読み終わったミステリについてコメント。でも最近は脇道にそれぎみ。 このブログは水樹奈々さんを応援しています。

山田正紀「ここから先は何もない」 

ここから先は何もないここから先は何もない
2017/6/20
山田 正紀

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★★★★☆



 【内容紹介】

 小惑星探査機のサンプルに含まれていた人骨化石。その秘密の裏には、人類史上類を見ない、密室トリックが……!書き下ろし長編SF。




 山田正紀さんの描き下ろし長編です。
 宇宙を舞台にしているだけでなく、人類の起源にまで迫るスケールの大きな大作です。描かれる謎も大変に大きく、なんと地球と小惑星間を隔てる「3億キロの密室殺人」です。想像を絶する真犯人と、さらに物語の枠を越えて我々読者に訴えかけてくる犯行動機と合わせ、新鮮な読書体験が出来ました。
 一応、ジャンルとしては、SFに寄せたミステリ、というよりミステリに寄せたSF小説という感じで、要所要所の謎解きは端折られていて、登場人物ひらめきで点と点がつながっていきます。謎解きにおいてはミステリ好きの方にとっては物足りなさがあるかもしれません。しかし逆に展開にテンポの良さが生まれていて、銀行員の女の子の日常から始まる物語が、いつの間にか人類に生い立ちに迫る物語へとスケールアップするのにはワクワクできることでしょう。
 4万年前の化石人骨が、3億キロ先の小惑星から発見される、という謎が魅力的です。捜査の過程で、さまざまな仮説が飛び出してきて、一部は荒唐無稽とも思えるものもあるのですが、無限に広がる宇宙空間、そして生命誕生の歴史を前にしては、それらをも容認してしまうほどの寛容さがあるのが面白いところです。なぜなら、我々人類が今こうして生きていることこそ、一つの奇跡である為で、その事実を前にしては、ひょっとしたらあり得る話なのではないか、と妙な説得力が付与されるのです。それは本書で描かれる驚愕の真相にも言えることです。人類の誕生に神の意志を予感し、地球上の生態ピラミッドの頂点が人類であることに疑問を持つ時、本書で描かれる真犯人の存在も受け入れられることでしょう。ミステリで描かれるような論理性ではなく、SF小説的に、そして我々人類がこうして地球上に生きている奇蹟、そして今このブログを見ているあなたが使っているインターネット、それらすべてを伏線としてサプライズを演出しているのが、ミステリ読みとしては新鮮でした。本の枠を越えてヒトの生きる意味を今一度考えさせ、そして絶望と希望をないまぜにした閉幕によって、読者を不思議な読後感へと誘う面白い小説です。SF小説ファンだけでなく、ミステリファンの方にもおすすめです。
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[ 2017/06/26 00:23 ] 山田正紀 | TB(0) | CM(0)

大阪舞洲ゆり園に行きました。 

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大阪舞洲ゆり園



 こんにちわ!
 管理人のウイスキーぼんぼんです。

 大阪舞洲ゆり園に行ってきました。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの一つ先の駅からバスが出ています。
 5月末から7月上旬までの期間限定で開園しているゆり園で、大阪では人気のスポットなんだとか。わたしが訪れたときも、閉園間近で一部のゆりが見頃過ぎだったり、曇り空だったりしていたのにもかかわらず、大勢のお客さんで賑わっていました。

 カメラを持っている方も大勢いて、写真撮り放題です。
 わたしも何枚か撮って来ました。


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 昼過ぎに訪れて、夕暮れまで粘ろうかと思ったのですが、あいにくの曇り空でだったので早々に帰ってきました。
 大阪港の近くなので、太陽が出ていたら、燦々と輝く太陽に照らされた海を背景に写真を採れる絶景ポイントなのですが、この日はそういう写真は無理でした。


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 撮りやすい位置にオレンジのゆりがたくさん咲いていたので、写真もオレンジばっかりになってしまいました。
 今は遅咲きのゆりが見頃で、白色のゆりは少なかったですね。


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 困ったときのマクロ撮影。
 超望遠レンズも持っていけばよかったですね。ゆりが群生しているので、圧縮効果が期待できそうでした。

