読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

ミュシャ展に行ってきました。 

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 こんにちは!
 管理人のウイスキーぼんぼんです。

 東京の国立新美術館で開催中のミュシャ展に行ってきました。
 東京出張とタイミングがうまい具合に合ったので行ってみたのですが、まあ人が多いこと多いこと。

 大手町駅から東京メトロの千代田線に乗って乃木坂駅で下車します。
 まずチケットを購入するのに、ものすごく並ばなければならない、と聞いていたのですが、乃木坂駅の改札を抜けたところで、臨時のチケットカウンターが設けられていて、そこで並ばずに買うことが出来ました。完全に穴場です。
 乃木坂駅からほとんど直結の状態で美術館が建っているようなので、みなさんも千代田線で訪れてみましょう!


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スラヴ叙事詩 撮影可能エリア



 「ミュシャ展」はチェコの画家、アルフォンス・ミュシャの作品を集めた展覧会です。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家で、ポスターや本のジャケットなどのグラフィックデザインも手がけた画家なんだそうな。
 本展覧会の目玉はなんといっても「スラヴ叙事詩」でしょう。20作品から成る連作で、いずれも壁画サイズの巨大スケールです。その全20作品が、チェコ国外では世界で初めて一同に展示されるというのだから、観るしかありません。

 美術館が開館するだいたい10時ちょうどごろに訪れたのですが、やはり大人気の展覧会なのか、チケット売り場も入場も人の行列。驚いたのが、音声ガイドにも行列ができていて、もうとにかく人多すぎな状態です。


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 しかし、人は多いものの、作品も大変大きいので、あまり問題なく観賞できました。
 音声ガイドの檀れいさんの案内を聴きながら会場をウロウロします。


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 『スラヴ叙事詩』の特徴なのか、絵画の中の人物が、画面を超えてこちらの鑑賞者の方に視線を向けているのが印象的です。
 画面には、決して幸福ばかりが描かれている訳ではありません。平和への祈りが強いテーマになっています。そのなかで何かを訴えかけるような登場人物の眼差しが、そんな目で見ないでくれ、という想いに繋がり、思わず目を背けてしまいます。

 絵画を見ていると、我々には見えないものがミュシャには見えているのではないか、というような構図や人物配置がされているのですが、完全な幻想にはなっていません。チェコスロバキアやスラヴ民族の伝承、そしてその歴史がしっかりと描かれていて、幻想へと目を背けるとこを許していない印象を受けます。平和を願った作品が多く、そういうテーマ性という意味でも現実と理想、過去の歴史とこれからの未来、これらの虚実のバランスが上手く作品に表現されているように思いました。

 大きな絵画というのはそれだけでエネルギーを感じるし、それがテーマへの強い想いにも繋がっています。
 観れて良かったです。


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 個人的にあまりこのミュシャという画家についてはあまり馴染みがなかったので、家に帰っていろいろ調べてみたのですが、なんでもチェコの「戴冠宝器」とも言えるこの『スラヴ叙事詩』を国外(チェコ外)へと持ち出すのはありえない、とミュシャの孫が抗議しているのだとか。
 ローカル色の強い作品で、言われてみれば確かに「門外不出」という感じもします。あまりそっち方面で国際問題は起こしてほしくないですね。
 しかし観てしまえばこっちのもんです。大変素晴らしい展覧会でした。


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 おみやげにポストカードを何枚かとしおりを買って帰りました。


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 国立新美術館は黒川紀章設計の美しい建築。
 はじめて生で見ました。

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 六本木ヒルズも近かったので、冷やかして帰りました。ここにも初めて訪れました。
 TVでは見たことがありますが、これが六本木ヒルズですか、と田舎っぺ丸出しでウロウロして帰ったのでした。


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[ 2017/04/23 22:00 ] 【気になった事】 | TB(0) | CM(0)

