読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

柄刀一「或るギリシア棺の謎」 

或るギリシア棺の謎或るギリシア棺の謎
2021/2/23
柄刀 一 (著)

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 美希風とエリザベス、ふたりにとって縁の深い篤志家の安堂朱海の訃報が届いた。高齢で長く闘病していた彼女だったが、自殺あるいは他殺の疑いが浮上する。誰が、難のために? 実業家一族を覆う呪われた宿命を、精緻にして過剰な論理的推理が解き明かす、圧巻の本格推理!




 南美希風シリーズの最新作で、前作『或るエジプト十字架の謎』に続く「国名シリーズ」第二作です。本作は前作と違って長編作品です。
 初期の柄刀一を象徴する物理トリックなどはすっかり影を潜めており、400ページ弱の長編を、ひたすら論理的謎解きのみで支えきってしまっているのが圧巻です。ただ「論理的謎解きのみ」というのは褒め言葉でもあり、少し残念なところでもあります。かつての『密室キングダム』などは、タイトルに「密室」と銘打ちながらも論理的謎解きの密度は極めて大きく、トリック×ロジックの我が国を代表する本格ミステリである、というのが個人的な評価なのですが、その『密室キングダム』やたとえば『ゴーレムの檻』が発表された当時のような、作中から溢れ出す爆発的なエネルギーや、神をも畏れぬスケール感、トリックがロマンとなりドラマを生み、トリックによって読み手の心を揺さぶる、あの柄刀一氏にしか描き得ないような本格ミステリの魅力は、残念ながら本作からは一切感じられませんでした。
 クイーンを彷彿とさせる阿津川辰海氏の『蒼海館の殺人』がリリースされた直後というのもある意味タイミングが悪くて、本作『或るギリシア棺の謎』はトリックからロジック重視の作風に転向した勝負作であると想像できるのですが、若手の『蒼海館の殺人』と正面衝突して、まず一読者のわたしが感じたのは、柄刀一氏のベテランとしての貫禄では無くて、若手との世代交代の時期が来てしまったのだな、ということです。かつては「無冠の帝王」として評されていた時期もありましたが、いよいよ「無冠」のまま終わってしまいそうな終息感が漂っており、デビュー当時から追っていたわたしとしては、この勢いの衰えはただただ残念です。

 根本的に長大な論理的謎解きに見合うような魅力的な謎が中心に無くて、ひょっとしたら『或るエジプト十字架の謎』のような中編作品を、執筆途中で長編化したのではないかと勘ぐりたくなるような造りをしているのがまず第一印象です。
 自殺か他殺か、どこまでが犯人の狙いか、偽の手がかりか偶然か、といった細かいところまで、根っこの部分から洗い直して、論理的謎解きによって、最終的に一人の真犯人まで到達してしまうのは見事です。犯人もたいへん意外性があり、フーダニットしての出来は極めて良好です。しかし一方で、細かい精査が多いため、論理的謎解きのボリュームに比して、段階的に明らかになる真相の意外性の割合が小さく、本格ミステリとしてはあまり楽しくわくわくするような読書体験は得られませんでした。

 国名シリーズまだ続けるのでしょうか?
 ファンとしては「三月宇佐見」シリーズの新作で、今一度柄刀一氏の実力を見てみたい(確認したい)のですが。
 「柄刀マジック」また見せてください。
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[ 2021/03/01 23:56 ] 柄刀一 | TB(0) | CM(0)

阿津川辰海「蒼海館の殺人」 

蒼海館の殺人蒼海館の殺人
2021/2/16
阿津川 辰海 (著)

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★★★★★



 【内容紹介】

 学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。

 政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。
 名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、
 激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。

 刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも――夜は明ける。
 新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。