 ちなみにこのゆり園ではフォトコンテストが開催されています。ゆり園開園中に撮影された写真が対象となるそうで、大賞は30万円だとか。
 過去の受賞作を見ると、青空や海を一緒に写したものが受賞しているので、今年はスルーしておきます。


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ゆり根入りクリームコロッケ 300円



 園内には売店があって、買い食いが出来ます。
 ゆり根入りクリームコロッケは1個300円。ゆり根感ゼロでしたが、悪くはありませんでした。でも300円は高いね。


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 【関連リンク】
 大阪舞洲ゆり園 大阪湾に咲く、250万輪のゆり 海とゆりの競演
 http://yurien.com/


[ 2017/06/25 12:05 ] 【おでかけ】 | TB(0) | CM(0)

阿津川辰海「名探偵は嘘をつかない」 

名探偵は嘘をつかない名探偵は嘘をつかない
2017/6/16
阿津川 辰海

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★★★★★



 【内容紹介】

 名探偵・阿久津透。その性格、傲岸不遜にして冷酷非情。妥協を許さず、徹底的に犯人を追い詰める。しかし、重大な疑惑が持ちあがった。それは、彼が証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したというものだった―Kappa‐Two応募当時、弱冠20歳。新しい才能は、本格ミステリにどう挑んだのか。ミステリファン必読のデビュー作!




 石持浅海氏、東川篤哉氏らを輩出したカッパ・ワンが再始動です。これからは名前も新たに「カッパ・ツー」と言うらしいです。その再始動の狼煙を上げるのが本書のようです。
 満を持して、という言葉がまさにふさわしく、たいへんな大型新人の登場です。作者は東京大学の推理小説研究会「新月お茶の会」に今も在学中のサラブレッドです。

 目次を見ると、山口雅也氏の『生ける屍の死』、島田荘司氏の『斜め屋敷の犯罪』、クイーンの『災厄の町』、アントニイ・バークリーの『トライアル&エラー』など本格ミステリの影響を強く受けたと想像できるタイトルがズラッと並びます。基本はリーガルミステリーの体裁をとってはいるものの、一筋縄では行きません。前半には多段構えの密室殺人トリックを早々に披露して、本格ファンの度肝を抜いてきます。最終的な真相でもおかしくないレベルのトリック・犯行計画を、あっさりと最終真相の為の踏み台としているのです。この思い切りの良さ、出し惜しみの無さが新人らしくもあり、また新人離れしています。
 一筋縄ではいかない、という理由に、いわゆるSF要素が絡んでいる点も挙げられます。死者の魂が甦るのです。本書の場合は、まさしく被害者その人が蘇ってしまう為、物語前半に、その被害者の証言が得られてしまうのです。殺人後の犯人の犯行工作の一部始終が、その死者の証言によって明るみになってしまうのです。
 このように物語の前半部分で、すでに密室トリック、そして犯行計画の一部始終が読者の目の前に晒されるのですが、それでもなお本格ミステリとしての魅力が褪せないプロットが考え抜かれています。ここまで手掛かりを開陳しても、それでもなお敢然として謎が残るのです、フーダニット、ホワイダニット、ハウダニット、本格ミステリを支える3つの柱その全てが。
 すべての謎解きは法廷で行われます。そのため証拠による理詰めの推理で被告人を追い詰めていく過程が、本格ミステリとして好相性です。空振りと思われた証言、どこへ向かうのか分からない証言、数々の証言が登場しますが、見方を変え、組み合わせ方を変えると、実は隠されていた最終的な真相を指し示すのが、意外性が演出されていて良いです。従来の本格ミステリのように、例えば密室内で人が死にました。密室トリックと犯人は誰でしょう?といったような「謎」→「論理的解決」という単純線では説明できないような、良い意味で複雑さがあると思うし、謎の提示の仕方、謎の解かれていく過程(カードをオープンしていくタイミングと手際の良さ)、など工夫されていると思います。最も重要な謎を最後まで伏せ、それ以外の謎を早々に削ぎ落とすことで、本作のテーマが強調され、それによってクライマックスの感動も劇的なものになっています。こういう作品を読むと、本格ミステリの高度化、レベルアップを感じます。