濃厚まろやかつけダレがめちゃ美味!麺屋武蔵 虎嘯 の濃厚虎嘯つけ麺 

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麺屋武蔵 虎嘯



 麺屋武蔵 虎嘯 は六本木にあるラーメン屋さん。麺屋武蔵は東京を中心にチェーン展開をしているラーメン屋さんのようです。
 つけ麺とラーメンの両方が提供されていましたが、いちばん人気なのがつけ麺とのことだったのでつけ麺を注文です。


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濃厚虎嘯つけ麺 1,150円



 つけ麺の中でも一番人気なのが濃厚虎嘯つけ麺(1,150円)です。
 食べる前の第一印象が値段が高いということ。東京は物価が高いな~、こんな値段設定で肉が何枚乗ってるんだ、失敗したかな~、とマイナス思考がぐるぐるアタマの中を駆け巡っていたのですが、ひとくち食べてみると、そんな値段設定のことなんか吹き飛ぶくらい美味しかったです。
 わたしはつけ麺には否定的だったのですが、たぶん今まで食べたつけ麺の中で一番美味しかったです。
 魚介系なのですが、魚介系特有の尖った味わいが無くたいへんにまろやかです。コシの強い麺にまとわりついてきます。
 チャーシューはブロック状のものが2切れ。どちらも脂がとろとろしていて口の中で崩れます。
 つけダレの中にも魚の身だったりメンマだったりがいろいろと入っていました。
 麺の量は、同一価格で「並」「中」「大」の3種類から選べます。わたしは何もか考えずに真ん中の「中」を選んでしまいましたが、少し量は多かったものの、少食のわたしでも結構ペロッといけました。

 1,000円オーバーという価格に躊躇しましたが、それを超える満足感は十分に得られました。美味しかったです。
 当店はカウンター席のみ。
 注文は食券制です。

 ぜひまた訪れたいです。というか大阪にも出店して欲しいところ。



関連ランキング:ラーメン | 六本木駅乃木坂駅六本木一丁目駅

[ 2017/04/23 20:21 ] 【グルメ】 | TB(0) | CM(0)

北里紗月「さようなら、お母さん」 

さようなら、お母さんさようなら、お母さん
2017/4/13
北里 紗月

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★★★★★



 【内容紹介】

 島田荘司選 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作!
 その女は「毒」だ。身体を蝕み、心を壊す。
 美しい義姉の周りで続発する死と災厄。兄を亡くした妹は、親友とともに、義姉の「本当の顔」に迫る。
 原因不明の奇病を患った兄は激痛に耐えかね、病院の窓から飛び降りて死んだ。兄の症状に納得がいかない妹の笹岡玲央は看護師から、義姉の真奈美が兄の腫れた足に巨大な蜘蛛を乗せていたと聞く。美しく聡明で献身的な義姉の「本当の顔」とは? 玲央の幼なじみの天才毒物研究者・利根川由紀が乗り出す!




 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の優秀作です。
 読後感は決して良いものでは無く、そういう意味ではイヤミスと言えるかもしれません。福ミスの法則発動です。
 リーダビリティはあって、新人の割に読めるのですが、なんというのでしょう、季節柄こういうことを思うのかもしれませんが、作品全体が面接対策をしまくった新卒学生のように思えてなりませんでした。先に書いたイヤミス要素、毒物に関する専門性、ポスト新本格を意識したゲーム性の排除、良くも悪くも福ミス対策を打って描かれた作品であるというのが第一印象です。
 奇病によって命を落とす男性が冒頭に登場するのはたいへんキャッチーで、さらに容疑者の生い立ちを求めて故郷の島へと渡る展開はスケールに膨らみがあってワクワクします。子供に対する母親の愛情が物語の核となるのは、本書を読む全ての人間に対して訴求力があります。ミステリとしては十二分に読めるのですが、では本格ミステリとしてはどうなのでしょう、という本格ファンが従来より福ミスに対して抱くものと同じ問題に直面してしまうことでしょう。
 ハウダニットについては、専門的も専門的で、そんなものが実在するのか、ググっても確証のないレベルの方法が採られています。しかし、毒物に関する蘊蓄や、血清のない毒蜘蛛に対する治療法が伏線となっているため、凶器をピンポイントで指摘できずとも、犯人がどのような方法を採ったかを推測することは可能で、このあたりの専門性を本格ミステリに落とし込む設計は上手いと思いました。
 ホワイダニットに力点が置かれているように見せかけて、じつはそれは帯やあらすじなど周辺からの情報より推測可能だったりします。そのため、ホワイダニット単体での評価よりも、ホワイダニットとハウダニットの相乗効果で本格ミステリとしての評価を高める作品だと思います。というのも、ネタバレを避けて言えば、凶器の裏表が、愛情の裏表と重ねられているからです。これはミステリだからこそ可能な小説の表現方法で、ミステリの文法によって物語の主題が描かれる点はポイントが高いところです。
 プロローグがミスリードとして機能していること、さらに展開を追うごとに犯人候補が入れ替わる展開を考えると、フーダニットの愉しみも疎かにされていません。
 全体としては福ミスらしい作品と言えると思います。