 文句無しの大傑作です。面白かったです。個人的に作者の現時点での最高傑作です。
 <館四重奏>シリーズの第二作目にあたる作品で、「火」を題材にした『紅蓮館の殺人』の続編にあたります。
 本ミス一位の『透明人間は密室に潜む』であるとか、シリーズ前作の『紅蓮館の殺人』であるとか、面白くは読めたものの、いまいち何をしたいのかよく分からない部分があって、ピンとこなかったのが正直なところなのですが、本作は「名探偵」の在り方を問う、本シリーズのテーマと言うべきものや、災害によるクローズドサークルの必然性などが比較的分かりやすく、かつスッキリと描かれているのが特徴です。そのためか、これまでの作品に感じたモヤッとしたものが少なかったように思います。
 デビュー作の『名探偵は嘘をつかない』や、続く『星詠師の記憶』やなどのような、手に手を尽くして趣向を描ききって、結果ごちゃごちゃしたものになった、というような事もなく、デビュー当時から追いかけていた一読者としては、本格ミステリ作家としてかなりの成長が見られた作品です。

 本作は「名探偵」再生の物語でもあり、「名探偵」が地に堕ちる前作の『紅蓮館の殺人』は予め読んでおいたほうが良いです。
 名探偵の苦悩を描く点や、館が火事に巻き込まれる『シャム双生児の謎』的な展開などと併せて、エラリー・クイーンを彷彿するな、と言う方が無理であった前作『紅蓮館の殺人』ですが、本作ではよりそのエラリー・クイーン感が研ぎ澄まされた印象を受けます。
 『シャム双生児』に変わって『オランダ靴』を彷彿とさせる謎解きもさることながら、「名探偵」覚醒後――物語半分を超えたあたりで展開される「五組のホームドラマ」という捜査趣向が抜群に良かったです。もはや作者自身にエラリー・クイーン(ダネイとリー)が憑依したんじゃないか、と錯覚してしまいそうなほど驚くべき探偵方法で、意外な人間関係や関係者の思考回路に段階的に言及しつつ、事実を徐々に明らかにしながらも、最後の最後まで真犯人の正体は伏せた状態――つまりなんやかんや細かい謎は大量にあるけれども、最大の謎は犯人の正体こそである、というフーダニットを際立たせた展開が本格ミステリの造りとして極めてポイントが高いです。
 そんなフーダニットを全面に押し出した捜査過程の中、タイムテーブル上どうあがいても犯行機会無しのその中から、たった一つの手がかりを辿って、暗がりの中に潜む犯人の尻尾を掴んでしまう展開はゾクゾクします。
 そしてクライマックスにおいて、真犯人と名探偵が遂に正対した瞬間、ああ、この物語は紛れもなく名探偵による犯人との対決、そして関係者の救済を描いたヒーローの物語であったのだな、と読者自身が実感できてしまう演出、幕引きは印象的です。素晴らしい作品でした。

[ 2021/02/24 02:36 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

小島正樹「怨み籠の密室」 

怨み籠の密室怨み籠の密室
2021/2/10
小島正樹

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 大学生の飛渡優哉に故郷の謂名村は禁断の土地だった。
 しかし、父が死に際の言葉を聞いて、病死した母は殺されたのではないかと思い、謂名村を訪れる。
 だが、待ち受けていたのは首吊り死体だった――。
 完全密室の謎を解いた果てに見えてくるのは、悲哀に満ちた家族の物語。
 探偵・海老原浩一シリーズ最新作!




 海老原浩一シリーズ最新作で、今作は文庫書き下ろし長編です。
 トリック連発の「やりすぎ」感が作者の十八番でありましたが、最近は幾分その勢いを潜めていて、本作もあまりそのような「やりすぎ」感は感じられませんでした。ただそれに反比例してスッキリとした味わいは大きく、「文庫書き下ろし」という点でも良いボリューム感ではないかと思います。
 タイトルに有る「怨み籠の密室」が堂々たる謎になっており、不可能密室が都合2件発生します。物理トリックあり心理トリックありで、トリック自体もネタかぶり無くバラエティに富んでいるのですが、中でも謂名稲荷神社本殿にて炸裂した密室殺人が圧巻。目撃者の目の前で次々と不可能現象が展開されていくのは、演出という点で上手く、これぞ小島正樹節、待ってましたと言わんばかりの展開です。
 本作の場合は、密室トリックのハウダニット以外にも、ホワイダニットにも力が入っていて、「怨み籠」という言葉が示す真実と、事件関係者たちの過去、そして犯人が家族のために取った行動と、知らず知らずのうちに家族を追い詰めてしまったある人物の行動――悲劇的な家族の物語も見どころです。そんな関係者であり友人でもある飛渡優哉の、心情をサポートする名探偵の海老原浩一は、トリックの種明かしをするためだけの「装置」に留まっておらず、人間味にも溢れています。読んでいると、なんだか人の内面を鋭く察し、弱者に優しい、島田荘司氏の描く名探偵・御手洗潔と重なって見えたのは気のせいでしょうか。