 殺人事件を通して名探偵・阿久津透その人を探っていく物語でもあります。本格とはこうあるべきだ、というのではなく、名探偵とはこうあるべきだ、といったような名探偵の資質を題材にしている点は最近の傾向でしょうか。長い長い事件が幕を閉じた時、名探偵の全能感、カリスマ性、その圧倒的資質に、全登場人物、そして全ての読者は名探偵の前にひれ伏すことになるでしょう。本格ミステリの中心に立つのはトリックでも謎でも犯人でもその何ものでもなく、名探偵であることを示したような作品です。

 素晴らしい作品でした。間違いなく本格ミステリの次世代を担う大型新人の登場です。デビューおめでとうございます。
 デビュー作でこれほどのものを書いてしまうと次作が逆に心配になってくるのですが、応援しますぞ。
[ 2017/06/24 02:48 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

えんとつ町のプペル展in大阪がもよん へ行ってきました。 

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マニアック長屋



 大阪市内の蒲生四丁目にあるマニアック長屋というところで、ただいま『えんとつ町のプペル展in大阪がもよん』が開催中です。
 お笑い芸人の キングコング 西野亮廣さんの絵本『えんとつ町のプペル』に載っている絵が展示された個展です。
 書店かどこかで手に入れたチラシに開催場所と日時が載っていたので、休日を利用して行ってみることにしました。


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 絵本の絵は西野さん個人ですべて制作した訳では無くて、クリエイターの方々と分業して完成させたそうです。
 
 この蒲生四丁目――いわゆる“がもよん”という地区は古民家を再生した街づくりプロジェクトが進んでいるようで、今回の個展が開かれた場所も、古い家が再利用されていました。館内にはむき出しの木の柱や梁が見えます。

 大人一人600円で思ったより良心的です。ただ、この「プペル展」は過去に日本全国色んな場所で開催されたようで、開催場所によっては無料で観賞できたとかそうでないとか。

 受付で、ストーリーの書かれた冊子が無料で貸し出されていました。
 このストーリーの冊子を読みながら作品を観賞していくようです。


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 『えんとつ町のプペル展』のストーリーは西野さんのご厚意で、ウェブ上で無料で閲覧できます。

 作品はスクリーン状で、ひとつひとつバックライトによって照らされていました。
 色彩鮮やかで驚きます。
 また作中には街灯などの灯りがたくさん描かれているため、照明の落とされた暗い館内、そして作品を照らすバックライトの演出によって、作品の魅力が何倍にも引き立っていました。ウェブ上でも作品を観ることは可能なのですが、このような演出が素晴らしいため、実際に足を運んでみることをおすすめします。


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 作品は基本的に写真撮影OKのようです。
 館内にはこの絵本のために造られたと思しき歌も流れていて、一つの世界観の作り込みように驚きました。

 作品数は決して多くないのですが、ストーリー仕立てで作品が並ぶため、これ以上でもこれ以下でもいけない作品数です。
 ストーリーを読みながら作品を鑑賞する、というのは個人的に初めてで、なかなか面白かったです。満足度も高く、おすすめです。


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バッジ 400円



 展示エリアの後には物販もありました。
 おみやげにバッジを1個買って帰りました。


えんとつ町のプペルえんとつ町のプペル
2016/10/21
にしの あきひろ

商品詳細を見る



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 【関連リンク】
 えんとつ町のプペル展in大阪がもよん
 https://poupelleosaka.shopinfo.jp/

[ 2017/06/19 20:00 ] 【おでかけ】 | TB(0) | CM(0)

有栖川有栖「46番目の密室」 

新装版 46番目の密室新装版 46番目の密室
2009/8/12
有栖川有栖

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★★★★☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 日本のディクスン・カーと称され、45に及ぶ密室トリックを発表してきた推理小説の大家、真壁聖一。クリスマス、北軽井沢にある彼の別荘に招待された客たちは、作家の無残な姿を目の当たりにする。彼は自らの46番目のトリックで殺されたのか―。有栖川作品の中核を成す傑作「火村シリーズ」第一作を新装化。