[ 2017/04/21 02:23 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

映画「劇場版 名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)」  

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劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』公式サイト
http://www.conan-movie.jp/index.html



★★★★☆



 【内容紹介】

 百人一首で有名な皐月会主催の皐月杯の会見収録が行われていた大阪・日売テレビで、爆破事件が起きる。崩壊するビルに高校生探偵の服部平次とその幼なじみ・遠山和葉が取り残されるも、コナンが救い出す。犯行声明が出ないことに疑問を抱いて調べを進めるコナンと平次の前に、平次の婚約者だという百人一首高校生チャンピオンの大岡紅葉が現れる。




 ゴールデンウイーク恒例の映画『劇場版名探偵コナン』の最新作『から紅の恋歌(ラブレター)』を観に行きました。
 今作は京都が舞台です。京都といえばやっぱり『迷宮の十字路』を思い浮かべます。コナンファン一番人気の映画だそうです。そんな人気作と嫌でも比較されてしまう今作ですが、正直負けていないと思います。去年の『純黒の悪夢(ナイトメア)』は興行収入シリーズ最高を記録したにもかかわらず、謎解き、ミステリの趣向の両要素が薄く、ミステリ読みとしては満たされず悶々としていたのですが、この『から紅』にはそのいずれもが備わっています。しかも『迷宮の十字路』でみせた服部平次と遠山和葉の幼少期から延々と続く関係に、大岡紅葉という女性が絡んできて、三角関係に決着をつけるべく百人一首にて遠山和葉対大岡紅葉という直接対決が描かれるのはストーリーとして大変盛り上がります。「百人一首」が殺人事件を起こすほどの「憎悪」を生み出す側面が描かれる一方、幼少期から一人の女性を盲目的にさせるほどの「恋」を生み出す側面も同時に描かれるプロットはよく練られていると思います。
 ミステリ的な点としては、第一の殺人事件において、映像演出的に視聴者を惑わせようとするシーンが挿入されていたり、名探偵によるダミー推理が展開されていたり、これは結構バレバレなのですが、このようなミスリードを仕掛けてくる姿勢は好感が持てます。レッドヘリングがあの人からこの人へ、とその役割が移動するごとに真犯人候補も連動して変化していき、最終的に「から紅」とした悲劇へと決着するのは圧巻です。また更に「レッドヘリング(紅いニシン)」が空転してくミステリ的展開を、狙って「から紅」と掛けている(から札→から紅→紅いニシン)としたら神がかり的なプロットです。ただし、映像ミステリの宿命か、謎解きが完全な口頭による説明になってしまっており、もう少し過去の場面の映像と連動させた謎解きが欲しいところでした。

 スタッフロール後の“フィニッシングストローク”の脱力、服部平次の「もっと禍々しい何かや!」と笑えるシーンなど多くあって、そういうミステリ以外の楽しい要素も多いのも子供向け映画としては親切です。

