきます。中途半端も良くないだろうと思い、★5つです。
 笠井潔氏にゴミ呼ばわりされた『六枚のとんかつ』ほどにはゴミではないです。というよりむしろポスト新本格ミステリを象徴するような自由度の高い本格ミステリで、作者が何をやりたいのかが明確であり、その趣向が前衛的である点から、しっかりした本格ミステリという印象を受けます。
 終盤に至るまでは、ロジックを封じられた探偵が犯人を特定する、という趣向の短編が並びます。「謎の論理的解決」を絶対条件とした本格ミステリにおいて、あえてそれを全くせずに犯人にまで到達するのは可能なのか、というひとつの問題提起であると同時に、変種のフーダニットとして読むことが出来ます。中には蘇部健一の亡霊(※生きてます)が取り憑いたかのようなオチであったり、バカミス倒れのオチだったりと、結末部分及び犯人に到達するまでのアクセスはバラエティに富んでいて、自由にやりながらも謎解きが使えない制約の中、かなりの労作感が漂います。
 これだけで終われば、玉石混交のメフィスト賞の中にあっては完全に「石」で終わるのですが、最終章において本作は真の姿を現します。
 論理的謎解きが、あくまで「補足」に回る世界は斬新です。そもそも本格ミステリとは、論理的謎解きという解決までの「プロセス」を重んじるジャンルです。その論理的謎解きを補足程度に後退させる本書は、一見すると「プロセス」を軽んじているかのように見えるのですが、それは全く逆で、一つの真実に向けて、数多の解法を提示させてみせている点で、むしろ「プロセス」を重んじていると言えます。それは多重推理だの推理合戦だのと、そういう「論理的推理」の枝分かれでは無く、「論理的推理」とは別の、プラス「アルファ」を提示している点で、本作は前衛的です。
 また作中において、「名探偵の成長」を描いており、その成長が最終推理に活かされる点も本作の特徴といえます。冒頭から最後まで天才を貫き通す探偵ではなく、短編(事件)を経るごとに、探偵はひとつずつ力を得ていきます。それらの力がすべて最終推理に活かされている点は、それまでのバカバカしいまでのやり方で解決まで導いた短編(事件)の存在が決して無駄では無かったことの証明でもあります。奇しくもロジック絶対主義者が、それまでのトンデモ探偵法を容認せざるを得ない瞬間がこの時訪れるのです。
 その論理的謎解きによる最終推理の果てに導かれる真犯人は、本作らしい意外性がしっかり備わっている点も高ポイントです。
 確かに本格ミステリとしての芯はしっかりとしたものを感じるのですが、芯がしっかりしてさえいれば何をやっても良い、というような最近の若手の本格ミステリ作家特有のとっつきにくさはあります。個人的には好きですが。でもオススメはしにくいです。
 もっと読んでみたいですね。作者はアイデアが豊富そうです。まだまだ我々が読んだことのないミステリのアイデアが作者にはありそう。次作にも期待です。
[ 2017/09/16 01:13 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

講談社文芸第三出版部編「7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー」 

7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー
2017/9/7
綾辻 行人 (著), 歌野 晶午 (著), 法月 綸太郎 (著), 有栖川 有栖 (著), 我孫子 武丸 (著), 山口 雅也 (著), 麻耶 雄嵩 (著), 文芸第三出版部 (編集)

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★★★★★

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 テーマは「名探偵」。新本格ミステリブームを牽引したレジェンド作家による書き下ろしミステリ競演。ファン垂涎のアンソロジーが誕生!