 新本格再読フェアの1冊。いつのまにか新カバーになっていました。購買欲も湧くというものです。
 学生アリスでも良かったんですが、学生アリスを読み始めるとシリーズ全部読み返さないといけない感じがなんとなくしたので、今回はひとまず作家アリスの第一作目『46番目の密室』を再読です!
 初読時に比べてなんだか楽しめた感じがします。『鍵の掛かった男』や『狩人の悪夢』といった最近の作家アリス作品に比べて、作品からなんとなく“青さ”が漂って来ます。軽井沢の別荘という“いかにも”な舞台、そこへ招かれた推理作家達という“いかにも”な登場人物、山荘の主は「日本のディクスン・カー」の異名を持つ“いかにも”な大物で、「天上の推理小説」の完成を目指すらしいのです。探偵の過程において、ロバート・エイディ『Locked Room Murders and Other Impossible Crimes』を発見したかと思えば、ずらずらと密室トリックを並べたりして、今よりもコテコテの本格に傾倒している様子がわかります。
 たまたまですが、そのエイディの『Locked Room Murders and Other Impossible Crimes』をアリスが読んでいるシーンでC・デイリー・キングの『鉄路のオベリスト』が登場するのがタイムリーでした。今月にちょうど論創社から新訳で刊行される本です。

 被害者は日本のジョン・ディクスン・カーで、2件の犯行現場のいずれもが密室という、まるでカーの推理小説のようですが、最後まで読むとしっかりとエラリー・クイーンになっているのが作者の本領発揮です。階段の石灰をめぐるパズルには舌を巻きます。見えていた風景が、火村英生の推理によって一気に反転しまうのが、これこそまさに本格ミステリにおけるロジックの快感です。本格ミステリを読み慣れた読者であれば、一体どのタイミングで騙されたのだろうと思い返すことになるでしょう。そしてミスリードの鮮やかさを知り、そこでさらにもう一段驚かされることになるのです。アリスの考え出した密室トリックをめぐる推理も、ハズレではあるもののそれはそれで楽しいものですし、多重推理の亜種としての見方も可能かもしれません。
 初読時がたしか中学の頃で、それ以来読んでいなかったのですが、正直言うと、当時本書に対してあまり感動した記憶がありません。たぶん学生アリスがメインラインならば、作家アリスは所詮セカンドラインなんでしょう?という思い込みがあったのかなぁ、と思い返しています。当時綾辻行人氏の叙述トリックや島田荘司氏の大物理トリックに嵌っていて、比較的分かりやすいインパクトを求めていたのは確かなので、遅ればせながら本書を再評価したいと思います。これを気に角川の3冊(ダリ、奈良、朱色)も読み返してみようかしら。
 やっぱり面白いです。新本格30周年おめでとうございます。またこういうコテコテの本格を新作で読んでみたいですね。いや~もう無理でしょうか。時代が求めていないかもしれません。

[ 2017/06/18 21:30 ] 有栖川有栖 | TB(0) | CM(0)

若竹七海「ぼくのミステリな日常」 

ぼくのミステリな日常ぼくのミステリな日常
1996/12/1
若竹 七海

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★★★★☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 月刊社内報の編集長に抜擢され、若竹七海の不完全燃焼ぎみなOL生活はどこへやら。慣れぬカメラ片手に創刊準備も怠りなく。そこへ「小説を載せろ」とのお達し。プロを頼む予算とてなく社内調達ままならず、大学時代の先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。かくして掲載された十二の物語が謎を呼ぶ、贅を凝らしたデビュー作。




 新本格再読フェアの一冊。目線を変えて若竹七海さんのデビューにしてみました。
 月イチの社内報に掲載される短編小説が一年分、計十二編に、額縁を加えてひとつの大きな作品――謂わば総タイトル『ぼくのミステリな日常』と成した傑作連作短編集です。
 短めの短編ですが、個々のクオリティが高いのが特徴。しっかりとした謎があり、謎解きがあり、そしてサプライズがあります。十二編立て続けに読ませる割には、叙述トリックに、幻想ふうオチ、犯行計画の緻密さに舌を巻くもの、などバラエティに富んでいるため、各話を追うごとに新鮮な驚きが待っています。
 意外な伏線の張り方も本書の大きなアイデアで、遊び心も効いていて、26年ほど前の作品ですが、こういうのはなかなかお目にかかった経験がありません。外枠の部分でいろいろやるのは、同じ新本格では二階堂黎人さんが某長編でやっていましたが、「社内報」と同一レベルにいる額縁と、そのさらに上位にいる額縁の、二重のレベルで存在する額縁を自由に行き来して真犯人をあぶり出す点、本書のほうがよりアクロバティックです。
 「日常」というタイトルから「日常の謎」を想起してしまいますが、ふつうに殺人事件は起きるし、幻想味の強い物語はあるし、そして何より積極的にトリックによって読者を騙しにかかる点で、趣を異にします。