[ 2021/02/18 00:10 ] 小島正樹 | TB(0) | CM(0)

映画「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション デラックス吹替版」 

シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション デラックス吹替版シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション デラックス吹替版
1時間31分
2019

フィリップ・ラショー (出演, 監督), エロディ・フォンタン (出演)

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★★★★☆



 【内容紹介】

 ボディーガードや探偵を請け負う凄腕のスイーパー「シティーハンター」こと冴羽獠(山寺宏一)は、相棒の槇村香(沢城みゆき)と日々様々な仕事を受けている。ある日、掲示板に「XYZ」書かれた新しい依頼。その依頼人の男ドミニク・ルテリエ(土師孝也)から獠と香は、仕事の話を聞く。それは、ルテリエの父が開発した<香を匂った者を虜にする「キューピッドの香水」>を悪の手から守ってほしい、という依頼だった。香水の効果を信用しない獠は、香に香水を吹きかける。香が効果を試すため歩き出した瞬間、現場を爆風が襲う!獠が一瞬の出来事に気をとられた隙に、「キューピッドの香水」はバイクに乗った男に奪われてしまう!!しかも、奪い去ったのは、獠の旧友であり、元傭兵の海坊主(玄田哲章)だった……!?





 かつて1980年代後半に『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『シティーハンター』の実写映画化です。邦画ではなくて、フランス映画です。
 個人的に『シティーハンター』は微妙に世代ではなくて、アニメも漫画も見たことがないのですが、なにぶん人気作品のため漏れ伝わってくる情報は多く、なんとなくどういう作品なのか把握している程度です。『シティーハンター』世代となると、結構年いってる方が多いと思うのですが、わたしのようにあまり知らない世代でも楽しむぶんには問題ありませんでした。
 しかし四六時中、頭の中を「もっこり」が占めている冴羽獠を主人公にした作品の実写映画なので、セクシー要素もガンガンに実写化されているため、家族で観るのには少し不向きかもしれません。
 フランス人が演じる冴羽獠はけっこう違和感が無く馴染んでおり、むしろ外国人特有の「ジョーク」や「ユーモア」のセンスが、冴羽獠にぴったりです。ひつこいくらいの「もっこり」が、ピンチになると一転、表情がガラリと変わってイケメンになるギャップは十分に楽しめます。
 クライマックスであきらかになるミステリとしての仕掛けも、あるっちゃあるのですが、強力なサプライズには結びついておらず、あまり「ミステリ映画」として見ないほうが吉です。コミカルな演出とギャグの実写化を楽しむほうが良いです。原作ファンは細部のこだわりに気づくだろうし、原作をあまり知らない視聴者でも十分に楽しめる内容です。
 特にカメラワークが凝っているのが印象的で、中盤の主観視点での殺陣はそれだけで映像作品としての見応えもあり、非常に楽しく観ました。
 アマゾンレビューを見ると、原作愛の伝わってくる映画であるとの評が多くあり、調べてみると、『シティーハンター』ってフランスでもかなり人気の作品なんですね。日本からではなくフランスからこのような愛あふれる実写映画が出てきたのは嬉しくもあり、何故日本からではないのだ、と残念な感じもします(ジャンプ漫画の我が国の実写映画『ジョジョの奇妙な冒険』第三部と比較せずにいられません)。

 ちなみにAmazonのプライムビデオで視聴可能な「デラックス吹替版」では、冴羽獠を山寺宏一さん、槇村香を沢城みゆきさんが演じている他、脇役の多くを神谷明さん(!)が担当しており、アニメ感覚視聴できるのも良いと思います。
[ 2021/02/15 19:00 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)