 脚本:大倉崇裕、主題歌:倉木麻衣と力の入った布陣で、明らかに『迷宮の十字路』超えを意識した映画だと思うのですが、『迷宮の十字路』と並ぶか、それを超えるクオリティはあると思います。
 個人的には上の中~上の上あたりでしょうか。いや、もう21作もあるし、9段階評価では上の上でも良いのではないかと思います。大倉崇裕さん、素晴らしい作品ありがとうございました。



 

早坂吝「双蛇密室」 

双蛇密室双蛇密室
2017/4/6
早坂 吝

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★★★★☆



 【内容紹介】

 「蛇の悪夢」に関わる「地と天」の密室。
 過去の扉を「援交探偵」が開く!

 前代未聞の大仕掛けでミステリランキングを席巻する「らいちシリーズ」新作!

 「援交探偵」上木らいちの「お客様」藍川刑事は「二匹の蛇」の夢を物心付いた時から見続けていた。
 一歳の頃、自宅で二匹の蛇に襲われたのが由来のようだと藍川が話したところ、らいちにそのエピソードの矛盾点を指摘される。
 両親が何かを隠している?
 意を決して実家に向かった藍川は、両親から蛇にまつわる二つの密室事件を告白された。
 それが「蛇の夢」へと繋がるのか。
 らいちも怯む(!?)驚天動地の真相とは?




 援交探偵・上木らいちシリーズの最新長編です。タイトルにばばーんと「密室」と銘打っているだけあって、密室事件2つが描かれる、割とシンプルな本格ミステリです。分量も少なめでサクッと読めます。
 しかし、その密室には前例の無い前代未聞の密室トリックと犯人が描かれているため、きっと本格ミステリファンの心を満たしてくれることでしょう。ワンアイデア炸裂のため、むしろ今作のようなコンパクトさとは好相性と言えるかもしれません。
 蛇をめぐるロジックは面白くて、さすが謎解きの筋の良さを見せつけてくれますが、本作の場合、むしろ「援交探偵」シリーズらしいプロセスを経て真相へと到達する方に魅力を感じました。密室トリックについても、シリーズのどの段階でのそのトリックを思いついたのだ、と考えてしまうくらい、密室トリックが本シリーズに馴染んでいるところも高ポイントです。他の作家が描くと、もっとホラー寄りになったり重いテーマになったりそうですが、それを上木らいちではサラッと明るく描けてしまうのも良いですね。
 話の展開として、後発の「天の密室」を先に読者の前に晒すことで「地の密室」のミスリードとして機能しているし、物語上「地の密室」「天の密室」が2つワンセットであることにも必然性を持たせていて、このあたりは抜かりなく創られています。
 ラスト一行が今後のシリーズの行方をますます楽しみにしてくれます。謎解きのプロセスと、そこから導かれる意外な真相、いずれもコンパクトな中にギュッと盛り込まれています。なによりも密室ミステリ史に名を残すレベルのトリックは必見です。
[ 2017/04/10 02:38 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

泡坂妻夫「湖底のまつり」 

湖底のまつり湖底のまつり
1994/6
泡坂 妻夫

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★★★★☆



 【内容紹介】

 傷ついた心を癒す旅に出た香島紀子は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。ロープを投げ、救いあげてくれた埴田晃二という青年とその夜結ばれるが、翌朝晃二の姿は消えていた。村祭で賑わう神社で、紀子は晃二がひと月前に殺されたと知らされる。では昨日、晃二と名乗っていた人物はだれか。読む者に強烈な眩暈感を与えずにはおかない泡坂妻夫の華麗な騙し絵の世界。




 今更な感じもしますが、先日書店へ行って、新本格ミステリの再読用の本を物色するために文庫本エリアをウロウロしてたら発見したのがこの本。ポップを見ると、今話題沸騰中のミステリなんだそうな。どこで流行っているのかよくわからないのですが、連城三紀彦氏(ガイドブックや復刊)や、竹本健治氏(このミス1位に短編集新刊)らがスポットを浴びている昨今、久しぶりに同時代の作家である泡坂妻夫氏も良いだろうと思って、再読してみました。