 新本格ミステリというと、英米黄金期の復興という意味合いがどうしても強くて、今読むと「現代の古典」という新鮮さを欠いた評価になりがちなのですが、本格コードに依存していない本書の場合は今読んでも新鮮な驚きがあります。新本格以降によく見られるようになった、所謂「連鎖式」の作品としても、いまでも高く評価できるでしょう。たとえば最近の2014年に刊行された歌野晶午氏の『ずっとあなたが好きでした』と比較してみても、経年劣化をしていない本書のクオリティの高さが分かるはずです。
 ネタ量が多くサービス精神旺盛。十二話すべてが一気に収束し、意外なやり方で意外なところから姿を現す真犯人には興奮します。未読の方、そして既読の方でも久しぶりに読み返してみるのもおすすめですよ。
[ 2017/06/16 02:52 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

周木律「幻屍症 インビジブル」 

幻屍症 インビジブル幻屍症 インビジブル
2017/6/6
周木 律

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★★★☆☆



 【内容紹介】

 絶海の孤島に建つ孤児院「四水園」で発生した、園生の不可解な転落死。他者の優れた部分が歪んで見える「幻視症」のユタカは、その事件をきっかけとして園内に伝わる「四忌」の噂を追い始めた。解けば願いが叶い、真実に辿り着けない者は死ぬという四つの謎…。相棒のミツルと共に解き明かすほどに、恐るべき悲劇が発生し!?この島を覆う闇の正体とは―?




 ◯◯症シリーズの第二弾。文庫書き下ろし長編です。なんだか売れているみたいですね。文庫発なのでとっつきやすいです。終盤で「あの方」の存在にちらっと触れられるくらいで、前作とは直接の関係はありません。本作から読んでも問題ないです。
 今回は孤島もので、主人公は“他者の優れた部分が歪んで見える”という「幻視症」の持ち主です。
 孤島は孤児院「四水園」で占められており、序盤からしばらくは完全に学園モノのテイストで物語が進みます。孤児院に伝わる「四忌」(学校の七不思議的なもの)の真相を探っていくうちに、園生の死亡者が次々と登場し、徐々に主人公たちの関心事は島の外、そして自分たちの今後、置かれた境遇、などへとシフトしていきます。
 フェンスで囲まれた孤島や、主人公の「幻視症」という特殊能力など、一見すると荒唐無稽にも見えますが、最終的に我々読者と地続きの世界へと接続されていくのが巧みです。前作においても、割とフィクショナルな物語の中にも、時折社会情勢を描いたシーンが登場しましたが、本作でもそれは引き継がれています。そうした社会性とフィクションの両輪が上手く噛み合ったラストで、前作よりも個人的には好みです。主人公の「幻視症」の真実についてもサプライズが効いていて、なるほどな、と結構驚けました。
 ただし、本書の場合、学生などのティーンエイジャーの読者も多いと思うのですが、結末部分の描かれ方が、一部職業にたいして、若者に誤解を招く恐れがあるのではないかと感じました。気にしすぎでしょうか?作品全体的に平易な文章で描かれていることもあり、あまり深いことは考えずにサクッと読み終わるのが吉かも。
 現代日本を皮肉まじりに描いた、敢えて社会派ミステリとしても楽しむことが可能な面白い作品です。

[ 2017/06/11 01:35 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

歌野晶午「長い家の殺人」 

新装版 長い家の殺人新装版 長い家の殺人
2008/4/15
歌野晶午

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★★★★☆

新本格30周年
新本格ミステリ30周年おめでとうございます





 【内容紹介】

 消失死体がまた元に戻る!?完璧の「密室」と「アリバイ」のもとで発生する、学生バンド“メイプル・リーフ”殺人劇―。「ミステリー史上に残ってしかるべき大胆なアイデア、ミステリーの原点」と島田荘司氏が激賛。この恐るべき謎を、あなたは解けるか?大型新人として注目を浴びた鮮烈なデビュー作。