 ◆収録作

 麻耶雄嵩「水曜日と金曜日が嫌い --大鏡家殺人事件--」
 山口雅也「毒饅頭怖い 推理の一問題」
 我孫子武丸「プロジェクト:シャーロック」
 有栖川有栖「船長が死んだ夜」
 法月綸太郎「あべこべの遺書」
 歌野晶午「天才少年の見た夢は」
 綾辻行人「仮題・ぬえの密室」





 講談社ノベルスから『十角館の殺人』が出版されてから30年(=新本格ミステリ30年)の節目を記念したアンソロジーです。なんでも9月出版というところもタイミングを合わせているようです。
 京都の大垣書店で行われたトークショーでも我孫子氏らによって指摘されていましたが、収録作品の並び順が絶妙です。
 一番最後に収録されている、綾辻行人氏の「仮題・ぬえの密室」 は、本アンソロジーの総括になっているだけでなく、新本格30年を振り返る意味合いも持ち合わせています。
 また、個人的に読んでいて思ったのが、歌野氏の「天才少年の見た夢は」の収録位置が抜群に良いです。「人の心は往々にして非論理だ」という登場人物の想いが、ロジック重視の「船長が死んだ夜」 、「あべこべの遺書」の後においては、逆張りとなって逆転の構図となっているし、中心人物の子供の一人が未来に絶望する様子は、作家デビュー前の様子を描いた「仮題・ぬえの密室」とは全く逆の風景となっています。
 「天才少年の見た夢は」 の戦争を描き、希望の芽が摘まれていく物語には暗い印象があります。「船長が死んだ夜」 、「あべこべの遺書」の精緻な論理を否定し、絶望の淵へと落とす展開は「仮題・ぬえの密室」の前フリでしかなかったのだ、と言わんばかりです。

 個々の作品へと目を向けると、どの短編もそれぞれの作家の持ち味がよく表れたものばかりです。
 麻耶氏の「水曜日と金曜日が嫌い --大鏡家殺人事件--」は、個人的にメルカトル鮎の復活が嬉しいです。『黒死館殺人事件』ライクの作風は『翼ある闇』を彷彿させて懐かしいです。一人の人物の二筋の血飛沫、小窓が唯一の脱出場所である密室、密室内に侵入した巨体の人物、これらの謎を極めて単純なピースで解いてしまうのが鮮やかです。
 山口氏についてはキッド・ピストルズやトーキョー・サムは出版社の関係で無理だとしても、垂里冴子が読みたかったという想いが無いでもないのですが、「毒饅頭怖い 推理の一問題」は落語の「まんじゅうこわい」の本格アレンジとしてクオリティが高いです。フーダニットを描きながらも、フィニッシングストロークならぬサゲも冴えていて、シリーズでも1,2を争うクオリティなのでは無いかと思います。
 我孫子氏の「プロジェクト:シャーロック」はパソコンやインターネットによる集合知によって最強の名探偵シャーロック・ホームズを創るアイデアが面白かったです。クライマックスにおいて暗がりから姿を現す名探偵ならぬ名犯人にはぞくぞくしました。名探偵と名犯人の対決構図は、避けて通れない宿命であることを、先端技術によってシュミレートしてみせた作品です。
 有栖川氏の「船長が死んだ夜」は、トークショーでも話されていたとおり、まさしく通常営業の火村作品です。被害者が船長であるのが特徴的で、事件の真相を追うと同時に、彼の生前の“人となり”を探ることへも注力している点は『鍵の掛かった男』を彷彿とさせます。
 法月氏の「あべこべの遺書」 はいわゆる「自殺に見せかけた他殺」への新たなアプローチです。『キングを探せ』ばりの既存様式の複雑化は、謎をも複雑化していますが、最終的に無秩序に散らばった謎の数々が整然と一本の筋の通った真相に収束してくのは気持ちが良いです。
 歌野氏の「天才少年の見た夢は」は、地下シェルター内の殺人。戦火によってシャルターの外へは出ることが出来ず、あとは食料が尽きるのを待つのみ…という、わざわざ犯人が手を下す必要のないシチュエーションでの殺人事件です。本格によくあるこのような状況下での犯行動機にひとつの回答を示した斬新な作品です。探偵対犯人という個人対個人の構図に、戦争と国家権力というスパイスをふりかけることで、全く新しい名探偵像を示した作品です。
 綾辻氏の「仮題・ぬえの密室」は、真打登場、掉尾を飾るにふさわしい作品で、意外性を伴う真犯人をあの人でもあの人でもなく、この人にしたことが「新本格30周年」に綺麗にはまっています。