 作者がマジシャンであることを考えるといかにも「らしい」作品です。読者に見せたカードが、終段で別の絵柄に変わるサプライズ、右手にあるはずのコインが、いつのまにか左手に移動しているミスリード、このような詐術が小説化されたと言っても良いのが本書です。
 ダムの底へと沈む舞台と、ヒロインの女性が川で溺れかける事故が交錯し、冒頭から夢の中を彷徨い歩くかのような幻想性に覆われている物語です。一夜限りの村祭り、男性との邂逅、もうじき水底へと沈む村――これらの時限式イベントが幾重にも重ねられるために、ひとつの儚さを生むと同時に、過去と現在、日常と非日常を曖昧なものにしています。このような幻想性・文学性の高さは連城三紀彦氏や竹本健治氏らと同じ時代に活躍した幻影城作家らしさを感じさせてくれます。
 大どんでん返し――で終わる類のミステリでは無く、ひっくり返されたあとに、序盤の序盤まで遡って作者の「仕込み」の周到さ、つまり、右手のコインを消すまでに、どれだけ早い段階から左手で手品をしていたのかを知って驚けるのが本書です。おそらくミステリを読み慣れた読者、ある程度ミステリの構造まで考えてしまうような玄人向けの作品だと思います。
 レッドヘリングが、ミステリとして読者の目をそむけるためのミスリードにとどまらず、物語としての結末部分へ、上手い具合連結する伏線と化してしまうのが驚くべきところです。トリックと物語が密接なのです。女性が一夜の思い出を胸に男性を求めて村へ戻る時、そしてダムが決壊して、“故郷が甦る”時、その瞬間に全ての絵が正しい姿を見せるクライマックスはミステリとしても物語としても感動的です。

[ 2017/04/09 02:56 ] 泡坂妻夫 | TB(0) | CM(0)

似鳥鶏「彼女の色に届くまで」 

彼女の色に届くまで彼女の色に届くまで
2017/3/29
似鳥 鶏

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★★★★☆



 【内容紹介】

 画廊の息子で幼い頃から画家を目指している緑川礼(僕)は、期待外れな高校生活を送っていた。友人は筋肉マニアの変わり者一人。美術展の公募にも落選続きで、画家としての一歩も踏み出せず、冴えない毎日だった。だが高校生活も半ばを過ぎた頃、僕は学校の絵画損壊事件の犯人にされそうになる。その窮地を救ってくれたのは、無口で謎めいた同学年の美少女、千坂桜だった。千坂は有名絵画をヒントに事件の真相を解き明かし、それから僕の日々は一変する。僕は高校・芸大・社会人と、天才的な美術センスを持つ千坂と共に、絵画にまつわる事件に巻き込まれていくことになり…。二人のもどかしい関係の行方は―?見ていた世界が鮮やかに裏切られる、仕掛けと驚きに満ちたミステリー!




 芸術家肌の男の子と女の子の、高校時代~大学を卒業して、社会人になるまでを描いた連作短編集です。雑誌掲載作品の他に描き下ろし短編もいくらか混じっており、最終話においてはミステリとしての大きな趣向が炸裂します。
 どの短編も、有名絵画が事件解決のヒントになっていてます。巻末にはそれらのカラー写真が掲載されていてなかなか豪華な造本です。芸術家ならではの視点、われわれ凡人には気づきにくい価値観で犯人が行動していて、それが上手い具合にミステリのサプライズへと昇華されている点が、芸術×ミステリのマッシュアップとして成功していると言えます。
 しかし、本書の場合それだけでは無いのです。画家の女の子と、絵の買い付けを行う画廊の息子の恋愛ストーリーという側面があることも忘れてはなりません。この恋愛エピソードとしての決着が、最終話において描かれるのですが、それがミステリ的な手続きを伴って描かれることに驚きました。前半のある短編に仕込まれた、ごく僅かな色彩が、時を超え最終話において輝きを増し、それが男女の関係を一歩推し進めます。それまでに描かれた「絵描き」と「画廊の人間」という職業的宿命で男女の関係になりきれない両者をより良い方向へと導いており、フィナーレは感動的です。本格ミステリとしての「データを提示しながらも真相を隠す」という構造を、そのまま女性の恋愛感情へとスライドさせている点が大変に巧妙であり、それをさらに芸術へもジョイントさせるという離れ業をも成し遂げているのです。
 ミステリ×芸術×恋愛の三者を高レベルで一体とさせた良短編集です。おすすめします。