 新本格ミステリを代表する書き手、歌野晶午氏のデビュー作です。再読です。
 なんだかトリックを知っている為か、初読時よりもむしろ楽しく読めた気がします。
 時と国境を経て、フランスの推理作家が、本作のメイントリックと同じものを扱った作品を出して話題になったのも、まだまだ記憶に新しいところです。当時の盛り上がりを見ると、『葉桜』や『密室殺人ゲーム』に比べると『家』シリーズは一段も二段も低く見られていた大勢の評価の中でも、全然しっかり読者の記憶、そして本格ミステリの歴史に名を残していたことが証明されたのではないかと感じます。また、そのフランスの作品が発表された当時は「日本にだって『長い家の殺人』があるんだぜ!」とミステリファンとしては結構誇らしくなったのを覚えています。
 メイントリックのインパクト重視の作品ですが、同タイプの二つの事件を重ねることで、一方で提示できなかった手掛かりを他方で提示させてみせるなど、フェアプレイの精神は達者で、読み手にも親切です。第二の事件の「人魂」なんかは謎がそのまま手がかりとなっていて、このあたりは島田荘司チルドレンらしい謎の提示のされ方を感じます。
 ただ、フェアプレイについてはもうひとつ思うところがあり、今読んでみると、地の文で嘘をついている点が、アンフェアなのではないかという気がしないでもありません。部屋名についてです。しかしそれもメイントリックのインパクトの前には瑣末な問題のような気もするし、要は納得出来るか出来ないか(腹が立つか立たないか)の見地に立つと、全然許容できる範囲です。

 巻末に収録されている島田荘司御大も時代を感じさせます。自身と同様に、新人賞の受賞を経由せずにデビューさせることに対して、親心のようなものがこの文章からは感じられます。
 「彼の文章家としての貴重な資質は、今後さらに磨かれ、ますますその本領を発揮するようになるだろう」という御大の推薦文から、さらに文庫のページをめくると、著者の経歴が書かれた巻末のページにたどり着きます。そこに並ぶのは「日本推理作家協会賞受賞」「本格ミステリ大賞受賞」といったデビュー以降の華々しい受賞歴です。
 物理トリック、叙述トリック、自由自在の作者。まだまだ面白い推理小説を書いて欲しいですね。新本格30周年おめでとうございます。

[ 2017/06/08 01:56 ] 歌野晶午 | TB(0) | CM(0)

吉田恭教「鬼を纏う魔女」 

鬼を纏う魔女鬼を纏う魔女
2017/6/1
吉田恭教

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★★★★☆



 【内容紹介】

 この女は何者か? なにゆえ冥界から解き放たれたのか?
 冥界の異変。死神に魅入られし人々。そして彼らを嗤う鬼――。
 捜一七係の鉄火面・東條有紀が不可思議な事件を追う。
 渋谷区宮益坂で発生した通り魔事件に巻き込まれた被害者は四人、うち三人は死亡し、ただ一人生き残ったのは、乳房に般若の刺青を刻んだ若く美しい女性だった。
 しかし、意識不明となって生死の境を彷徨う彼女は身元に繋がるような物を所持しておらず、警視庁捜査一課の東條有紀は、被害者の刺青から身元の特定を試みる。
 そして彫師の情報を得て被害者の戸籍に辿り着いたものの、そこには不可思議な記載があった。