 ・事件の迷宮への入り口は時として探偵自身が開くものです(水曜日と金曜日が嫌い -大鏡家殺人事件-)。
 ・探偵の傍らには宿命的に犯人がいるものです(プロジェクト:シャーロック)。
 ・探偵と犯人は同じことを考えるが、探偵は自分のアイデアとしてそれを公にしないものです(あべこべの遺書)。


 「仮題・ぬえの密室」の登場人物である麻耶氏、我孫子氏、法月氏の三者の収録作が、示し合わせたかのようすべて布石になっているのが驚くべきところです。
 とくに「プロジェクト・シャーロック」にて示唆されたような、ある種の探偵と犯人による二人三脚的構図を、「仮題・ぬえの密室」のラストのようなかたちで新本格30周年の歩みと絡めて描いているのはたいへんに美しいと思います。

 大変面白いアンソロジーでした。あらためて新本格ミステリ30周年おめでとうございます。

新本格始まりの地、京都で新本格ミステリ30周年記念トークショーを聴きに行く旅。レポ 

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 こんにちは!
 管理人のウイスキーぼんぼんです。

 2017年9月9日に京都で行われた「5人の名探偵 新本格ミステリ30周年記念トークショー」に行ってきました。

 京都といえば京都大学、京都大学といえば京都大学推理小説研究会です。新本格ミステリのトップリーダーである綾辻行人先生の『十角館の殺人』はこの京都で生まれ、以降の本格ミステリ文壇に大きな影響を及ぼしました。その『十角館の殺人』が出版されてから今年で30年。大々的に京都でトークイベントが行われました。


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イオンモール KYOTO




 場所はイオンモール KYOTO Sakura 館4階の Koto ホールというところです。
 主催は大垣書店 KYOTO 店で、同じイオンモールKYOTOにある本屋さんです。


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大垣書店 KYOTO店

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 大垣書店 KYOTO 店にて講談社ノベルスの『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』を購入すると、イベント参加券がもらえるので、それを持って会場入りです。
 なんでも大変人気だったらしく、イベントは予約段階で満員御礼で、当日書店で本を買ってもイベントには参加できない状態でした。


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 実際のタイムテーブルとしては

 14:00~ 開場
 15:05~ 第一部開演 綾辻行人氏登壇、挨拶の後、有栖川有栖氏登壇
 15:40~ 小休憩
 15:50~ 第二部開演 法月綸太郎氏、我孫子武丸氏、麻耶雄嵩氏登壇
 16:30~ 終演→サイン入り『十角館の殺人 限定愛蔵版』お渡し会


 という流れでした。実質無銭イベントとしては内容充実です。

 わたしは、法月氏、我孫子氏、麻耶氏を生で見るのは初めてで、第二部あたりからテンションが上がります。思ったより法月氏はおっとりした喋り方で、逆に麻耶氏はキャピキャピしてました。


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 座席は全て指定席です。
 おそらく「アンソロジー」の予約・購入順で前から詰められたかたちです。

 席には何やらクリアファイルに入ったチラシが置いてありました。
 しおりかな?何に使うのかよく分かりませんが、記念なのでありがたくもらっておきます。

 客層としては女性が多かったですね。割と若い方も。男性は近所の大学のミステリ研究会と思しき人がちらほら。新本格30周年をリアルタイムで享受したと思しき40歳以上はなんだか少なかったです。





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 以下簡単にレポートです。全て記憶をもとに書いているので、間違いはご容赦ください。
 また今回のトークイベントには取材が入っているため、正確なレポート、もっと簡潔にまとまったレポートをお求めの方は公式発表までお待ち下さい。


 ↓↓↓




 【1】前説・挨拶

 まず、先にも書いたとおり綾辻行人さんが単独で登壇です。
 客席から拍手が上がります。
 柄物の結構派手なジャケットをお召になられていて目立ちます。

 わたしは最近になって大垣書店という書店を知ったのですが、京都では昔からある結構老舗らしく、京都では力のある書店なんだそうです。最近も大垣書店限定のハヤカワ文庫のカバーがかかっているのを見かけて、すごいな~と思っていたのですが、綾辻行人さんも子供の頃からこの大垣書店に通っていたのだそうです。
 綾辻さんは当時、桂駅の近くに住んでいたようで、その近くの大垣書店をよく利用していたそうです。そういうむかしから馴染みのある大垣書店と、この新本格30周年という節目の今年に、一緒に何かやりましょう、ということで実現したのが今回の「5人の名探偵 新本格ミステリ30周年記念トークショー」なんだそうです。