[ 2017/04/04 01:40 ] 似鳥鶏 | TB(0) | CM(0)

竹本健治「しあわせな死の桜」 

しあわせな死の桜しあわせな死の桜
2017/3/15
竹本 健治

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★★★★☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 『このミステリーがすごい! 2017年版』国内編第1位『涙香迷宮』の竹本健治が贈る、軽やかにして深遠なミステリの精華12篇。非日常への裂け目はすぐそばにある。優美な文章で綴られる、奇想と幻想が入り交じり、妖しい夢のような綺譚がずらり。待望の「トリック芸者」シリーズ最新短編「いなか・の・じけん篇」を書き下ろし収録! まさに最高水準の短編集。ミステリ評論家・千街晶之氏による懇切な解説も必読。




 竹本健治氏が新本格推理作家かの議論はひとまず置いておいて、新本格30周年おめでとうございます。新本格の前からの人だもんね、とうぜん新本格の時期は含まれますよね。本書の帯にもしっかり30周年記念ロゴが入っていましたよ~。

 このミス1位の影響は大きいようで、ゲーム三部作の復刊&シリーズ新作描き下ろしに加えて、本書のような短編集も刊行!さらに傑作『かくも水深き不在』の文庫化が控えており、今年一年で一体何冊の本が出るんだ!と竹本健治ラッシュに湧く2017年です。
 前回の『フォア・フォーズの素数』が刊行されてから15年ぶりの短編集だそうです。あれからもう15年ということにも驚きましたが、それにしても内容充実な短編集になっています。

 収録作品は以下の12作品です。

 「夢の街」
 「彼ら」
 「依存のお茶会」
 「妖かしと碁を打つ話」
 「羊の王」
 「瑠璃と紅玉の女王」
 「明かりの消えた部屋で」
 「ブラッディ・マリーの謎」
 「妙子、消沈す。」
 「トリック芸者 いなか・の・じけん篇」
 「漂流カーペット」
 「しあわせな死の桜」


 作者自身「根は幻想の人」というだけあって、ミステリーに限らず幻想味の強い小説も多数収録されています。表題作「しあわせな死の桜」が最たるもので、物証を集めて犯人を特定しようと試みる探偵小説的手続きがありますが、見どころはそこにはありません。クライマックスにおける、鮮烈な「桜」にあります。小説ですが、はっきりとハッキリと頭の中で映像が浮かび上がる、ビジュアル的なイメージ喚起力の強い作品で、本短編集全体が程度良く締まるポテンシャルを有しています。
 「夢の街」なんかも、「現世は夢、夜の夢こそまこと」という江戸川乱歩の有名な言葉を、みごとにかたちにしてみせたを幻想味の強い小説で、初出が「江戸川乱歩展」のカタログというのが嬉しいです。なかなか流通しない媒体なだけに、本書のような書籍として残るのは良いです。
 初出が面白い作品と言えば、かつてPSP専用ソフトとしてリリースされた『TRICK×LOGIC』の「明かりの消えた部屋で」と「ブラッディ・マリーの謎」まで本書に完全収録です。ゲームとしての外殻、閻魔大王は登場しませんが、本格ミステリとしてのクオリティには影響ありません。この2作品は収録作中一番本格度の高い作品で、オーソドックスかつフェアプレイに徹した割とガチンコの本格ミステリです。ゲームの方をプレイされ方かならわかると思いますが、「明かりの消えた部屋で」が初級編、「ブラッディ・マリーの謎」が中級編とのことですが、いずれも自力で真相まで到達するには、かなり難易度が高い作品です。わたしもゲームで四苦八苦した覚えがあります。選択肢総当りで攻略するのは不可能で、確実に「怪しい点」を見つけて推理を組み立てていく必要があり、そのゲームシステムは斬新かつ、謎解きの面白さを味わえる良いものだと思います。またああいう感じのゲームが出ないかしら。
 その他、待望のトリック芸者シリーズ最新作「いなか・の・じけん篇」が収録されています。なんと書き下ろしです!お約束を踏襲しつつも、ラストはあれあれあれ、とシリーズ読者の期待を裏切ってくれます。ファン必見と言いえる作品です。