 東條有紀シリーズの最新作。コンスタントに新刊が出る一方で、安定したクオリティを保っています。
 本作は捜査活動の一環として、宗教施設への潜入捜査や、真夜中の青木ケ原樹海探索などが描かれていて、冒険要素多めです。まさに鬼が出るか蛇が出るかの展開にワクワクします。いずれも探索の果てに意外な真相が待ち受けているのも気が利いており、良い意味で読者を裏切ってくれ、良い意味で期待に応えてくれる展開です。
 人間関係は前作ほどにはパズル的に複雑化されてないものの、関係者の証言によって事件の全体像が徐々に姿を表していく展開は本作にも健在です。一方で、関係者の年齢の問題など、証言によって否定されるべき首実検が、証言によって謎として確定してしまったりなどし、読者は翻弄されることでしょう。また、白と思われていた人物が次々と黒に反転していく終盤の展開も圧巻です。
 ただ、一部で真相がぼやかされている部分があったり、宗教施設の地下で発見されたあるものについては全く謎のまま残ったりしています。論理の及ばぬこれらの「余地」については、むしろ本作の魅力の一端でもあり、物語に不気味さを添えています。シリーズ過去作を読んでも思いましたが、論理で解決する謎と、敢えて謎のまま残す――というより超常的なファクターを読者に示唆したうえで解決されない謎―この二つのバランス、間合いが絶妙なのが東條有紀シリーズの素晴らしいところです。東條有紀シリーズの次回作は早くも来月7月に講談社から出るそうです。楽しみです。
[ 2017/06/05 01:02 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

ウイスキーぼんぼん

Author:ウイスキーぼんぼん

初めて読んだミステリは『そして扉が閉ざされた』(岡嶋二人)。以来ミステリにどっぷりハマリ中。
「SUPER GENERATION」で水樹奈々さんに興味を持ち「Astrogation」で完全にハマる。水樹奈々オフィシャルファンクラブ「S.C. NANA NET」会員。

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好きな推理作家:島田荘司ゴッド
嫁本:アトポス)
好きな歌手:水樹奈々ちゃん
嫁曲:SUPER GENERATION)
誕生日:ヘレン・マクロイとおなじ
体型:金田一耕助とおなじ

本年度のお気に入り(国内)
御朱印巡り
集めた御朱印です。
(各都道府県参拝した順)
※記事に出来ていない寺社多数です!鋭意執筆中!
※リンクが切れているものは下書き状態です。しばらくしたら公開されます。

【東京】
・靖國神社(その1)
・靖國神社(その2)
・東京大神宮
・浅草寺 御本尊
・浅草寺 浅草名所七福神
・浅草神社
・浅草神社 浅草名所七福神
・今戸神社
・明治神宮(その1)
・明治神宮(その2)
・増上寺
・烏森神社
・神田明神
・乃木神社

【愛知】
・熱田神宮
・一之御前神社、別宮八剣宮
・真清田神社
・大神神社
・大須観音

【大阪】
・大阪天満宮
・豊國神社
・四天王寺
・住吉大社
・坐摩神社
・法善寺
・難波八阪神社
・道明寺天満宮
・一心寺
・安居神社
・生國魂神社
・生國魂神社 干支(申)
・生國魂神社 干支(酉)
・三光神社
・玉造稲荷神社
・今宮戎神社
・方違神社
・難波神社
・露天神社(お初天神)
・太融寺
・大鳥大社
・石切劔箭神社
・枚岡神社
・慈眼寺
・久安寺