 綾辻さんは当時『十角館の殺人』の出版にあたって、欠かすことの出来なかった人物を5名あげられました。

 1.小野不由美さん
 2.島田荘司さん
 3.竹本健治さん
 4.磯田秀人さん
 5.故宇山日出臣さん


 です。まず真っ先の奥さんの小野不由美さんの名前を上げられていました。
 そして冒頭にてこの5名に感謝の言葉を述べられてから、引き続いて有栖川有栖さんの登壇となります。





 【2】綾辻&有栖川

 何やらマイクの調子が悪いらしく、有栖川さん「我々はボソボソ喋るから聞こえにくいかもしれません」「声を張っていきましょう!」と会場を沸かせます。
 このトークショーは、基本的に綾辻行人さんが進行役をつとめていて、その他の登壇者に話を振ったり質問をしたりという流れです。
 まずは有栖川さんのデビューの様子を、綾辻行人さんのデビューと絡めて話されました。
 どちらもデビュー作出版の経緯は似ていて、いくつかの出版社をたらい回しにされた後、最終的に綾辻さんは講談社の宇山さん、有栖川さんは東京創元社の戸川安宣さんの目に留まってデビューを果たします。綾辻さんの場合はハッキリと「角川書店と光文社に蹴られて「十角館」を講談社へ持っていった」と出版社名まで明かしていて、有栖川さんが苦笑いです。
 有栖川さんは「乱歩賞に持っていこうか悩んでいる」と戸川さんに相談したこと、綾辻さんについて言えば「島田荘司さんから「今のままでは「十角館」を世に出すのは難しい。30歳までは習作を重ねるべきだ」と言われた」といった細かいエピソードも語られました。
 『十角館』について言えば、初稿から出版までにかなりリメイクされたらしく、初稿は、

 ・プロローグとエピローグが無い
 ・そのため冒頭でいきなりエラリィが「ミステリとは~」と一席ぶつ
 ・十角館の十角形のカップ無し
 ・十角館の地下室無し
 ・結末は折原一的な「この原稿を乱歩賞に送ろう」的なメタ落ち


 などなど、初めて聞くエピソードが飛び出します。


 本格冬の時代と言われていた当時、鮎川哲也さんなどは雑誌などへ連載していたものの、「本格を書く新人」というのは圧倒的に少なかったようです。いずれにしても本格ミステリの受け皿は小さかったようです。
 そのため、当時綾辻行人さんのデビューを目の当たりにして、有栖川さん「綾辻さんがデビューしたことで、自分の席が埋まったのではないか」と心配されていたというのが意外でした。嬉しさ半分、悲しさ半分という感じだったらしく、そこまで本格ミステリの需要はなかったのか、と驚きます。




 ◆デビューしてから一番印象に残っていること(有栖川有栖さん)
 有栖川さんは「浮かばない!」とまず答えていたのですが、改まって「自分の作品が本になったこと」とおっしゃっていました。そして「今、自分が作家をやっていること。次はどんな作品を書こうかな、とあれこれ思い巡らせていること」と作家であることに喜びを感じているとも。「推理作家協会賞をもらった、本格ミステリ作家クラブができた、海外に自分の作品が紹介された、といった嬉しい出来事はこれまでたくさんあったが、自分の本が出て、本屋さんに並んだことが一番であるのは絶対に変わらない。別次元の出来事だ」と声を強くして言われていました。

 ◆推理作家になりたい!と思ったのは?
 綾辻さん、有栖川さんともに11歳とか。
 綾辻さんは乱歩作品にあこがれて、有栖川さんはホームズにあこがれて。
 綾辻さん曰く、有栖川さんのホームズフリークぶりはすごいものがあるらしく、以前テレビ放送された『バスカヴィル家の犬』の読書会では、名探偵よろしく、自分の推理を披露するほどであると話されていました。