安萬純一「星空にパレット」 

星空にパレット星空にパレット
2021/1/20
安萬 純一

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 九重高校の浩介たちが探偵部を創設させてまもなくの放課後、黒ずくめの男が合宿費を強奪していった。あまりの足の速さに、誰もが追いつけない。味をしめたのか数日後に、再び登場した黒ずくめの犯人は、逃げ込んだ倉庫で他殺体として発見される――。学園ミステリ、嵐の山荘ものなど、二転三転するフーダニットとハウダニット! 鮎川哲也賞作家・安萬純一が、本格ミステリの粋を星空のごとく詰め込んだ、全四編収録の短編集。文庫書き下ろし。




 最近では『滅びの掟――密室忍法帖』が本格ミステリ大賞候補作となったのが記憶に新しい、鮎川哲也賞受賞作家の安萬純一氏による短編集。かなりの本格派の作家ですが、いまいちどんな作品を書いているのかよく分からない、という読者には本書がぴったりで、文庫書き下ろしの文庫発のノンシリーズ短編集です。
 収録作品は全四編ですが、舞台は嵐の山荘、学園ミステリ、さらに作中作を導入したメタミステリといったものまで様々で、さらに謎についてもフーダニットとハウダニットを軸にしながら、衆人環視の密室、物理密室、叙述トリックにアリバイ考察、さらに所謂「狂気の論理」といったホワイダニットの面白さを有するものまでバラエティに富んでおり、「本格ミステリ」としてかなり網羅的に題材が扱われています。
 フーダニットとしてのフェアプレイはさすが鮎川賞作家といったところで、特に第三話「谷間のカシオペア」にはその点関心したものの、全体的に要となる部分で力を抜きすぎているというか、けっこう肝心な部分で安易な処理が行わているのが気になりました。
 例えば一人では不可能だから実はもう一人関わっていた、であるとか、ロープ一本では無理だからもう一本あったのだ、であるとか、漠然と「遠隔操作」してました、であるとか、決定的証拠の入手方法を「警察の協力で手に入れた」と一言で終わらせてしまったり、このような入念な手続きが行われないまま問題解決を図った点が、かなりの点数見られたのが、本格ミステリとして個人的には気になるところでした。
[ 2021/02/14 03:17 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

アンソロジー「ステイホームの密室殺人 1 コロナ時代のミステリー小説アンソロジー」 

ステイホームの密室殺人 1 コロナ時代のミステリー小説アンソロジー (星海社FICTIONS)ステイホームの密室殺人 1 コロナ時代のミステリー小説アンソロジー (星海社FICTIONS)
2020/8/19
織守 きょうや (著), 北山 猛邦 (著), 斜線堂 有紀 (著), 津田 彷徨 (著), 渡辺 浩弐 (著)

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 緊急事態宣言からの「ステイホーム」のかけ声とともに一瞬で変わってしまった日常を舞台に、ミステリー界の珠玉の才能たちが競演する「ステイホームの密室殺人」!