【京都】
・鈴虫寺
・松尾大社(その1)
・月読神社
・天龍寺
・御髪神社
・常寂光寺
・二尊院
・野宮神社
・下鴨神社(賀茂御祖神社)
・河合神社(下鴨神社摂社)
・盧山寺
・梨木神社
・白雲神社
・護王神社
・御霊神社
・下御霊神社
・平安神宮
・銀閣寺(慈照寺)
・金閣寺(鹿苑寺)
・龍安寺
・八坂神社
・八坂神社 美御前社
・八坂神社 又旅社
・八坂神社 冠者殿社
・八坂神社 青龍
・八坂神社 祇園御霊会
・伏見稲荷大社 本殿
・伏見稲荷大社 奥社奉拝所
・伏見稲荷大社 御膳谷奉拝所
・三十三間堂
・養源院
・東福寺
・建仁寺
・南禅寺(その1)
・南禅寺(その2)
・永観堂(禅林寺)
・北野天満宮
・北野天満宮 宝刀展限定「鬼切丸」
・大将軍八神社
・法輪寺(達磨寺)
・妙心寺
・妙心寺 退蔵院
・仁和寺
・建勲神社
・晴明神社
・御金神社
・八大神社
・豊国神社
・由岐神社
・鞍馬寺
・貴船神社
・六道珍皇寺
・六道珍皇寺 六道まいり
・六波羅蜜寺 都七福神
・安井金比羅宮
・知恩院 徳川家康公四百回忌
・青蓮院門跡
・青蓮院門跡 近畿三十六不動尊霊場
・粟田神社
・鍛冶神社(粟田神社末社)
・東寺
・上賀茂神社(賀茂別雷神社)
・大徳寺 本坊
・大徳寺 高桐院
・今宮神社
・妙顯寺
・三千院 御本尊
・三千院 西国薬師四十九霊場第四十五番
・三千院 聖観音
・実光院
・勝林院
・宝泉院
・寂光院
・宝厳院
・大覚寺
・清涼寺
・祇王寺
・化野念仏寺
・落柿舎
・城南宮
・飛行神社
・石清水八幡宮
・岡崎神社
・長岡天満宮
・平野神社
・法金剛院
・高台寺
・清水寺
・宝蔵寺 阿弥陀如来
・宝蔵寺 伊藤若冲
・勝林寺
・平等院 鳳凰堂
・宇治神社
・宇治上神社
・智恩寺
・元伊勢籠神社
・眞名井神社

【奈良】
・唐招提寺
・薬師寺 御本尊
・薬師寺 玄奘三蔵
・薬師寺 吉祥天女
・薬師寺 水煙降臨
・東大寺 大仏殿
・東大寺 華厳
・東大寺 二月堂
・春日大社 ノーマル
・春日大社 第六十次式年造替
・興福寺 今興福力
・興福寺 南円堂
・如意輪寺
・吉水神社
・勝手神社
・金峯山寺
・吉野水分神社
・金峯神社
・法隆寺
・法隆寺 西円堂
・中宮寺
・法輪寺
・法起寺
・元興寺
・橿原神宮
・橘寺
・飛鳥寺
・飛鳥坐神社

【和歌山】
・総本山金剛峯寺
・高野山 金堂・根本大塔
・高野山 奥之院
・高野山 女人堂
・熊野那智大社
・青岸渡寺
・飛瀧神社
・伊太祁曽神社
・國懸神宮
・紀三井寺

【滋賀】
・比叡山延暦寺 文殊楼
・比叡山延暦寺 根本中堂
・比叡山延暦寺 大講堂
・比叡山延暦寺 阿弥陀堂
・比叡山延暦寺 法華総持院東塔
・比叡山延暦寺 釈迦堂
・比叡山延暦寺 横川中堂
・比叡山延暦寺 四季講堂(元三大師堂)
・三尾神社
・三井寺 金堂
・三井寺 黄不動明王
・近江神宮

【兵庫】
・生田神社
・廣田神社
・西宮神社
・湊川神社
・走水神社
・千姫天満宮
・男山八幡宮
・水尾神社
・兵庫縣姫路護國神社
・播磨国総社 射楯兵主神社
・甲子園素盞嗚神社
・北野天満神社

【岡山】
・吉備津神社
・吉備津彦神社

【鳥取】
・白兎神社
・宇倍神社
・聖神社
・鳥取東照宮(樗谿神社)

【広島】
・吉備津神社
・素盞嗚神社
・草戸稲荷神社
・明王院
・出雲大社 福山分社
・沼名前神社(鞆祇園宮)
・福禅寺(対潮楼)

【徳島】
・大麻比古神社

【福岡】
・太宰府天満宮
・筥崎宮(筥崎八幡宮)
・住吉神社

【沖縄】
・波上宮

■朱印帳■
・京都五社めぐり
・高野山 開創1200年記念霊木朱印帳
・平安神宮 御朱印帳
・全国一の宮御朱印帳
・住吉大社 御朱印帳
・建仁寺 御朱印帳
・今戸神社 御朱印帳
・大将軍八神社 御朱印帳
・晴明神社 御朱印帳
・東寺 御朱印帳
・明治神宮 御朱印帳
・大阪市交通局 オオサカご利益めぐり御朱印帳
・北野天満宮「宝刀展」記念朱印帳
・熊野那智大社 御朱印帳

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2016年の水樹奈々さん
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