 【3】小休憩
 10分休憩です。





トークショー



 【4】5人の名探偵

 綾辻さん、有栖川さんが引き続き登壇し、綾辻さんに呼ばれて、法月綸太郎さん、我孫子武丸さん、麻耶雄嵩さんが順番の登壇です。デビュー順です。

 まず3名のそれぞれの挨拶から第二部が始まりました。

 ◆法月綸太郎さん挨拶
 デビュー当時、法月さんが銀行に就職していたのは、わたしも何かの本で読んだことがあります。その本には、電卓という文明の利器があるのにそろばんを使わせる上司に嫌になって辞めた、言ったようなことが書かれてあったのを覚えているのですが、やっぱり相当に嫌だったらしく、麻耶雄嵩さんが「京大推理小説研究会の例会にしょっちゅう来るんですけど、そのたびに銀行の愚痴ばっかり言うんですよ」と暴露します。
 当時勤めていた銀行の支店のすぐ近くに我孫子武丸さんの家があったらしく「お前はまだ銀行を辞めないのか」と言われたり、宇山日出臣さんからも、次の本を書くようにとせっつかれていたこともあったようで、結局銀行は辞職して、一旦故郷の松江にもどって2作目『雪密室』を書いて、再び京都へ舞い戻ってきた、と当時のエピソードを語ります。

 結構長く続きそうだったので、ここで綾辻さんから「巻き」が入ります。


◆我孫子武丸さん挨拶
 あっさりした挨拶でした。
 綾辻行人さんからも冒頭の挨拶に名前が出た磯田秀人さんについて触れられました。なんでも磯田氏は作家のマネジメントをされていたらしく、講談社へ我孫子さんを斡旋してデビューされたことを話されていました。
 『かまいたちの夜』がヒットするとは思わなかった、ということも。「字を読むゲームなんて…」と意外であったことを言葉にされ、「ヒットした自作は可愛くない」「親孝行だ」という自己流の価値観を披露します。


 ◆麻耶雄嵩さん挨拶
 他の4名に比べてドラマチックな展開はないのですが…と断りを入れた後で、京都大学推理小説研究会の機関紙「蒼鴉城」に掲載した「 MESSIAH(メサイア)」が宇山日出臣さんの目に留まり、長編(翼ある闇)に書き直してデビュー。ちょうど就職しようか作家になろうか悩んでいた頃らしく、書店に自分の本が並んでいるのを見て「自分の学生時代には意味があったのだな」とカッコイイことを言います。


 いずれの方の口からも、宇山日出臣さんの名前が頻繁に出てきたのが印象的でした。





 ◆一番好きな作品(麻耶雄嵩さん)
 『メルカトルと美袋のための殺人』
 理由としては、長編の場合、大風呂敷を広げすぎて、初期の構想を段々妥協してまとめに入る。一方短編は、自分が思った通り完結まで迎えることが出来る。とのことです。

 ◆一番好きな作品(我孫子武丸さん)
 『狩人は都を駆ける』
 好きな作品、すなわち我孫子さん流に言えば「良く出来た割にあまり売れなかった作品」ということになります。
 『狩人は―』は『ディプロトドンティア・マクロプス』の続編で、その『ディプロトドンティア』は我孫子さんが学生時代に書いた最初の作品だったんだそうです。法月綸太郎さん曰く、当時の『ディプロトドンティア』を読んで「すごい才能だ!」と推理小説研究会内ではものすごく盛り上がっていた作品なんだそうです。その『ディプロトドンティア』が出版される際には、「ついに“あの”ディプロトドンティアが出るぞ!」と内輪では話題になったそうですが、読者の反応はイマイチ。読者の盛り上がりの無さから「青春の思い出を汚されたような」想いになったとか。
 すみません『ディプロトドンティア・マクロプス』再読してみようと思います。

 ◆一番好きな作品(法月綸太郎さん)
 『頼子のために』
 麻耶雄嵩さんの『翼ある闇』と同じく、機関紙「蒼鴉城」に載せたものを長編化したもの。出版された時に「やっと一人前になったのだな」と。
 わたしは初耳だったのですが、今年の年末に新装版で『頼子のために』が出ると、このとき告知がありました。
 自分も『頼子のために』が一番好きな作品なので、ぜひ購入しようと思います。