 昨年の8月中旬にリリースされたアンソロジーで、コロナ禍の「いま」を題材にした非常にタイムリーなアンソロジーです。
 昨年に緊急事態宣言が発出されたのが、4月7日から5月25日のことで、そこから本書が出版された8月まで、日にちがやたらと短いのですが、すべて描き下ろしで揃えたのはフットワークが軽いです。今しか書けないテーマでもって、作品をかき集めてアンソロジー2冊を作ったのはさすが太田克史氏!といった感じです。
 ただ、アンソロジーを構成するだけの作品の頭数は揃っているものの、一作一作を見ていくと、結局のところ「外出自粛(ステイホーム)」=「密室」という解釈が大多数を占めており、本格ミステリ的な解釈の「密室殺人」とリンクさせた作品が殆どない、というのが肩透かしを受けます。
 その中で、「外出自粛(ステイホーム)」=「密室」という視点を逆転させ、密室となっているのは屋内ではなく屋外の方である、という解釈のもと、内と外の逆転を描いてみせた渡辺浩弐氏の「世界最大の密室」が抜群に良かったです。まさか国民全員が引きこもりを推奨される世界が来るとは思いもしなかったし、そのような世界の中で生きて、初めて心に芽生える感覚であるとかが、読み手に対しても大きな説得力を生んでいます。「外」の人間が、そのテンションをそのまま「内」に持ってくる、というような感覚はなるほどと思ったし、その対比として生まれるゴーストタウン化した「外」の世界であったりは、まるで夢とも幻想とも思える光景です。そして、そのような光景がそのまま「内」へと流入した時に発生する殺人事件が、ミステリの展開として抜群に美しいです。床をアレするとか殺人実効可能度は極めて低いと思うのですが、「ステイホームの密室殺人」という本書のテーマが、一番刺激的に解釈された作品だと思います。
 このコロナ禍で、ステイホームを体験してみて味わう感覚であるとか、作中の登場人物の言葉を借りて、作者の想いもなんとなく感じ取れるのも面白いところです。非常にタイムリーなアンソロジーだし、読者みんながステイホームを意識しているこの時代、同じようにコロナ禍を生きる登場人物たちの胸中も理解しやすいと思います。まさに今が旬、今読むのが一番面白く読めるアンソロジーだと思います。十年、二十年経って本書を読むと、彼らの考えや行動が、読者にとって意外と理解し難いことになっているかもしれません。

三津田信三「死相学探偵最後の事件」 

死相学探偵最後の事件死相学探偵最後の事件
2021/1/22

三津田 信三 (著)

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★★★★☆



 【内容紹介】

 黒術師の居所を探し、候補地である孤島に渡った黒捜課のメンバーと、俊一郎と祖父母たち。そこで待ち受けていたのは、どこか奇妙な言動のスタッフたちと、次々と発生する不可解な連続殺人事件だった――。




 <死相学探偵>シリーズ完結作です。
 いよいよシリーズ全編を通したラスボスである黒術師がその姿を現すだけでなく、彼との最終決戦も描かれます。
 孤島を舞台にした連続殺人という、ミステリファンをくすぐる要素が有るばかりでなく、シリーズファンにとっても歓喜する内容になっているのが注目です。まず、その孤島に招かれたメンバーというのがめちゃくちゃ豪華。最終決戦へ臨むにふさわしい、さながらRPGのパーティーのような様相を呈しており、この最強パーティーが孤島で数々の謎や仕掛けを解きながらな黒術師の行方を探します。
 謎解きは謎解きと言っても、刀城言耶シリーズのような論理的謎解きを描いた本格ミステリというよりは、RPGやアドベンチャーゲームのような、マップの仕掛けを解いて次のステージへと進む、といったそういった謎解き要素が強い作品で、仕掛けを解いた果てに現れるラストダンジョンの如き黒術師の棲家は、まさにゲームでよく見るようなステージ。シリーズ総決算にふさわしい雰囲気を湛えていて、テンションが上ります。
 孤島の連続殺人についても、衆人環視の密室であったり、ストレートな完全密室であったりと不可能犯罪ばかりが作者らしく、さらに「三つの無意味」をキーワードに謎解きを試みる展開などは凝っていて、プチ刀城言耶シリーズの如き展開です。とはいえ刀城言耶のような重量級のロジックを見せることはせず、あくまでシリーズファンのためのファンサービスのような真相にシフトしているのは本シリーズらしく、刀城言耶シリーズとの差別化という点でも成功しているのではないかと思います。
 この「死相学探偵」シリーズの読者というのは、おそらく「刀城言耶」シリーズの読者よりもずっとずっと若い人間を想定しているのではないかと思います。「刀城言耶」シリーズというと、おどろおどろしい表紙に分厚い作品ばかりで、しかも国内一位に君臨する『首無の如き祟るもの』は超重量級のロジックが描かれており、どっちかというと読む人を選ぶ作品だと思います。そういった三津田信三氏の作品群のなかで、こういったティーン向けの若い読者に受けそうなシリーズを軽視せず、きちんと完結させ、ものにしてみせた点は推理作家として株を上げたと思います。