 『涙香迷宮』で竹本健治氏を知った読者は、幻想小説と探偵小説を自在に書き分けたり混ぜ合わせたりする作者の作風に驚くこと間違いなしです。
 古くからのファンはトリック芸者の「いなか・の・じけん篇」の展開に驚くのではないでしょうか。
 15年の作者の仕事の数々が本書1冊にまとまって、かなり贅沢な短編集と言えるでしょう。個人的にお気に入りは、やはり表題作の「しあわせな死の桜」でしょうか。クライマックスシーンが当分あたまから離れられそうにありません。ちょうど桜シーズンの今の時期にもぴったりですしね!


[ 2017/03/27 20:00 ] 竹本健治 | TB(0) | CM(0)

深水黎一郎「少年時代」 

少年時代少年時代
2017/3
深水 黎一郎

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 町を歩くチンドン屋のシゲさんが吹くサキソフォンの音色に惹かれ、彼についていった僕。シゲさんは僕に、“あきらめないこと”の大切さを教えてくれた。ある日、町で殺人事件が起きて…(「天の川の預かりもの」より)。その他、アクの強い両親のもと犬を飼い始めた少年、柔道部での上下関係に揉まれる少年…大人の世界の理不尽にさらされながらもひたむきに生きる、ピュアな彼らの成長を描く。昭和の香り漂う懐かしい時代の風景から予想外の展開が待ち受ける、書き下ろし連作小説。




 ある男の子の少年時代から青年になるまでを連作短編集形式で描いた作品です。文庫書き下ろし作品です。
 著者の作品の中では『ジークフリートの剣』や『美人薄命』といった非本格系の作品とテイストが似ています。とはいえ連作短編集形式の骨格を利用した詐術の存在が最終話のクライマックスで明かされます。その点を考えるとミステリとしても楽しめます。
 多段構えのサプライズが贅沢ですが、登場人物たちの仕草や考えを注意深く読んでいれば容易にそのトリックを見抜くことはできるでしょう。涙あり、笑いありで面白い小説なのですが、ミステリとしてなぜこのようなトリックで読者を欺く必要があったのか、なぜ「2」を「1」に誤認させる必要があったのか、必然性に乏しいような印象を受けます。
 ただし繰り返しますが、小説としては面白い作品です。にじみ出てくるユーモアと、柔道の試合の手に汗握る展開、飼い犬との出会いと別れ、多感な少年の目線を通してそれらが描かれており、こういう時代がわたしにもあったな、と振り返ります。わたしも小学生のころに犬を飼っていまして、そういえばお墓参りに行ってないな、作中で少年が思うように、もっと可愛がってやればよかったな、なんて思い出しながら読みました。

 読み終わって、ふと表紙のイラストに目を向けると…なんかこれ違うんじゃないか、と違和感を感じましたが、それはそれということで。

[ 2017/03/26 23:52 ] 深水黎一郎 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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2016年の水樹奈々さん
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