 ◆一番好きな作品(有栖川有栖さん)
 『乱鴉の島』
 麻耶さん→我孫子さん→法月さんの順で「一番好きな作品」を言っていったのですが、有栖川さん、まず「自分の好きな作品、だなんてこんなバカげた質問、よく答えるな~(笑)」と出題者の綾辻さんを腐して会場を沸かせます。
 『乱鴉の島』は、自分が思ったように書けた作品で気に入っている一方で、「殺人はなかなか起こらないし、ロジックや動機なども地味だ」というイマイチな読者の反応に対して「この作品の魅力はオレしか分からんのやろうな~」「これは間違いなくオレが書いた小説や、という本」と強烈プッシュします。

 ◆一番好きな作品(綾辻行人さん)
 『暗黒館の殺人』
 こういう質問にはこう答えるようにしている、そうです。
 有栖川さんから「こう答える、って!」とツッコミが入るのでした。




 ◆『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』執筆について(麻耶雄嵩さん)
 テーマが「名探偵」ということで、デビュー作のメルカトル鮎を登場させた。何も考えずに書こう、という気持ちで執筆に当たった。

 ◆『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』執筆について(我孫子武丸さん)
 自分はこれまでの作品に「探偵役」は用意したが、いずれも「名探偵」ではない。鞠夫くんくらい?でも人間じゃないし、ということで、名探偵を登場させずに、名探偵を書いた。
 アンソロジーは全て読んだが、みんなすごく若い。ベテランなんだけど、みんな学生のままここまで来ている、とも話されていました。
 綾辻さんの「仮題・ぬえの密室」に対しては「反則だ!」とも。アンソロジー全体がこの30年の懐古となっている、とアンソロジー全体の魅力についても話されました。

 ◆『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』執筆について(法月綸太郎さん)
 法月さんの場合は「名探偵」テーマは「法月綸太郎でお願いします」と出版社から指定があったそうです。
 なんでも5年ぶりくらいの法月シリーズらしく、書き方を思い出しながら書いたとか。
 結果として「通常営業感」が出来上がったものにはあるそうです。

 ◆『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』執筆について(有栖川有栖さん)
 法月綸太郎さんと同じく「通常営業」。
 講談社でシリーズ展開させた火村で行こう。とにかくプレーンで、皮肉を効かせることもなく普通の本格を目指したそうです。

 有栖川さんが我孫子さんの言葉を受けて「みんな昔と変わらない。一歩も進んでいないのでは無くて、読者へ届けたいものは昔と一緒」と話されていたのが印象的です。

 最後に有栖川さんは「なんで「ヌエ」なの?」と綾辻さんの収録作品について質問します。
 綾辻さん曰く「京極夏彦さんの京極堂シリーズの最新作から~」ととぼけてみせます。
 有栖川さんは「ヌエ(NUE)を縦に並べて、Eを90度傾けると宇山(U山)になる、とかそういうのではないの?」と指摘してみせて会場をどよめかせるのでした。





 今回のトークショーは綾辻さん、法月さん、我孫子さん、麻耶さんの4名が京都大学出身で、有栖川有栖さんがひとり同志社大学出身と偏った結果になったのですが、そんな京都大学の推理小説研究会に対して、有栖川さん「創作集団」「読書サークルなのにふつうあんなに創作しないですよ!」と述べるのが印象的でした。
 綾辻さんも「京都大学推理小説研究会は30年経った今でも、みんな仲良いですよ。ワセダミステリクラブなんかみんな仲悪い」と言ったりして、会場をヒヤヒヤさせるのでした。





 【5】サイン入り『十角館の殺人 限定愛蔵版』手渡し会

IMG_1885.jpg
『十角館の殺人 限定愛蔵版』
早速中身を確認してみましたが文庫改訂版と同じく「あの一行」がきちんとページを捲った最初に来ていました!すごい!