[ 2021/02/01 19:22 ] 三津田信三 | TB(0) | CM(0)

映画「事故物件 恐い間取り」 

事故物件 恐い間取り事故物件 恐い間取り
1時間51分
2020

亀梨和也 (出演), 奈緒 (出演), 中田秀夫 (監督)

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 TV番組への出演を条件に、「事故物件」で暮らすことになった芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)。その部屋で撮影した映像には白い“何か”が映っていた…。番組は盛り上がり、ネタ欲しさに事故物件を転々とするヤマメ。しかし人気者になっていく一方、次々と怪奇現象に巻き込まれていく。そしてある事故物件で、ヤマメの想像を絶する恐怖が待っていた――。






 松原タニシ氏の『事故物件怪談 恐い間取り』を原作としたホラー映画。
 KAT-TUNの亀梨和也くん主演で、昨年公開されて結構気になっていた映画です。DVD発売より先行して、Amazonのプライムビデオで視聴可能になったので観てみました。
 ホラー映画とギャグ映画は紙一重なところがあって、実際のところ本作も恐怖で息を呑むシーンよりも、声を上げて爆笑してしまうシーンが多かったです。原作は未読ですが、実話を元にした怪談集とのことで、映画ももっと淡々と恐怖を描くのかと思いきや、思いっきりエンタメ化させたのは潔いし、個人的には面白く観ました。
 まず亀梨くんの演技が抜群に良かったです。芸人としてのコンビ解散や、悪霊の瘴気にあてられた時の悲壮感漂う表情が、一転、芸人として成功したときのテンション高めに嬉ぶ様子など、振れ幅の大きい役どころを見事に演じているように思いました。
 展開としても、一物件に延々とカメラを構えて暮らすのではなくて、テンポ良く次の物件、次の物件、とコロコロと事故物件を住み替えるのは、ワクワク感が持続されて良いです。そして、どんどんレベルアップしていく物件に視聴者の期待も高まり、最後にとんでもない物件を引き当てるのは、観ているこちらもテンションが上ってきます。
 キャストに、よゐこや高田純次氏、「はい論破」で同じのイヤミ課長の木下ほうか氏、「半沢直樹」の白井大臣で印象深い江口のりこ氏、など芸人やTVでお馴染みの俳優がずらっと登場しているせいか、そもそもの雰囲気からして、視聴者を恐怖の淵に叩き落としには来ていない感じもします。とくに江口のりこ氏は、不動産屋の社員を演じているのですが、「事故物件専門」の方のようで、終盤などは霊媒師か何かなのか、と悪霊の対処を指示するのには思わず笑ってしまいます。
 序盤から亀梨くんのそばにいた黒いマントの悪霊は何だったのか、結局よく分からないまま終わってしまったし、ラストバトル(!)もなんでそうなるの?とツッコミどころの多い展開でした。『来る』(『ぼぎわんが、来る』の映画)を観た後だと、除霊の仕方も少し物足りない感じもしましたが、そもそも本作は『事故物件』の恐怖実話を原作とした映画であった、と思い直し、それを考えると振り切れた終盤だったように思います。
 芸人コンビの解散を描いた序盤から、終盤の悪霊との決着までが上手く繋がっており、なんかよくわからんけどイイ具合にまとまった話だった、となる脚本は、肩の力を抜いて視聴できる娯楽作品として、まあ悪くないのではないかと思います。亀梨くんと瀬戸康史氏の芸人コンビ、そしてそのファンである奈緒さん、彼ら三者を上手い具合に配置して動かしているので、単なる実話を描いた映像作品ではなく、ドラマとして観れる映画になっていました。
 アマゾンレビューでは散々ですが、個人的には悪くない映画でしたよ。




事故物件怪談 恐い間取り事故物件怪談 恐い間取り
2018/6/26

松原 タニシ (著)

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[ 2021/01/31 18:10 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)

映画「ガタカ」 

ガタカガタカ
1時間46分
1998

イーサン・ホーク (出演), ユマ・サーマン (出演), アンドリュー・ニコル (監督)