 トークショーが終わった後は、綾辻行人さんから直接サイン入りの『十角館の殺人 限定愛蔵版』を受け取って、会場を後にするのでした。
 『十角館の殺人』は、自分にとっては本当に大切な一冊で、この作品がなければ、本格ミステリの面白さを知ることもなかったし、本格ミステリにはまることも絶対になかったと思います。「あの一行」には生涯忘れ得ない衝撃を受けました。
 新本格30年の節目に、このような素晴らしいトークショーを聴けたことに感謝します。
 素敵な時間をありがとうございました。


IMG_3172-2.jpg
ちなみに『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』のしおりガチャは
法月綸太郎さんのが当たりました。「発情したモリアオガエル」!『密閉教室』の一コマ。
一番欲しかったやつです。普通に嬉しい。




 【関連リンク】
 大垣書店 | 京都府下を中心に35店舗を展開して70余年
 http://www.books-ogaki.co.jp/
 30th anniversary 新本格ミステリ30周年
 http://book-sp.kodansha.co.jp/shkm30/

[ 2017/09/09 23:25 ] 【おでかけ】 | TB(0) | CM(0)

芦沢央「バック・ステージ」 

バック・ステージ バック・ステージ
2017/8/31
芦沢 央

商品詳細を見る

★★★☆☆



 【内容紹介】

 新入社員の松尾はある晩会社で、先輩の康子がパワハラ上司の不正の証拠を探す場面に遭遇するが、なぜかそのまま片棒を担がされることになる。翌日、中野の劇場では松尾たちの会社がプロモーションする人気演出家の舞台が始まろうとしていた。その周辺で4つの事件が同時多発的に起き、勘違いとトラブルが次々発生する。バラバラだった事件のピースは、松尾と康子のおかしな行動によって繋がっていき…。




 『小説 野生時代』に掲載された短編四編に、冒頭の『序章』と末尾の『終幕』の二編の描き下ろしを加えて、総タイトル『バック・ステージ』とした一冊です。
 『序章』と『終幕』で描かれる物語が、位置づけとしては表舞台、あるいはステージ上で起こっている物語と捉えることができ、雑誌掲載されたそれ以外の四編がその表舞台に対するバックステージにあたります。短編四編はいずれも独立した作品として読むことが可能なのですが、『序章』があるたがめに、一つの物語として共鳴し合います。なかなか力技を感じる数珠のつなぎ方なのですが、これが割と上手くて「連作短編集」として新たな輝きを放つことになります。雑誌連載時から追いかけている読者にとっては、一段大きな驚きを体験できることでしょう。なぜなら、雑誌掲載時にはステージ上で演じられているかに思われた物語が、単行本と化して連作短編集として読む時、それらがステージ裏へと後退することになるからです。
 収録作品いずれの短編も、終盤になると「なるほど、そうきたか」と合点がいって、綺麗に筋が通って納得するものばかりです。この「なるほど、そうきたか」という言葉は、実は主人公の口癖でもあり、主人公とおんなじことを読者もつぶやくことになるのです。このようなミステリの造りは大変に巧妙です。そして巻末の『終幕』を読み終わった時、全ての物語がつながり一つの結末を迎える時には、やっぱり「なるほど、そうきたか」とつぶやきたくなるのが面白いですね。


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 タイトルの『バック・ステージ』が象徴するように、なんと本書のカバー裏にはひとつの掌編が掲載されています。
 本の帯には「本を買った人だけが「すぐに」「必ず」読める」と書いてあります。
 確かに、図書館などだと、カバーが表紙にくっつけてあったり、カバー自体がなかったりする場合が多いので、「買った人だけが~」というこの趣向は面白いかもしれません。
 内容的には、本書を読み終わってから読むのが良いでしょう。本書に登場するあるキャラクターにスポットが当たった掌編のため、知らず知らずのうちに登場人物のファンになっていたことが分かります。
 登場人物たちは魅力的で、短編ミステリとしてはストンと落ちる結末が切れ味良く、連作短編集としては全てがつながる美しさと悪を討つスッキリで読後感が良く、たいへん魅力あふれる一冊でした。

[ 2017/09/08 02:32 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
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嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社
・上野東照宮

【神奈川】
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院(鎌倉大仏殿)
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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