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 DNA操作で生まれた“適正者"だけが優遇される近未来。
 “不適正者"として自然出産で生まれた若者ビンセントは適正者になりすまして宇宙へ旅立とうとするが…。






 かつてレンタルビデオ屋でちまちま映画のDVDやBDを借りていた層が、自粛期間中にサブスクの便利さに気づいた人も多いみたいで、わたしの周りもサブスクで視聴した面白い映画のおすすめしあいっこをしたりしています。
 その中で人から、面白いよ、と聞いて観てみたのが本作『ガタカ』です。アマゾンレビューの数がかなり多くて、しかも高評価ばかり。わたしは初めて聞いたタイトルなのですが、どうやら有名作みたいです。今をときめく俳優もズラッと出演していてなかなかに豪華です。

 90年代のSF映画ですが、遺伝子操作による子供の産み分けを描いた作品で、現代の視聴者に対しても訴えかけてくるものが多い普遍性のあるテーマを内包しています。遺伝子操作をせずに生まれた男と、遺伝子操作をして「普通に」生まれてきたその弟が主人公。物語前半において、水泳競争で兄が、執念で弟を打ち負かす展開は本作全体を象徴するワンシーンで、生まれながらの遺伝子の優劣によってその後の運命は決定づけられない、という強いメッセージを感じます。
 本ブログで本作を紹介しているもののミステリ映画ではありません。作中にて殺人事件が発生するものの、本筋はその事件の解決にはありません。殺人事件の捜査の過程で、徐々に自身に捜査の手が迫ってきている時間的な制約と、さらに自身の体の弱さによる年齢的制約、さらに70年にたったの7日間という貴重な宇宙旅行のチャンス、といったようなこれでもかとタイムリミットによるサスペンスで主人公の夢にプレッシャーを掛けていきます。そんな儚い存在の主人公が、熱い想いと執念によって宇宙飛行を実現し、しかしそこで悟ったラストシーンの一言がきわめて印象的です。そもそも人間とは儚いものであるという本質と、その中で強い想いを抱き輝いてみせ、周りの人間に彼の魅力を気づかせてみせた展開は感動的です。

 SF映画とはいってもCGは多用していないので、映像表現的には今でも全然観るに耐えます。
 「デザイナーベビー」の抱える問題点については、今の視聴者でも受け入れやすく理解しやすく描かれてはいますが、その受け入れやすさや理解しやすさは、作品として「良いこと」か「悪いこと」かは評価が分かれることだと思います。経年のためかは分かりませんが、個人的には結構描かれている内容が「想定内」に収まってしまっていることが残念で、大きな感動には繋がりませんでした。公開当時「近い将来」として描かれた本作が、もはやSF(サイエンスフィクション)がノンフィクションを侵食してしまっているところがあり、今や優生保護法が廃止され、その存在が遠い過去のものとなった現代日本人にとっては、公開当時ほど鮮烈なメッセージ性は無いのではないかと思います。

[ 2021/01/18 19:19 ] 【映像】 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社
・上野東照宮
・波除稲荷神社
・富岡八幡宮

【神奈川】
・鶴岡八幡宮
・建長寺
・高徳院(鎌倉大仏殿)
・長谷寺

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・生國魂神社 干支(戌)
・生國魂神社 干支(亥)
・生國魂神社 干支(子)
・生國魂神社 干支(丑)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺
・多治速比売神社

【京都】
・鈴虫寺(その1)
・鈴虫寺(その2)
・鈴虫寺(その3)
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・清水寺(西国三十三所草創1300年記念)
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社
・梅宮大社
・錦天満宮
・藤森神社(あじさい祭り限定)
・智積院
・御香宮神社
・神護寺
・西明寺
・高山寺
・大豊神社
・三室戸寺
・吉祥院天満宮

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社
・般若寺

【和歌山】
・金剛峯寺
・金剛峯寺 六波羅蜜
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・高野山 徳川家霊台
・高野山 南院(波切不動尊)
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮
・滋賀縣護國神社

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)
・厳島神社
・大願寺
・千光寺
・艮神社

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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